どうやらトランプ大統領がロシアとの和平交渉に飽きてしまったようだ。比較文化論的に見れば長期志向のロシアだけが得るものを得て短期志向のトランプ大統領は混乱を作り出しただけということになる。
どうやらトランプ大統領の次のおもちゃは自動車関税のようだ。数時間前に唐突に「今日発表します」と言い出した。
Bloombergは軍事作戦情報の流出騒ぎを「シロウト同然の人たちが政権中枢にいて情けない限りだ」と論評している。
だが実際にはスラブ式と欧米式の交渉のやり方の違いも交渉に大きな影響を与えているようにも見える。
ロシアやウクライナなどのスラブは敵に囲まれており「妥協と譲り合い」という姿勢は見せない。妥協は弱さの表れであり敵は騙してもいいと考える傾向がある。日本人から見れば「頑固でずるい」人たちだが、大陸の東西から敵がいつ襲来してくるかわからないなかで生き残ってきたのだから生存のための最適戦略でもあったのだろう。
今回の交渉ではアメリカとウクライナが合意内容を発表した後で「しれっと」自分たちの主張を入れ込んできた。北方領土二島返還をほのめかし日本から様々なものを引き出したのと同じやり方。後になれば「彼らは嘘をついていた」とわかる。だが、そもそも長期的信頼構築に全く重きを置いていないのだから特にそれを気に病むこともない。
しかしその後、クレムリン(ロシア大統領府)が発表した第三の文書が状況を混乱させた。この文書には、アメリカとロシアの元の合意には含まれていなかった条件が入っていた。黒海での停戦合意は、ロシアの銀行、保険会社、企業、港湾、船舶に対する制裁が解除され、農産物や肥料の輸出の増加が認められた場合のみ発効する――というものだった。
【解説】 停戦までの長くゆっくりとした道のり、成功の保証はなく……ウクライナとロシア(BBC)
欧米流の民主主義が成り立つためには「お互いの妥協」が必要だ。大西洋以外に逃げ場のない半島で生まれた政治様式と言える。ロシアにもウクライナにもそのような気風はない。だからは話し合いによる妥協が前提の民主主義がロシアやウクライナでは成立しにくい。
さらに長期志向・短期志向という違いもある。トランプ大統領は締切を設定しその期間中に成果を出そうとするがプーチン大統領は長期戦を好む。ホフステードの国際比較による「長期志向・短期志向」の図式がそのまま当てはまっている。
つまり、トランプ氏は選択を強いられかねないということだと、当局者は指摘。その選択とは、トランプ氏が自ら設定した期限内の停戦を実現させようとロシアに強い立場を取り始めるか、ますます重要な譲歩をするようになるかだろうという。
ウクライナ問題、トランプ氏は近く困難な選択迫られる-欧州当局者(Bloomberg)
では短期志向のトランプ大統領は今後どうするのだろうか。
どうもこの問題に飽きてきたようだ。記者会見でアピールできる成果を出そうとしたが出なかった。そのうちにどうでも良くなり「ロシアは終わらせたいと思っているかもしれないし思っていないかもしれない」と言い出した。もうどうでもいいということ。
トランプ氏はニュースマックスとのインタビューで、「ロシアがこれを終わらせたいと考えているとは思うが、彼らが長引かせている可能性もある」と語った。
プーチン氏、故意に停戦合意遅らせている可能性ある-トランプ大統領(Bloomberg)
ロシアは「停戦合意は制裁が解除されてから」と主張しヨーロッパは「停戦合意が実施されたら制裁を解除する」と主張している。トランプ大統領はどちらかを説得することはなく「なんかもうよくわからない」と言い出した。どっちみち大西洋の向こうで行われている「ヨーロッパの問題」であり「ヨーロッパが勝手に解決すればいい」と考えているのだろう。
軍事機密情報問題ではギャバード国家情報長官とヘグセス国防長官が「軍事機密情報などない」と主張したことでThe Atlanticのゴールドバーグ編集長が全文を公開した。バンス副大統領が「ヨーロッパタダ乗り論」を展開し周りが諌めると言う図式だったようだが、トランプ大統領はこの「ヨーロッパタダ乗り論」に同調している。
結果的にトランプ大統領が取り組んだ問題はすべて中途半端な状況でおもちゃのように放り出されることになり後には混乱だけが残るということになる。
トランプ大統領の新しいおもちゃは自動車関税とグリーンランドのようだ。
自動車関税に関しては突然「今日発表をやります」と表明している。REUTERSは「自動車関税発表の噂がでるなかで女性月間の演説を行った」と報道している。聞いてみたが中身のない演説であり特にニュースになるような発表は行われなかった。その後「アメリカで製造された自動車を除いて25%の関税をかける」との発表が出た。
またグリーンランドに関しても改めて所有への意欲を表明している。戦略的に動いているというよりは支持者の繋ぎ止めに必死であるということがわかる。