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iPhoneは関税の例外 またもトランプ大統領が突然の発表

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週末くらいはまあなにも起こらないだろうと思っていたのだが、トランプ大統領が突然「スマホは関税の例外にします」と宣言し話題になっている。これを見越してアップル株を買っていた人には「おめでとう」と言いたい。半導体製造機器なども対象になるようなのでこれらの株を売れずに持っていた人も(しばらくは)一安心だろう。

ただし結果的にはアメリカの金融資産がリスク資産化しアメリカ売りが続いている。

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トランプ大統領には何らかの考えがあるのではないかと思いたい人は大勢いるようだが「たいしてなにも考えていない」ことが明らかになりつつある。関税政策を撤回するにあたってはFOXニュースのお気に入りの番組の影響を受けたという話も出ているようだ。

アメリカのメディアはアメリカの製造業がファブレス化(デザインはアメリカで行うが製造は世界各地で行う)していることを示すためにiPhoneを例示していたに過ぎないと思うのだが、いずれにしても「関税が物価に壊滅的な影響をもたらす」事例として盛んにiPhoneを取り上げていた。

トランプ大統領のゴールはアメリカの独裁者になることだが、目指すところが一風変わっている。普通の独裁者は生き残りのために権力を極めようとするのだがトランプ大統領はみんなから賞賛される王様になりたい。このため自分を称賛してくれるFOXニュースなどのメディアの動向を非常に気にしている。

生育歴も大きく影響している。父親は自分の思い通りにならない長男を排除し長男はアルコール依存の問題などを引き起こして亡くなっている。そもそも信頼に基づいた人間関係を育むという考え方がない。フレッド・トランプJr氏は会社を継がなかったことで父親のフレッド・トランプ氏から全人格を否定されることになった。フレッド・トランプ氏の息子の遺族に対する扱いを見ると、トランプ大統領の行動原理の一旦を読み解くことができる。

この極端な大統領の性格は中国との付き合い方によく表れている。まずは、中国に殴りかかれば交渉に応じてくれると考えたが中国の姿勢が頑なになると一転して「習近平は友達だ」と主張しだした。おそらくトランプ大統領の言う「友達」の定義は我々の定義とかなり異なっているのだろう。と同時に第三者が介入しない限り米中貿易摩擦はおさまらないだろう。

トランプ大統領は今回の件で「国民に愛される王様」になろうとしているのだろうが、実際にはこの介入そのものが金融市場に不透明感をもたらしアメリカ売りにつながっている。さらに小売店の中には関税の負担額を明示するところも出てきた。「トランプ関税」とか「関税サーチャージ」などと表現されている。

今回の一連の気まぐれな対応は「トランプ大統領はインサイダー取引をしているのではないか」という疑いを生じさせている。関税撤回についてベッセント財務長官と話をしている時に支持者に対して株を買えとSNSを通じて絶叫し、富豪たちも「仲間たちが今回の件で株式市場で大きな利益を得た」と吹聴して回っているそうだ。

ホワイトハウスの広報顧問を務めるマーゴ・マーティン氏が9日にXに投稿した動画では、トランプ氏は、関税の上乗せ分の一部停止を発表した後、億万長者の仲間たちが株式市場でどれほどの利益を上げたかを自慢していた。

トランプ氏にインサイダー取引疑惑 民主党議員団、SECに調査要請(AFP)

相手がどう出るかが読めないためそもそも対策など立てようもないが、日本の対応はさらに迷走している。目まぐるしく変わる政策に「意図」などあるはずもないがそこに何らかの意図を読み取ろうとしているのだ。

「日本はこの機会を利用してプロアクティブに国益追求すべきだ」と書こうとしって、ふと「プロアクティブ」という概念が存在しないと気がついた。辞書的には受け身で対応するのをやめて自ら状況を管理したりコントロールすることを意味しているが、そもそも日本人にはそんな考え方はないのだろう。ふさわしい訳語がない。

結果的にアメリカの要求をのらりくらりとかわしているうちに、相手が自滅してしまうのを待つという戦略を選択していることになる。草食動物的な生き残り手法だが、戦略的に物事を考えることができないのであれば最も無能な大臣を交渉担当に指名し実質的になにもしないのが良いのかもしれないなどと感じる。

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