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トランプ大統領に起因する「アメリカ売り」が続く

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円が急に143円線を超えて上昇した。同時に米国債が下落しており「アメリカ売り」の様相だ。過去に5%台をつけたことがあるため「国債危機」とまでは言えないが急速な値動きはやはり危険信号と見做すべきだろう。このところ急激に資産を失いつつあるウォール・ストリートの重鎮たちはテレビなどに出演し世論の支持を訴えている。トランプ大統領は本音では中国と交渉をしたがっているようだが「友達」の定義があまりにも独特なため糸口が掴めていないようだ。

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Bloombergが「アメリカ売り」を警告する記事を2本出している。

ウォール街の重鎮たちは盛んにメディアに露出を増やし通商交渉の脇役だったベッセント財務長官を支援している。Bloombergの一連の記事も一種のキャンペーンと見るべきなのかもしれない。

中国との貿易戦争を収めることができないトランプ大統領に起因する「アメリカ売り」の影響でスイスフラン・日本円金への需要が高まった。

日本にはアメリカから逃避した資金が流れ込むことになるが、株価は上昇していない。収益を海外貿易に過度に依存する構造が定着しており米中貿易戦争の余波を受けるからだろう。この日本円で何を代わりに買うのかに注目が集まる。とりあえず国債の価格が上昇しているそうだが、仮に不動産に流れ込めば東京と限られた都市圏の不動産価格がますます高騰することになるだろう。

加えて仮にアメリカの状況が落ち着き資金が引き上げた際にはバブル崩壊のような現象が起きるかもしれない。唐鎌大輔氏によればすでに借金をして円を持っている人たちも増えておりこれが急速に巻き戻った場合にはかなりの混乱も予想される。ただし円買いの動きが加速しても120円台・130円台に戻らないのも特徴になっている。日本の国力(ファンダメンタル)による日本買いではないものとみなされいるそうである。

背景事情のうち「議会と中国」について関連情報をまとめておく。下院は債務上限延長と減税案をまとめた。関税と減税はセットになっている。アメリカ合衆国はインフレに苦しむだろうがそのうち減税が行われるので景気は悪くならないだろうというのがトランプ政権側の説明である。

ジョンソン下院議長は大胆な歳出削減を確約せざるを得なかった。それだけアメリカ合衆国は債務問題に神経質になっているということになる。

大統領は電話やホワイトハウスでの会議を通じて反対派に働きかけた。ジョンソン下院議長は記者会見を開き、少なくとも1兆5000億ドル(約216兆円)の歳出削減を「確約する」と宣言した。共和党のスーン上院院内総務は議長とともに「多くの」共和党上院議員が同じ目標を共有していると発表したが、確約はしなかった。

米下院が予算決議案可決、減税や債務上限引き上げに道-上院案を承認(Bloomberg)

ただし急速に景気が悪化すれば連邦政府の資金が底をつく期限が議会合意より先にやってくると予想されている。

超党派の米議会予算局(CBO)は、議会が連邦債務上限の引き上げや適用停止を行わない場合、政府は早ければ8月にも全ての支払いを期限通りに履行するための資金が不足する可能性があると警告しているが、税収が低ければ、その期限は5月下旬にも訪れる可能性があるという。

米下院が予算決議案可決、減税や債務上限引き上げに道-上院案を承認(Bloomberg)

BBCは中国が「今回の一連の出来事を通じて米国債が武器になると気がついただろう」と書いている。また、アメリカ合衆国市民のマインドは急速に落ち込みを見せており「資金ショートの可能性」も杞憂とは言えない状況だ。

イギリスの参謀総長が10年ぶりに中国を訪れスペインの首相もEUと中国は関税問題に共同して対処すべきだと主張した。

トランプ大統領の稚拙な貿易戦争はアメリカの国家財政にとってはリスク要因になっており、これがアメリカ売りにつながっている。

トランプ大統領は習近平国家主席は友達だと主張し早期対話に意欲を見せている。しかし彼の定義での「友達」とはお互いに利用できる存在程度の意味しかなく、時には先に殴って相手に言うことを聞かせようとする存在に過ぎない。礼儀もわきまえておらずメンツを重要視する中国では「友達」扱いされていない。

中国側も貿易戦争のエスカレートを望んでいない。ただしその表現は独特だった、もう「貿易戦争には付き合っていられない」と突き放した声明を出しこれ以上の関税付加は行わないと言う宣言に代えた。

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