ざっくり解説 時々深掘り

豊洲市場の問題は日本の衰退を端的に現している

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森友学園が買った土地の問題を見ていて、ふとあることに気がついた。日本は確実に衰退しているらしい。
かつて土地というのは値上がりするものだと考えられてきた。これは都市でも地方でも同じだった。それは日本の人口がこの先も右肩上がりだと考えられてきたからだ。だからどんな土地でも値上がりしていた。だから政治は土地の転売を通じて利益を仲間内で分配していた。
しかし人口が縮小期に入ると地方の土地が値下がりを始めた。と同時に土地の選別が始まった。つまり都心や駅地下の土地が値上がりをし地方は空洞化している。空洞化などはまだいいほうで、災害から復旧できない線区も出始めている。
土地の大選別の時代が始まっているということになる。中心と終焉という構造だけではなく、過去にどんな使われ方をしたかによってその評価が下がる土地が出てきた。トランプで言うところの「ババ」である。
すると、ババを誰が引くかということが問題になってくる。「ババを作って土地の価値を毀損させたら、使った人が責任とってね」というような約束になっているのだが抜け穴があったようだ。
それが分かるのが豊洲と森友学園なのだが抜け穴を作れるのは政治だけである。豊洲の場合は、有毒な土地(豊洲にはマンションがたくさん建っているがあの土地だけは売れなかった)に魚市場を移転させることで、築地の土地を売って大もうけしようとしている人がいたのだろう。
東京ガスは有毒物質を除去すると土地の価値を超えることを知っていたために売り渋っていたのだが、濱渦副知事らは「政治が介入すればそんなことはたいした問題ではない」と言い含めたのではないだろうか。つまり、都民に損を寄せて自分たちはお金儲けをしようとしていた可能性がある。
森友学園の場合、売り手である国が有毒物質(つんとしたにおいがしたそうだ)について知っていたかどうかは分からないのだが、それが分かったと単に土地の価格が下がった。しかし何が土地の価値を毀損させたのかは隠蔽されたままだ。いずれにせよ森友学園は「別に子供が危険にさらされてもいいじゃん」と考え、掘り返した「つんとするにおい」をグランドに埋め戻したようだ。魚市場の地下にベンゼンがあってもいいじゃんというのと同じ感覚だ。
両者に共通するのは「損を被るのは一般庶民や子供」ということだが、背景には衰退を背景とした都心への集中という問題がありそうだ。一見都心部は「再び繁栄を取り戻した」ように見えるのだが、地方の衰退はやがて都市に及ぶ。日本は事実上移民鎖国しているので、外から人が入ってこない。地方が唯一の人材の供給源になっているのだが、地方は溶けつつある。
優良な限られた土地だけが値上がりし、周辺部が溶解し、さらに有毒物質は隠蔽された上で一般庶民や子供に押し付けられる。私たちはそういうニュースを見ていることになる。
原子力発電所の問題も同じように考えることができる。福島第一原発の処理費用がいくらになるのかは誰にも分からない。しかし依然として原発は「安い電源だ」という宣伝が繰り広げられている。これは損だけを切り離して国民に付け替えることができるからだ。つまり、政治が「損の再分配」をしており、関係した人が責任を取らなくてよいルールになっているのだ。
日本国内のプロパガンダをよそに世界的には「原発は制御できない」という認識が一般化している。原発産業は衰退に向かっており、ババを引かされた東芝は優良事業を切り売りすることになった。これも政治が(直接ではないが)絡んでいる。原子力発電は国策で優遇された事業なので関係者が増長してしまったのだろう。
つまり市場経済が「損」を抱えきれなくなり、それを誰に押し付けるのかという世界に移行しつつあることになる。経済は着実に衰退の方向に向かっているのだが、かかわっている人たちは案外そのことに気がつかないのかもしれない。
注目すべきなのは「ババ抜き」に政治が率先してかかわっているということだ。つまり、政治による不利益の分配が始まっており、政治に離れている人たちが損を押し付けられやすいという状況になりつつあるのである。