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与党の給付案は「増税のための撒き餌」と気がついた有権者

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トンネルの右から掘るか左から掘るかで異なった論評ができるが、国民が「与党の給付案は増税のための撒き餌」という側から掘ることにする。共同通信の定期世論調査の結果、55%が給付に反対しているという意外な結果が出た。Yahoo!ニュースのコメント欄で「減税を嫌がる政府が選挙対策のために給付を仄めかしているのだ」という意見が多かったことを思い出した。さらに少数与党状態になると各政党がバーゲンセールを行うということも学習したようだ。過半数が与党の過半数割れを望んでいる。

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トランプ関税を巡る動きは間違いなく国難だろう。これまで依存してきた日米同盟という枠が事実上崩壊した。しかし与野党の危機感は薄く「国柄」に関する議論は行われていない。保守系政治家の「国家観」はアメリカ合衆国の巨大な影を利用して自分を大きく見せるためのツールにすぎなかったということがよくわかる。

そもそも関税政策の全貌がわかっておらず政府もどの程度の影響が出るのかを試算していない。そんな中、漠然とした不安だけが国民の間に広がっており84%が生活に影響が出るだろうと考えているそうだ。徹底してファクトを無視して気分だけで突っ走る日本人の特性がよく表れている。

不安だからといって特になにをするわけでもないという特性もある。問題を利用して日米同盟を実利的に深化させようというプロアクティブな議論は行われていない。すでにご紹介したように親米の論客も「いるにはいる」という状況だが世論喚起には至っていない。

この話をQuoraで紹介したところCIAやGHQのプロパガンダ的手法は有効だったという人がいた。難しい国際関係の議論ではなく「アメリカの政策に沿った政権選択をすればこんな豊かな生活が送れますよ」と宣伝したことをさしているのだろう。読売新聞のオーナーが主導した民間放送などもおそらくはこのような戦略の一環として設立されている。

NHKの日曜討論の冒頭だけをみた。要するに「関税で困るのはアメリカ合衆国なのだ」ということをわからせれば「元の鞘に収まるだろう」という議論が延々と展開されていた。

変化をできるだけ先延ばししたい日本人らしい議論だ。

ただ、関税そのものは「国難」として扱われ政治利用されている。「どうせトランプ関税は大した問題にはならない」という油断が透けて見える。代わりに政治家たちは「国難なのだから給付金を配ったり赤い字国債を発行したりして経済対策をしなければならない」と主張している。

  • 維新の青柳仁士政調会長は、食品の消費税率を5月からゼロにするよう訴えた。現役世代の個人と中小企業が支払う社会保険料の減免も求めた。
  • 国民民主の浜口誠政調会長も消費税率を一律5%に引き下げるよう主張。財源については「当面は国債で対応するしかない」と述べた。
  • 公明党の岡本三成政調会長は「消費税減税の議論に時間がかかるのであれば、つなぐという意味で給付も考える必要がある」と語り、給付金支給と減税の両方を追求すべきだとの認識を示した。
  • 共産党の山添拓政策委員長は「トランプ関税対策として消費税減税が最も効果的だ」と指摘。れいわ新選組の伊勢崎賢治政策委員(非議員)は「減税ではなく消費税廃止だ」と強調した。
消費減税、自・立が慎重論 代替財源とセット訴え―トランプ関税(時事通信)

こうした国会の議論とは別に「同志国」と連携してアメリカ合衆国に働きかけてゆくべきだという議論は行われているようだ。国会ではなく一部の「選良」が実質的に国を動かすという構造も珍しいものではない。

外務大臣・農林水産大臣経験者である林芳正官房長官が主体になっている。林氏は名門宏池会の最後の座長であり石破総理は「花を持たせる」ことはしたくないのだろう。だが、対関税交渉は実質的に林氏を中心に進みそうだ。しかし官房長官は総理大臣外遊中の「留守番役」も兼ねているためアメリカに出向いて交渉することはできない。ここにも国益より党の利益、党の利益よりも派閥の利益という自民党のムラ的な体質がよく表れている。

消費税減税については色々と思うところがある。「社会保障」経費が税金と保険料に分かれているため「消費税は社会保障に使います」と言われても「じゃああの高額の保険料はいったいなんなんだ」と納得できない人が多いのだろう。とはいえ変化が起きるたびに国債を発行していてはおそらく国会財政は健全なものにならない。

いずれにせよ、日本は世界的な情勢の変化とは全く別なところにあって「昨日と同じだらだらとした明日がいつまでも続くだろう」と考えているようだ。漠然とした不安と独特な怠惰感が国政を空気として支配している。

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