トルコで混乱が広がっている。エルドアン大統領は長年の統治(首相時代から含めると22年目なのだそうだ)の結果としてトルコを掌握しているのだろうと思っていたのだが、意外とうまく行っていないようだ。各地で「(BBCに言わせると)平和的な」抗議活動が続いていて、通過リラも下落しているのだという。
状況はかなり複雑なようだ。エルドアン大統領は首相時代を含めて22年間トルコのリーダーとして君臨しているそうだが、憲法改正なしには2028年に予定されている大統領選挙に出馬できない。野党は2028年の大統領選挙の候補者を選定する時期に入っていた。
こうした事情があり最も有力とされるイマモールイスタンブール市長だけでなく100人以上を拘束した。イマモール市長は市長権限を停止させられイスタンブール大学の大学卒業資格(大統領選出馬の要件とされる)も剥奪されたそうである。
しかし、この強権的な野党つぶしは却って大きな反響を呼んだ。トルコ各地ではデモが起きている。
- Why are there protests in Turkiye? What to know(アルジャジーラ)
- Turkish President Erdogan’s main rival jailed(BBC)
またリラ安・株価の下落・国債利率の高騰などのトリプル安もおきているという。中央銀行は銀行を集めて「技術的な」会合を行っている。
エルドアン大統領は2016年から2017年にギュレン派の追放を通じてトルコを掌握したものと思っていたのだが、今回の騒動を見る限り必ずしも民心の掌握には成功していないようだ。
背景を探るとやはり「インフレの再燃」が懸念されているようで中央銀行はインフレが再燃すれば利下げを休止せざるを得ないとしており「悪いインフレ」が都市部を中心にエルドアン政権への不満を強めていることがわかる。前年同月比56.21%ということは一年で物価が1.5倍になっているということになる。
トルコのイスタンブール市計画局(IPA)は2月3日、イスタンブールで4人家族が生活する際にかかる、1月の平均生活費を発表した。これによると、前年同月比56.21%増の8万2,880リラ(約35万6,400円、1月31日付換算レートで1リラ=約4.3円)、前月比でも5,495リラ(7.10%)増加した。4人家族構成は、大人(夫婦)と子供(2人)を想定しており、月額最低賃金の手取りが2万2,104リラで、共働きとした場合も、到底カバーできる金額ではない。また、あらゆる商品の価格が高騰しているイスタンブールでは、この金額で最低限の生活さえできないという声もある。
イスタンブールの生活費が高騰(JETRO)
かつてほどではないにせよ一度インフレに火がついてしまうとなかなか収まらないのだなあという気がする。トルコのインフレのピークは2024年5月の75%超だった。
2月のインフレ率は前年同月比で39.5%と、市場予想を下回った。75%を超えてピークを記録した昨年5月と比べると伸び率は大幅に縮小しており、中銀は今後数年のうちに目標5%に向けて持続的に縮小するとの見解を示している。
トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き見通し示さず(REUTERS)