日本語に直すと「手を引け・手を離せ」ということになる。全米各地とヨーロッパの一部に広がっている。株価の大幅下落で人々が動揺する中で平日のゴルフ休暇を満喫し「負けるのは弱者だけ」と言い放ったことも反発につながっているようだ。
これまでの反トランプ運動は「価値観」に関するものだった。サイレントマジョリティの中には「表立っては言えないがキリスト教と白人有意を守るためには政治的な正しさになど構っていられない」という人たちが大勢いたのだが、トランプ大統領が経済に手を突っ込んだことで運動の質が変わりつつある。
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#ME-TOO運動の盛り上がりからデモの組織化が進んでいる。Xではすでに#HANDS-OFF運動のタグができていた。イーロン・マスク氏がトレンドワードの拡散を抑えている可能性はあるがAXIOSは全米に広がるHands-Offの声という記事を掲載し広がりを拡散。キャンペーンサイトも立ち上がっている。キャンペーンサイトでは「予定されているイベント」のページがありボランティアを募集していた。
またFOXニュースもこのイベントを好意的に紹介していて、少なくとも「意識高い系のデモだ」という扱いにはなっていない。
おそらくFOXニュースの扱いが最もわかりやすい質的変化の事例だろう。
アメリカ合衆国の有権者が期待していたのは中間所得層の地位の向上だった。しかし、世界一の大富豪イーロン・マスク氏は連邦職員を一斉に解雇。「金持ちの道楽が真面目な人々の人生を狂わせる」という反発につながった。
トランプ大統領は自身が所有するゴルフコースに連邦(税金で運用されている)のヘリコプターで乗り付けてカートを横付けさせた。その後で「ONLY THE WEEK WILL FAIL」とSNSに書き込んだ。弱者だけが負けるという決めつけがトランプ大統領を支持してきた一人ひとりの中流層にどんな印象を持たれたのかは想像するしかないがFOXニュースの反応を見る限りは落胆のほうが多かったのではないかと思う。
ただしトランプ大統領側も「権力の使い方」を学習してしまっているようだとREUTERSが分析している。つまり人々が反発すればするほど破滅的な政策に突き進む可能性があるということになる。
こうしたとトランプ大統領の恫喝は徐々に合理性を失い国内の政敵だけでなく日本も含む同盟国に向かっている。Bloombergはトランプ大統領とウォール・ストリートが対立しつつあると書いている。今回の関税政策は「身内」によって決定されウォールストリート出身のベッセント財務長官の役割は限定的だったのだそうだ。
中間層は「金持ちのための政治」と反発しているが実は富裕層も焦りをつのらせているということがわかる。
関税案は主にトランプ氏側近の小人数のグループによって策定された。関係者によると、ベッセント氏は大統領執務室での会議で、さまざまな関税率に基づく市場と経済の潜在的なシナリオを提示したにとどまるという。
ウォール街、関税について大統領の翻意促すことをベッセント氏に期待(Bloomberg)
穏健な民主主義が成り立つためには人格ではなく課題に集中した議論が抑制的に行われる必要がある。しかしながらアメリカの政治言論はもはや「生き残るのは俺かお前か」という言論的戦争状態にある。この結果起こっているのが「政治家は我々の生活に関与すべきではない」というHands-off運動だ。人々は政治に問題解決を期待しておらず「放っといてくれ」と主張するようになっている。アメリカの民主主義はある意味崩壊したのかもしれない。
日本でも一部で万人闘争型の政治言動が見られるが、その広がりはまだまだ限定的であり引き返すことができる。
ただし我々が歩みを止めないのであればその行き着く先は万人闘争状態である。こうなりたいなら好きなように「正義を執行してくれ」と思うがおそらくそれはとてつもない疲労感と制度破壊をもたらす破滅への道であり誰も満足はしないだろう。