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求められる日本の「ベッセント派」 世論形成と情報発信に課題

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トランプ関税の問題によってさまざまなことがわかった。日本はこのままアメリカをシステムから切り離すか自分たちの持っているものを最大限に武器化して日米同盟を強化・深化させるかという二者択一を迫られている。

オールドメディア・ネット共に「日米同盟を売り込もうとする」動きがあるのだが、発信者たちは精細を欠いているのが現状だ。

日米同盟深化に沿った形の話題も紹介をしたいところなのだが「引用できる発言」があまりにも少ない。共和党派・ベッセント派の情報発信には改善を望みたいところだ。

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テレビでは共和党で政策立案に携わった中林美恵子氏が「共和党派の」代表格と言える。ベッセント財務長官と会ったこともあるようだ。発言の端々に「米国債は絶対に売ってはいけない」とか「今回の件をチャンスにすべきだ」などというアメリカ寄りの姿勢が滲む。しかしテレビ局は彼女をポジションを持った識者として扱っておらず「事情通の中立者」として扱う傾向があり、なかなか身動きが取れないようである。ここはもうすこし旗色を明確にしてもらえなければ引用もできない。

PIVOTが「ベッセント財務長官の20年来の友人」の発言を紹介している。イェスパー・コールさんというエコノミスト。前半を聞いてみたが「酔っ払ったような日本語」は聞くのが疲れる。また話す内容にも問題がある。

中林氏もコール氏も「日本は日米同盟に沿ってやってゆくしかない」のだから、自分たちの武器を使って積極的にアメリカ合衆国と関与すべきだと言っている。当然これはベッセント財務長官が望んでいる形でもある。日本は自主的にディールをまとめてベッセント氏を通じてトランプ大統領に働きかけ、同時に日米同盟を軍事同盟から別の何かに戦略的に格上げする必要がある。

コール氏は加藤勝信氏らを中心として日米共同ファンドのディールをまとめてアメリカ政府の財政を助けるべきだと言っている。ベッセント財務長官に「トランプ大統領の成果として宣伝してくれ」と協力を求めるべきと言うことなのかもしれない。

日本政府はファンドの運営を通じて優先的にアメリカ合衆国の天然資源利権を確保することができる。日本に十分な利権が確保されこれが政治的に翻弄されない保証さえ得られれば悪くないディールなのかもしれない。

ただしコール氏は「防衛のことを考えると日本には選択の余地がない」と発言をしている。合理的・客観的・率直な主張ではあるが「立場の上下」を重要視する日本人はこれを上からの恫喝とみなすだろう。

コール氏は「通貨は結果であり直接操作を望んでいない」とも言っているが、日本はベッセント財務長官が一方的に政府に円高誘導を行うのではないかと怯えているようだ。

日本側とアメリカ側の認識の違いがわかる面白い場面があった。TBSのひるおびで中林美恵子氏が「アメリカと積極交渉をしてWin-Winを目指すべき」と主張したが田崎史郎氏は否定的だ。ここに割って入った加谷珪一氏が「日本がアメリカの要求を受け入れてしまい、あとでEUに恨まれたことがあるのです」と解説していた。田崎史郎氏には「日本はアメリカに頭が上がらないのだからWin-WInの状況など作れるはずはない」と言う永田町の気持ちを共有しているのではないかと思う。

しかしながらこのやりとりはスポーツ新聞には拾われなかった。代わりに拾われたのは「赤沢さんでは交渉ができない」とする田崎史郎氏の否定的な見解のみである。

日本側は交渉前から萎縮してしまいベッセント財務長官やグリア代表の要求をどうかわすかで頭がいっぱいになっている。

高市早苗氏の発言などを聞いても「防衛」についての問題意識が聞かれるのみでウォール・ストリートの人たちが何を望んでいるのかについての情報は入ってきていないようだ。

おそらく、日本語・英語・金融に詳しく、なおかつSNSでの情報発信に熟達したような人たちがベッセント財務長官を支援するような形で日本の世論形成をしていかなければ問題は容易に解決しないのだろうと感じる。

このための最大の障壁は皮肉なことにトランプ大統領自身である。おそらく大した考えもなしに「日米同盟は片務条約である」という思い込みに基づいた発言を繰り返している。この発言には日本の交渉当局者を萎縮させる以外の効果がない。

さらに石破総理は目の前の選挙で頭がいっぱいになっており「アメリカ合衆国に対してお願いをする」と言っている。これは極めて危険な発言だ。

石破総理は党内で孤立しており赤沢氏以外に頼れる人がいなかったようである。一応「政府をあげて赤沢氏を支援する」ことになっているがどの程度の協力が得られるのかは未知数。この永田町の雰囲気が田崎史郎氏の「赤沢氏は使えない」発言につながっている。

さらに石破茂首相は最後には自分がトランプ大統領にお願いすると言っている。トランプ大統領は自分が言い出したことを数時間後には忘れてしまう傾向があるのだが何かをきっかけに思い出し大騒ぎすることがある。つまり石破総理は直接交渉を通じて「トランプ大統領の変なボタン」を押してしまう可能性があるのだ。

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