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トランプ関税で日本経済は大打撃なのか?

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トランプ政権が輸入自動車に追加で25%の関税を課す方針を決めた。石破総理は粘り強い交渉を指示しているがおそらくこれは効果がないだろう。ここで「日本経済に大打撃だ」と書こうとしたのだが念の為に調べてみるとGDPの抑制効果は0.2%程度という資産があるそうだ。自戒も込めて思い込みとは怖いものだと感じる。

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トランプ大統領の思考はだいたいカジノのポーカーゲームで説明できる。毎回ターンがあり眼の前のゲームで一人勝ちしたいと思っている。ポーカーと違ってルールは俺様が決める。石破総理は前回のゲームで手札を全部切ってしまっているが、勝ちにこだわるプレイヤーは前回のゲームの結果など覚えていない。意識しているのは眼の前のチップの山だけ。

だから粘り強い交渉には意味がない。トランプ大統領は自分が勝つゲームにしか興味がなくウィンウィンなど目指していない。

この一つの現われとしてウクライナの利権総取りがある。これまで多額の援助をしてきたのだからすべての利権にアメリカの優先権を認めるようにとウクライナに迫っている。結果的に援助国であるヨーロッパを除外しようという提案になっている。

石破総理の頭の中については別述する。予算通過に目処が立ちつつあり「4月1日に以降にどうやって石破おろしを防ぐか」で頭がいっぱいになっているようだ。おそらく激変する安全保障環境にも自動車メーカーの保護にもさほど興味はないだろう。ただし、28日に参議院を予算通過させる事はできなくなった。夏休みの宿題をやっつける小学生よろしく土日もなんとか……ということなのだろう。

確かに、今回の関税の発表で日本の自動車メーカーとヨーロッパの自動車メーカーには大打撃が走っている。これは確かなようだ。

日本自動車工業会によりますと、国内で自動車産業に関わる就業者の数は

▽部品メーカーなどを含めた「製造部門」だけで88万人余りにのぼるほか、
▽鉄鋼や生産機械などの取り引き先を含めた「資材部門」では53万人余りとなるなど、多くの人が関わっています。

SMBC日興証券は、アメリカが日本車に対して25%の関税を課した場合、自動車以外の産業も含めて、日本企業の収益が最大で1兆7500億円減少すると試算しています。

トランプ氏 25%の自動車関税署名 日本車も対象 国内影響は?(NHK)

ポルシェの株価は27日のフランクフルト株式市場ではポルシェが5.7%、メルセデスが5.2%、BMWが4.9%、それぞれ一時下落した。アウディやランボルギーニを傘下に持つフォルクスワーゲン(VW)は4.3%下落し、英アストンマーティンはロンドンで8.9%急落した。

ポルシェとベンツ、トランプ自動車関税で営業利益4分の1消滅の恐れ(Bloomberg)

Yahooニュースを見ていると自動的に「日本の自動車メーカー」を「日本」と置き換えている自分に気がつく。

野村総合研究所の試算によると日本のGDP低下は0.2%程度と想定されているという。日本は自動車産業だけが生き残り地域経済を牽引しているとあまり調べることなく書いてきたが「意外経済に対する影響はこんなもんなんだな」と感じた。雇用の一割が自動車産業に依存しており「広がり」という意味では大きな影響があるが意外とGDPに対するインパクトは小さいようだ。

ここでYahooニュースの識者のコメントを見るとたしかに主語が「日本の自動車メーカー」となっているものが多く「日本経済に大打撃」とは書かれていない。

日本の自動車産業の動きが鈍いのには理由があるようだ。これ以上の現地生産を増やしたくても労働者確保が難しいのだという。

アメリカ合衆国ではインフレが進んでいる。日本のような社内昇進は一般的ではないのでインフレに対応するための転職が奨励されている。またトランプ政権は移民排斥を積極的に推進しているためアメリカ国内の人件費は更に高騰する可能性がある。

結果的には「関税がかかってもアメリカ国内で製造するより他国で作って売ったほうがトク」だとメーカーが判断する可能性がある。マクロ経済とは難しいものだ。

すでにアメリカでは「テスラ優遇だ」という指摘も出ている。わかりやすい「オトモダチ」優遇と見られているようだ。またNAFTA後継のUSMCA準拠の部品輸出について当面は関税発動が見送られる。カナダとメキシコだけでなくアメリカの自動車メーカーがトランプ政権に働きかければ結果的に関税は実質的に骨抜きにされてしまうかもしれない。

トランプ政権閣僚らのイエメン攻撃のチャット流出から閣僚の一部(バンス副大統領など)がヨーロッパを敵視・軽視する発言を行っている。今回の自動車関税の一件でもまるで1980年代を彷彿とさせる発言が飛び出している。

一方、トランプ政権は、日本が「非関税障壁」でアメリカ車の輸出を阻んでいるとも主張していて、貿易政策を担当するナバロ大統領上級顧問は、「日本の幹線道路沿いなどのディーラーでアメリカ車を売ることは事実上不可能だ。日本が許さないからだ」と話しました。

自動車関税25%と発表 トランプ大統領「4月2日に発効」と説明 「アメリカで製造されていない、すべての自動車に」(TBS NewsDig)

アメリカ人は勝ちにこだわりすぎるあまり自分たちにとって都合の悪いルールを「公平でない」の罵ることがある。日本でアメリカ車が売れないのは日本市場を研究しないままでアメ車を日本に押し付けようとするからである。仮に日本がアメリカの製品を排除しているならばiPhoneがこんなに売れているはずはない。

冒頭でアメリカ合衆国は勝ちにこだわる「ポーカープレイヤー」のようだと書いた。ルールを決めるのも勝つのも俺ということになる。こんなプレイヤーといつまでもゲームに付き合うようなお人好しはいない。トランプ関税はUSMCA準拠によって骨抜きにされ、アメリカのインフレが加速する可能性もあるが、それよりも「誰もアメリカを相手にしなくなる」ことのほうが問題としては大きいのかもしれない。

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