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安倍首相はなぜリーダーに向いていないのか

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今日は、なぜ安倍首相が日本のリーダーとしてふさわしくないかについて考える。
昨日の国会審議は冒頭から荒れ気味だった。朝日新聞がどこかから共謀罪の原案を入手したらしい。テロという文言はなく、単に共謀罪を成立させるためにテロを利用したことがわかる。朝日新聞がイタコか大川隆法氏を呼んだのではない限り、どこかから漏れたことは明白だし、同じ内容が東京新聞にも流れたらしい。
しかし民進党の質問は中身の議論にまでは至らなかった。金田法務大臣の答弁がいつものようにボロボロだったからだ。聞が配られればリークされたことは露見するのだから答弁準備もできたはずである。だが金田大臣は「そんなことがあったのかすら知らないし、根拠があるわけではないが、法務省から漏れたわけではない」と答弁し、議場は騒然とした。最終的には「調査します」と答弁しなおした。すでにボロボロの金田法相はもう気にしていないかもしれないが大臣の面子は丸潰れだ。
つまり、官僚は意図的に新聞社に情報を流したばかりではなく、それに対する対応を一切しなかったことになる。防衛省や経産省でもリークが横行していて、責任を政治家に取らせる手法が蔓延している。どうせ法案は通るのだし、政治家が右往左往するのを見てよろこんでいる感さえある。法案さえ通るのなら、官僚に情報漏えいのリスクはない。
巷ではリーダーである安倍首相が官僚を見下ろしているような印象があるようだが、実際は異なっている。日本は強いリーダーシップを嫌うのだ。しかし、いわゆる「ネトウヨ系」と呼ばれる議員たちはこのことが分かっていないようだ。実務経験の不足から来る誤解なのだろう。
例えば、西田昌司参議院議員の質問姿勢にははらはらさせられた。官僚を呼び捨てにして答弁させた上でめちゃくちゃな持論を展開していた。一方、同じ自民党議員でも長峯誠議員は個別具体的な質問をして有効に時間を使いきった。最後は赤いスイートピーのエピソードまで披露して余裕すら感じさせる。都城市長経験者ということで役所や外郭団体がどのように動くのかよく知っているのだろう。
日本の組織は強いリーダーを嫌う。職域に「土足で踏み込まれる」ことを嫌うのだ。このため職能集団である官僚と政治家の力関係はある意味同等だ。「下から」の不服従はいろいろな方法で示すことができるのだが、普段は忖度してやってあげていることをわざとやらないというのも一つの手だし、情報のリークもツールとして利用できるだろう。「下から」の恫喝は意外にうまく行くし効果もある。
強いリーダーシップを誇示したがるネトウヨ系議員はこれがよく分からないのだろう。組織を動かした経験がない人ほど「大きなもの」を思考することになる。議員様になればえらそうに振舞えるし、憲法の縛りがあって法律が作れないとなると、じゃあ憲法を変えてしまえという思考を持っている。
彼らが気にしているのは「どうやったら相手が自分の言うことを聞くか」ということだけであり、その発言の中身が説得力を持つかということは気にかけない。森友学園の理事長と副理事長が典型的で、役人を恫喝したり「えらい政治家」に擦り寄ればみんな言うことを聞くと思っている。挙句の果てには幼稚園児を集めて「日本(にっぽん)民族」と唱和させていた。さぞかし気持ちがよかっただろう。
鴻池元防災担当相は相当ご立腹だった。森友学園側が「お金で政治家が動かせる」と考えていたからだろう。しかし職能人には「自分の職域で有能に評価されたい」という欲があるので、こうした行為は政治家への冒涜だと考えるのだ。しかし、そう思わなかった人もいる。安倍首相とその婦人だ。わけもわからない幼稚園児に「安倍首相はすばらしい」と言わせたのを見て、婦人は涙を流して感動したそうだ。
民主党の場合は官僚を悪者にして政治家が改革のヒーローになろうとしたことが官僚を怒らせたのだろう。自民党が何をしたのかは分からないのだが、安倍さんのお友達が大手を振るっていることが官僚を怒らせているのかもしれないと思う一方で、天下り調査の進行中も気になるところだ。これは官僚の生活に直接関連することなので素手で突っ込めばやけどをするだろう。
しかしそれより深刻なのは共謀罪が役人の怒りを買っているという可能性だ。共謀罪は捜査機関に政治的な圧力がかけられる法律だ。敵対する政治的組織に「犯罪者集団」というレッテルさえ貼れば計画段階で犯罪化できる。これは官僚の職域に素手で突っ込むことを意味する。
政治家に安倍トモが増えてゆくということは、日本型の組織運営が分からない人たちが大量に跋扈するということを意味している。彼らは官僚が言うことを聞かないなら、人事を掌握したり、ロボットのように動かせる法律を作ろうと考えるのだが、これは官僚の反乱を地下化させることになるだろう。