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政府の備蓄米放出もJA全農救済の選挙目当てだった

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政府の備蓄米放出の94%はJA全農が吸収したそうだ。結局は政府に対するJA全農救済策だということがわかった。

JA全農の救済策はJA全農を通じた自民党救済策であり農家のためになっていないし、もちろんコメの価格も下がらずしたがって消費者対策にもなっていない。

国産米より外米(最近は美味しいおコメも増えているそうだ)となりコメよりコムギということになる。結果的に日本の消費者は国産米を選択しなくなるだろう。年齢が若ければ若いほどコメに対する執着は薄い。

政策立案プロセスを軽視してきた日本の政治は日本の根幹の食料政策を無自覚に破壊しつつある。しかし、当事者たちはそれに気がついていない。恐ろしいことだ。

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長引くデフレマインドの影響で日本の物価には価格の上方硬直性が働いていたのだろう。逼迫感によって刺激され本来の価格に戻ったと説明するのが最も合理的である。

仮に農林水産省が主張するような投機的なコメの保管が行われていたのであれば、農林水産省がコメの放出を決めたときに価格が下がっていたはずである。しかしそれは起きなかった。

“消えたコメ”について、稲垣氏は「大手集荷業者が集めているコメが例年大体220〜230万トンあるが、去年の12月時点で前の年と比べると20万トン少なかった。そのことを指して“消えたコメ”という言い方をして、それを悪徳業者が買いに来ているみたいな話に少し“尾ひれ”がついた。実態は、集荷業者から直接消費者へ、また農家直売などに流れただけであって、全農をはじめとするJA系統など大手集荷業者ではないところに20万トン回っただけだ。消えてはいない」と説明した。

専門家「コメの適正価格は5キロ3300円」その根拠は? 「米がパンより高い」の是非(ABEMA)

と同時にJA全農はこの価格競争に負けてしまったということもわかった。このままではJA全農系の流通が収益を得られなくなってしまう。だから政府は備蓄米を使ってJAを救済しようとしたのだろう。

直近の参議院選挙を見ると農業系の候補者1名、農水省の官僚出身者が1名既得権として議席を確保している。

さらに森山裕幹事長も農水族と言われている。

しかも、総理が単独で改革を実行できるわけではない。コメ政策に影響力を及ぼすと考えられる森山裕幹事長や小野寺五典政調会長は、農林族議員でもあるうえ、必ずしも農政改革に前向きではない。党の幹部だけでなく選挙地盤が弱い他の自民党農林族議員やJA農協を説得しなければならない。国会論戦になれば、民主党の戸別所得補償との違いも説明できなければならない。農相に相当な知恵と覚悟と腕力が必要とされるが、農林水産大臣に起用される小里泰弘氏は石破氏の主張を実現できるだろうか?

JA農協&農水省がいる限り「お米の値段」はどんどん上がる…(キャノングローバル研究所)

仮にJA全農が農業従事者に役に立っているのであれば「JA全農保護」にも一定の合理性があると評価してもいいだろう。しかし実際には国産米より外米(最近はカリフォルニアやオーストラリアからも美味しいおコメが入ってくる)コメよりもコムギ(パンやパスタ)ということになりかねない。国産米のコストが割高になっている上にコメにこだわらないという消費者も増えているからだ。

今や農水省は食糧法が掲げるコメの価格の安定を維持できていない。この破綻を隠蔽するためにありもしない「投機目的の悪辣な業者」という幻想を振りまいてきた。日本政府発信のフェイクニュースと言って良いかもしれない。

JA全農はこんな通達を出している。配下の中間業者が利益を乗せてしまうと「市場価格に合わせる」人達が出てくる。だから、禁止令を出して抑えるしかないということだ。

まずは価格について、JA全農がまとめた備蓄米の取り扱い指針の中で「販売にあたっては落札金額に運賃・保管料・金利・事務経費など必要経費のみを加える」として販売価格には利益分を含めない考えを明示しています。

備蓄米 引き渡し開始 来週以降店頭に 価格はどうなる?(NHK)

日本の政党は自前のシンクタンクを作らずに全てを官僚に頼ってきた。しかし官僚組織は市場を把握できなくなっており「国益よりも省益」を追求する。しかし現在ではそもそも省益すら追求できなくなっているようだ。フェイクニュースという表現がきついとすれば、過去の政策を否定できずに自己正当化のために都合の良い統計を振りかざすだけの迷惑な存在に成り下がっていると言っても良い。

仮にスピードメーターも見ずにアクセルとブレーキを感覚だけで操作できると主張するドライバーが入れば「車の運転はお控えなさい」というのが親切心だが、政治の世界ではそのような運転がまかり通っている。

無党派層に着目すると選挙至上主義は「バラマキ意外には有権者の支持を獲得できないばかりかバラマキを止めてしまうと嫉妬の対象になる」という不幸な状況が生まれている。一方で組織選挙に着目すると誰の目にも破綻が明らかな組織の保全のために全体合理性を無視した政策が強行されそのために統計までが恣意的に用いられている。

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Comments

“政府の備蓄米放出もJA全農救済の選挙目当てだった” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    2025年3月3日に投稿された「米の価格高騰についての補足」という記事において、デイリー新潮が農水省の米不足の説明が嘘ばかりという記事を紹介しました。今回のこの記事で紹介されているキャノングローバル研究所の記事を見ましたが、さすがにシンクタンク系なので詳しく書かれているなと思いました。ここで言及されている「減反政策」は、過去にも様々な媒体で批判記事があったような気がします。それでも数十年たっても変わらないところを見ると、農業や漁業のような市場原理を適用しにくい(食料は国防に関わるし、水産資源は市場原理に任せすぎると枯渇する可能性がある)産業の政策が、日本全体にとって良くなることを考えておらず、票集めのために毅然とした対応ができない(あるいはするつもりがない)ことが感じられます。
    最近は落ち着いてきたためか、価格高騰が転売ヤーが”主な原因”ではないと報じるところも見かけるようになった感じがします。自分たちの政策がうまくいっていないのを誤魔化すために、スケープゴートを立てるのを見ていると、少子化対策がうまくいっていないのLGBTのせいにしていた某女性議員を思い出しました。アメリカでもトランプ大統領が、そういうことを多くしていますね。問題解決のためには「事実」に基づいた解析と、その解析を使って「合理的」な解決策を作る必要があるとおもいますが、それが出来なくなってしまっている現状では、さらに多くのスケープゴートが作られるのではないのかと心配してしまいます。

    +4
    1. Quoraでは状況を知らない人が「JAも他の小売店と同じくらいの価格で売ってますねえ」と報告してくださったのですが「JAは儲けを乗せないはずでは?」と指摘するとちょっと戸惑った様子でした。他のところで5000円で売れているものをわざわざ安く売るはずもないわけですから「通達による価格統制は無意味だよな」と思ったり「いやいや、実際に流通するのはこれから先かも」と思ったりしますが、いずれにせよ市場に流通するコメを完全に把握することなど誰にもできないわけですよね。だから何が起きているのかはよくわからないまま。

      ただそもそも政府の説明に真実味が薄い(まあフェイクとまではいいませんが)ということに対して憤る人は減った気がします。考えてみればこれが最も危険なことなのかもしれないですね。

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