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高速道路500円まで 行き過ぎた分配型選挙至上主義のために国会が混乱

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石破総理が「高速道路を一律500円にしろ」という国民民主党の浜口議員の発言に頭を抱えた。時事通信は「参院予算委員会でうつむく石破茂首相=21日午後、国会内」というキャプションを付けている。立憲民主党も有権者にアピールする政策が見つからないため一部の議員が消費税減税について議論を始めた。確かに目的を伴った政策であれば良いのだが、日本の場合は単なるバラマキ合戦になっている。

当ブログの仮説が正しければ、石破総理にとって最も簡単な解決策は「一律10万円配ります」と宣言することだ。おそらくすべての政治的嵐は止み国民は沈黙するだろう。

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当ブログでは

  • 日本の政治は政策立案が疎んじ安易な選挙至上主義に走った
  • 選挙では安易でわかりやすい分配政策が好まれる
  • だから現在の政治状況が生まれた

という仮説を立てている。

日本はアメリカとの貿易で稼いだ外貨収益を政治が分配するという時代が長かった。企業の稼ぎは財政投融資という形で政府に流れそれがインフラ投資などに振り向けられた。最初のインフラ投資は太平洋ベルト地帯という国家軸の形成に使われたが後に地方に分配されることになった。また、政府とGHQが主導した家族的終身雇用のもとで企業から正社員に賃金・福利厚生などの形で分配された。

しかしプラザ合意(1985年)でドル高・円安の前提が崩れると資産バブルが生まれる。さらに1990年の大蔵省通達により資産バブルが崩壊すると日本経済は総崩れとなった。

この時期に官僚支配から脱却し政治家がシンクタンクを作って独自に政策を立案しようという機運も生まれている。しかしその機運は田中派の政治文化に強く影響された小沢一郎らによって潰されてしまう。民主党は戦略室に十分な人員を割くことが難しくなった。

小泉純一郎の劇場型ワンフレーズポリティクスの影響を受けた民主党はテレビで自民党の政策を批判。自分たちが政権を握れば「埋蔵金」の発掘により増税なしで国家財政を立て直すことができると根拠なく主張した。

しかし、シンクタンクを持たない(厳密には持とうとしたが潰された)民主党は独自で国家財政を立て直すプランを作ることはできなかった。結果的には財務省に頼らざるを得ず、彼らのアジェンダに従い「消費税増税しかない」ということになり政権を失っている。

安倍政権は「民主党の分配政策は自民党のものより劣っていた」と盛んに宣伝し一時は分配要求が抑えられていたかにみえた。しかしながら、安倍政権の末期にコロナ禍が起きると公明党が主導し一律10万円配布が行われている。「何だやればできるじゃないか」という印象を残したものと考えられる。

続く菅政権もマイナンバーカードを普及させるためにポイントのバラマキを行った。国民はマイナンバーカードの何が良いのかを理解することはなくポイント目当てでマイナンバーカードを作った。

おそらく、現在の石破総理の10万円商品券問題の背景にあるのは「国会議員だけが10万円をもらえるのはずるい」という嫉妬の感情だろう。

この嫉妬の感情を理解するためには日本人の特性を理解する必要がある。それがスパイト気質である。

お金に対する執着が強いがそれを言い出すと叩かれるという恐れを持っている日本人は相手を制限しようとする。勝てないなら負けないようにという戦略だ。

日本人は長い間、コメにせよサカナにせよ資源量が一定という生活環境下で暮らしてきた。江戸時代には住民の移動も厳しく制限されていたため狭いコミュニティで一生を終えるしかなかった。

こうした生活環境下ではコメの収量を爆発的に増やすこともできず「相手の欲求を制限する」ことには合理性があったのだろう。このため自分の利益を度外視しても相手が利得を得ることを阻止しようとする「スパイト気質」が育まれた。一人勝ちによりその他大勢が犠牲になることが防げるという意味では合理性のある戦略的志向である。

有権者が「分配なければ支援なし」というのならばまだ良い。だが現在の政治状況を見ていると「分配なければ(合理性を無視してでも)妨害」という方向に進んでいる。立憲民主党、維新、国民民主党が揃って「自民党は構造的に無党派層に対しての分配を渋る政党である」と証明しようとしている。相手の妨害につながるからだ。

おそらく、事の発端は安倍派など石破総理をよく思わない人たちの「石破おろし」の一つだったのだろう。しかし結果的には石破総理だけでなく自民党全体に火を付けた。

商品券の何がいけないのか、何が政治活動なのかが説明できる人は一人もいない。にも関わらず実際に商品券問題はもはや政治の中心課題として君臨している。ちまちまとした政策論争よりも「自民党の政治家だけがずるい」という嫉妬の感情のほうが日本人の心情に強く響くのである。

政策立案をおろそかにし「感覚」に頼って来た政治が自ら選び取った悲惨な終着点だ。

立憲民主党の野田佳彦代表は「自民党には構造的な問題がある」と指摘するが、これは政党文化の問題であり構造の問題ではない。さらに付け加えるならば野田佳彦代表は日本の政治構造を作ってきた国民気質にはあまりにも無頓着だ。おそらく野田代表は自民党に火をつけようとしているのだろうが風が強ければ政治全体に燃え広がることになるだろう。

仮にこの問題が嫉妬心という炎に起因しているならば、この問題は石破総理の「国会議員だけでなく国民にも一律10万円配ります」というメッセージで沈静化するはずだ。

自民党が権力を維持し続けるためには選挙ごとにあからさまな分配が必要になるということだが、これは政治家が無数の選択によって自主的に選び取ってきた帰結である。

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