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若手の政治参加 秋田県知事選挙・市長選挙が教えてくれること

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秋田県知事選挙・秋田市長選挙が行われた。秋田を代々治めてきた佐竹家の血を引く(清和源氏の流れで佐竹家の分家の「北家」出身なのだそうだ)佐竹敬久氏の引退に伴って行われた選挙で地域の若手が政治参加した結果それぞれ「刷新」が選択された。

全国的にはあまり注目されない選挙なのだろうが、秋田の選挙からは中央政治で起きているのは自民党離れではなく既得政党離れであるということがわかる。

今回政治を動かしたのは子育て世代の「若手」だったというのも重要なポイントかも知れない。これまで政治に参加していなかった人たちが関心を持てば状況は変わるということだろう。

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県知事選挙は保守分裂となった。自衛隊出身の「若手」の鈴木氏がいち早く出馬を表明し何名かの議員が追従したことから党内がまとめられなかったそうである。「一本化すれば県連が瓦解する」という状況だったそうだ。

一方の市長選挙では54年ぶりに現職が新人に敗れた。

立憲民主党の寺田学氏(元県知事の次男)は市長選挙では沼谷さんを支援し当選させた。沼谷さんは現職知事を多選批判し当選している。

しかしながら県知事補としては元副知事を支援。こちらは自民党の一部議員との相乗りだった。寺田さんは猿田さんを当選させることはできなかった。

つまり、有権者が選んだのは立憲民主党ではなく「これまでの政治状況が変わること」だった。新しい県知事となった鈴木氏は政治刷新と子育て支援を訴えた。これが地元の経済界の若手経営者の支援を集めたのだと時事通信は分析している。

鈴木氏は県政の刷新を掲げるとともに、人口減少対策を強化して、秋田出身の子育て世帯が地元に戻る流れをつくり出すと主張。日本維新の会の県組織や若手経営者の支援も受け、幅広い支持を集めた。

秋田知事に鈴木氏初当選 保守分裂、元副知事ら破る(時事通信)

既成政党の相乗りという構図が嫌われたという「立憲関係者」もいるそうである。

保守分裂選挙だが泥沼の争いにならなかったのは「現状維持」か「若手・子育て世代に着目した政治の組み直しなのか」が焦点だったからだろう。つまり人物や既得権に注目した選挙ではなく「目的」がベースになった選挙だったことになる。

一方で気になることもある。

もともと日本の政治は企業が海外で稼ぎその利益を分配するための装置である。このため旧来型の選挙では「中央との結びつき」を訴える候補と議会全体が結束し「地元企業への利益分配」を約束するというのがお決まりだった。

では地元企業から家計に対する分配は誰が行っていたのか。主な稼ぎ手である「お父さん」と補助労働(主婦かパート)の「お母さん」が家計分配を行っている。お父さんが企業から稼いできて妻と子供を食べさせるというのが分配構造の一部になっていたのである。

自民党の政治家が夫婦別姓に反対するのは日本の家族が自民党統治を支える分配装置であるという認識に基づくものだ。そのメカニズムが言語化・理論化されていないため「夫婦を別姓にすると日本の家庭が崩壊する」という感情的な説明に置き換わっているが実際に重要なのはもちろん「名前」ではなく「稼ぎ」だ。

今回の選挙は旧来型の分配が滞る中で住民が「直接政治に参加しなければ分配が得られない」と気がついたと総括することができる。これはこれで結構なことだ。

では「一体その原資は誰がどこで稼いでくるのか?」という問題は残る。トランプ関税は日本が海外で稼ぐというこれまでの通商環境を破壊しつつあるが自民党も立憲民主党もこの構造変化にキャッチアップできていない。

秋田県の政治状況と大阪・兵庫阪神圏の政治状況を比較すると「人物に着目した万人闘争型の政治」よりは「問題に着目した政治」のほうが健全であるとわかる。しかし大きな意味ではこれまでの通商環境を前提とした分配型の政治からは脱却できていない。

問題が解決できないからこそ一部の暴力的な解決とその他大勢の分配の組み合わせにソリューションが二極化するのであろうという結論が得られる。そして合理的な問題解決が図られない以上は構造の破壊による破壊的な解決が最終的に「問題を解決する」ということになる。

システム崩壊と言論を駆逐する暴力が状況を「解決」するなど民主主義の通念から見ればあってはならないことなのだが、我々は何も決めない・何も分析しないことによりあってはならない明日に向かって今日も一歩一歩進んでいると言えるだろう。

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