8,700人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

保護主義の果に アメリカ合衆国で頭脳流出の危機

Xで投稿をシェア

ロバート・ケネディJr長官が保健福祉省の人員削減を発表した。すでに10000人の人員削減計画が発表されているそうだが追加で10000人を削減するという大胆な計画。ABCニュースは保健福祉省の配下の各部署がなくなれば取り返しがつかないことになりかねないという識者の声を伝えていた。

共同通信がネイチャーのアンケーを紹介している。アメリカの科学者の75%が海外移転を検討しているという。日本はバブル崩壊後に人件費(社内教育費)が削減されその後取り返しがつかない状態に落ちいっている。まさか同じようなことがいっけん経済が好調なアメリカ合衆国で起きるとは思わなかった。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






ロバート・ケネディJr長官が保健福祉省の人員削減を発表した。

米保健福祉省(HHS)は27日、フルタイムの職員を約1万人削減すると発表した。同省ではすでに1万人が早期退職の募集に応じており、8万2000人だった同省のフルタイム職員は6万2000人になる。

米保健福祉省、職員1万人削減 組織の統廃合も(CNN)

CDCやFDAなどアメリカ人の暮らしの安全確保に直接関わる部局が多く含まれるのが特徴。ABCニュースは「こうした部局がなくなれば誰かがその仕事を引き継ぐ必要があるが民間が引き継いだとしても今の部局ほどの能力は発揮できないだろう」と警鐘を鳴らしていた。研究は一人ひとりの能力以上に組織的なネットワークなどの「エコシステム」が重要である。ただしCNNによれば削減されるのは主に人事、IT、調達、財務などのスタッフ・バックエンド業務となる。

共同通信が「米国の科学者、75%が出国検討 トランプ政権で、英誌ネイチャー」という記事を出している。ネイチャーの記事の紹介だ。

アメリカ人の科学者の75%が海外移転を検討しているという内容だが政治的な姿勢を嫌っているというよりはプログラムの廃止によりポジションがなくなりつつあるため移転を余儀なくされているということのようである。特に将来を担う若手が大きな不安を抱えているという。

日本でこの手のニュースを紹介すると「意識高い系の搾取のためのプログラムを廃止しているに過ぎない」「官僚主義による弊害が大きかったのだから削減は当然だ」というようなコメントが多く寄せられる。自国の官僚主義に対する苛立ちを繁栄しているのだろう。

だが、バブル崩壊期の経験を考え合わせると全く違った印象を持つ。

日本は人材自前育成主義が強く大学の学部での教育内容はそれほど重要視されてこなかった。企業が自分たちで一から新卒を教育していたのである。バブルが崩壊すると企業はこの人材教育をやめてしまった。

先日たまたま見かけたReHacQでは後半でこの問題が語られている。日本画再び成長するためには一人ひとりの労働者のスキルアップが欠かせないとしたうえで、かつては企業の教育費が日本は高かったとしている。後藤さんは「そういうものなんですかね」という顔で聞いている。40代で企業が自前で人材教育をしていた時代を知らないのだろう。

ところがそもそも就職氷河期に留め置かれた人たちに「今から頑張ってリカレント教育を受けてください」などといってもキャリアには取り返しがつかないダメージがある。つまり「今更頑張ってももう取り返しがつかない」と感じる人達がほどんどだろう。さらにそもそも企業に教育してもらえるとも思っていない。

このプレゼンテーションでは「企業の一人ひとりがDXやAIなどの基礎教養を身につけるべき」としている。これらは一人ひとりのスキルアップにはあまり関係がないが企業や社会の基礎教育としては極めて重要な現代版「読み書き算盤(そろばん)」である。

将来世代から機会を奪った影響は数十年単位で取り返しが付かないダメージを知的インフラストラクチャ(下部構造)にもたらすことになる。そしてすでに失ってしまっている人たちは「もともと日本がどういう国だったのか」ということすら想像できなくなってしまう。

アメリカ合衆国では海外留学生に対する弾圧も始まっている。親パレスチナ運動に参加しただけでビザを取り消される人が増えているのだ。教育は最大の投資であるためあとに続く世代はアメリカ合衆国を留学先には選びにくくなるだろう。

トランプ政権はアメリカの将来を担う知的インフラを破壊しつつあるが、おそらくこれが間違いだったと気がつくのは取り返しが付かないダメージが顕在化してからだろう。そのときに「対策」を考えたとしても「一体何から手を付ければいいのか」となるのではないかと思う。実際に日本はそうなっている。

下部構造破壊の恐ろしさはここにある。何を失いつつあるのかが意識されにくく気がついたときには取り返しがつかないことになってしまっている。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

+10

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です