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ETCが大規模障害 中には「いっそのこと無料にしては?」の声も

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NEXCO中日本のETCシステムが大規模障害を起こし高速道路に渋滞の列ができた。東京や南関東などは桜が満開のシーズンを迎えておりお出かけのスケジュールが大いに乱れたという人も多かったのではないかと思う。今では9割の車両がETCを搭載しているそうで、影響は大きかった。

今回の事故を受けてNEXCO中日本は一部のETCゲートを解放した。このためネットでは「いっそのこと無料にしては?」という声も出ているそうだ。

ではなぜ日本の高速道路は無料にならないのか。

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もともと日本の高速道路は無料化されるはずだった。現在もこの方針そのものは撤回されておらず「2115年までに無償化」されることになっている。一度決めた方針を撤回できないうえに一度手にした利権を手放すこともできないことがわかる。

日本には東京から福岡まで続く基幹線が地方を支えるという構図がある。この「地方が群がる」構造のため高速道路は一時期40兆円もの赤字を抱えていた。

猪瀬直樹氏はこの構造を「永田町・霞が関・虎ノ門」トライアングルと言っている。本来営利活動ができないNHKも周辺に株式会社を作り知財を移して営利活動を行っているがこれを大規模にしたのが「永田町・霞が関・虎ノ門」トライアングルだ。官僚は植民地的な外局を作り永田町は政治分配を選挙利用する。

ちなみに今回ご紹介した投稿は2010年のもので当時は民主党政権だった。現在猪瀬氏は維新の参議院議員で医療費削減などに強い意欲で取り組んでいるが、政治の構造はあまり変わっていない。

猪瀬氏はテレ東BIZで「郵政民営化は入口で高速道路が出口」と小泉総理大臣に働きかけたと主張している。実際に小泉政権は道路公団を解体した。

新たな高速道路の整備を名神高速の料金だけで賄うことは難しく、その後、借金は膨らみ続けた。道路の整備や管理を担っていた「日本道路公団(当時)」の借金は実に約40兆円にまで達した。

いったいなぜ? 高速道路 有料期間は2115年まで延長へ(NHK)

しかしこの後に笹子トンネル事件が起こると「老朽化したインフラをどうするのだ」という議論が起こり、高速道路無償化・無駄の削減というアジェンダは再び顧みられなくなってゆく。

こうした背景があり本来は無償化されているはずの基幹道路は未だに有料になっている。また日本人には半ば本能的な囲い込み気質があるためETCという独自規格が作られた。さらに地方が衰退するとますます一部地域に人口が集中するという一極化の問題も起きている。

今回、システム改修の結果のETCシステム障害を起こしたことまではわかっている。だがその原因が何なのかまでは明かされていない。

みずほ銀行の事例では競争力を失い多重請負構造のある国内システムベンダーがシステム更新に苦労していたことがわかってきている。いくつかの銀行が孤立したシステムをそれぞれ持っていて統合に非常に苦労してきた。さらに国際競争から切り離された結果として構造転換も進んでいない。また多重請負構造があり責任の分担も曖昧だった。

今回は「高度に統合されたシステムを1つだけ作ってしまった」ためにそれが障害を起こすとその影響が直ちに日本の基幹線を麻痺させるということまでがわかったのだが、そこにITシステム業界の構造がどう関わっているのかまではわかっていない。

今後、NEXCO中日本のシステムがどのような脆弱性を持っていたのかが問われることになる。詳細な調査と速やかな公開を期待したい。

いずれにせよこうした構造的な問題に関心が集まることは少ない。国民が求めるのは結果だけである。「どうせ高速道路料金は政治家がぼったくっているのであろう」などと疑う声を日刊スポーツが伝えている。

「まだETC障害復旧してないんか。あれだけバカ高い利用料取っておいてまともな管理できないんだったら、もうETC自体なくして高速料金無料にしろって思っちゃう。通行料も自動車税もほとんど政治家のポケットに入ってるんだろ?」

「ETCのシステム障害。解消するまでは全区間無料にすることはできないのかな。出入口の混雑は少しはマシになるんじゃないかな」

「ETC障害は利用者に落ち度が1ミリもないのに『金払え』は個人的に『うん?』と思う。これが原因で渋滞してるんだから『高速』になってないじゃんと」

「ETC障害の中日本高速道路だけど鉄道の運送約款みたいなやつないのかな。技術的な事は詳しい人にお任せするとしてルール的に今回の対応が正しいのか検証してみたい」

「ETC障害で出口渋滞にはまった。乗る前に教えてくれ~」などと書き込まれていた。

「ETC障害」Xトレンド入り…不満続々「無料にして」「高速になってない」「渋滞はまった」(日刊スポーツ)

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Comments

“ETCが大規模障害 中には「いっそのこと無料にしては?」の声も” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    昔、人づてから聞いた話なので正しいかはわかりませんが、海外では渋滞等が発生した時にゲートを開放することで渋滞を緩和すると聞いたことがあります。今回の日本のETC障害でも行われたようですね。
    今回のことを調べているときに、台湾の高速道路システムについて言及している記事を見つけました。
    「ETC車載器も料金所も必要ない、台湾の高速道路から考える日本のETCシステムの課題…安東弘樹連載コラム」
    https://gazoo.com/column/ando-hiroki/23/06/28/
    この記事を読むと、日本でも料金所をスピードを落とさずに通過しても料金徴収は技術的に可能だし、料金が払われなかった時の追跡も技術的に可能だと書いてあり、コストが高いシステムを生かし切れていないのだなと思いました(台湾のシステムのほうがコストパフォーマンスがよさそうですが)。
    コメントを見ると、「癒着」が原因だと書かれています。たぶんそれも要因の一つかもしれませんが、仮に癒着がなくなったとしても、今の日本を見ていると合理的なシステムが作れるとは思えません。「不公平が無いように確実に料金を徴収するため」「正直者が損をしない為です」という言葉が、とても日本らしさを表しており、お金をいかに徴収しきれるかに固執するあまり、合理的ではなく非効率なシステムを作ってしまうところが日本にはあるとかんじるからです。

    1. 完璧さを求めるあまりコストを度外視するという傾向は確かに日本にはあると思うんですが、結果的に大きな混乱を招いているってことですかね。