8,700人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

大山鳴動も具体的な成果なし 米露首脳会談の日付は決まらず

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ミュンヘンでヨーロッパを怒らせたバンス副大統領とラブロフ外務大臣の発言をそのまま自分の意見として伝えてしまったように見えるケロッグ特使。結局「このチームではだめだ」ということになったようでルビオ国務長官らが中心とするチームがラブロフ外務大臣との会合に当たった。

結果的に具体的な米露首脳会談の日程は決まらず「チームを作って交渉を続ける」ことになった。ルビオ国務長官はヨーロッパの繋ぎ止めに必死になっており「すべての人達が満足するためにはそれぞれが妥協をする必要がある」と情報発信をしている。

今回一連の記事を書いていて驚いたことがある。トランプさんには立派な考えがあるに違いないと思いたがる人たちが大勢いる。気持ち的には賛同してあげたいようにも思えるのだが、様々な報道を読む限り「やはりそれは間違っているのではないか」と思える。ただ、短い対話を重ねることで「彼らは頭ごなしに否定されることに苛立っているのだな」とも感じた。

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サウジアラビアでルビオ国務長官とラブロフ外務大臣が会合を持った。サウジアラビアの外務大臣も参加している。BBCはヨーロッパでの会合についても合わせて触れていて「まるで並行世界=パラレルワールド」と論評している。

米露会談は結局「交渉チームを作る」ことだけが決まり米露首脳会談の日程は決まらなかった。またヨーロッパチームも「ウクライナへの平和維持軍」についての意見がまとまらなかったそうである。

NATOの軍人たちの間には「アメリカがインド太平洋にシフトする」という見方をする人がいて「この際、軍備を増強すべきだ」とする意見がある。今回のトレンドを自分たちの利益のために利用しているのかもしれない。結果的に日本でも防衛産業株が物色されたそうだ。ヨーロッパはトランプ関税の影響で経済状況が悪化することが予想されているがさらに軍事費が重くのしかかる結果になるのかもしれない。

今回一連の記事を書いてみて驚いたのがトランプ大統領にシンパシーを持っている人達が意外と多いという点だ。メディアの記事を読んでまとめるだけでは不十分であることがわかる。

Quoraのフォロワーは8,700人程度になっているので「世論全体」とは言えないまでもいろいろな声が集まってくる。そもそも男性の間に多様性推進に対するうっすらとした敵意があるのだろうとは思うが、なぜ彼らがトランプ氏にシンパシーを感じるのかはよくわからない。中には陰謀論を振りかざしてくる人もいるがそれなりに筋の通った文章を書いてくる人もいる。「決めきれない日本の政治家」へのアンチテーゼとしてトランプ氏に対する人気が高まっているのかもしれない。

だがやはり報道を見ていると「トランプ氏になにか考えがあるのでは」という希望的観測には無理があるだろうと感じる。

トランプ大統領を支えているのは統一政府理論という1980年代に生まれた考え方だそうだ。民意によって選ばれた大統領が議会・司法・行政組織を凌駕するという理論で「アメリカ版専制主義・大統領独裁」と言えるだろう。現在司法闘争に発展していて最高裁判所まで持ち込まれる可能性があるが日本語では紹介記事が少ない。

The conservative theory’s advocates argue that Article II of the U.S. Constitution, which delineates presidential powers, gives the president sole authority over the federal government’s executive branch. It envisions robust powers even when Congress has sought to impose certain limits, such as restricting a president’s ability to fire the heads of some independent agencies.

‘Unitary executive’ theory may reach Supreme Court as Trump wields sweeping power(REUTERS)

この統一政府理論のもとで実に様々な動きが起きている。連邦政府の監察官が解雇されて「政府中枢がやりたい放題」できる体制が作られつつある。また立場や権限が曖昧なイーロン・マスク氏が納税情報や個人の銀行口座へのアクセスを行えるような準備が進んでいる。大統領の命令を受けた人が捜査当局にも司法にも依存せずに独自に「調査・処分」ができるという体制を作ろうとしているということになる。

この一環として核兵器を管理する人たちが解雇された。政府は慌てて彼らを呼び戻そうとしているのだが通信手段を削除してしまい回復ができなくなった。今のアメリカ合衆国は外交交渉どころか自国の核兵器さえまともに管理できていないのだ。

解雇に詳しい情報筋は、同局の人事部は解雇に関与しておらず、極めて異例な解雇措置だと語った。撤回の決定により、管理者らは解雇された職員の個人連絡先を特定し、職は安泰だと伝えなければならなかった。電子メールが遮断され、政府支給の携帯電話が停止されていたため、これは難題だった。

トランプ政権、解雇した核兵器関連人員の呼び戻しに奔走(CNN)

民意に従って決めてくれるトランプ大統領に肩入れする人たちの目線に立つならば「トランプ大統領はヨーロッパを目覚めさせる人たちと実際に交渉をする人たちを使い分けている=実はトランプさんには立派な考えがあるのだ」と信じてみたい気もする。一旦この説を素にして考えてみたが、少なくとも内政においては大混乱が起きている。記者たちは「解雇された連邦職員たち」からの情報をもとにした記事を盛んに書いているが、殆どが実名ではないのだから実際に何が起きているのかを確認することも難しいという状況で混乱だけがマシている。

27歳のレビット報道官はなんの役に立っていないばかりか状況をさらに混乱させている。WSJは「史上最年少のキャロライン・レビット報道官は、若さに見合わぬ熟練ぶりと上司の誇張を増幅させる才能を発揮」と皮肉を込めて伝えている。

結果的にルビオ国務長官チームは問題の沈静化を図っている。アメリカのガザ所有という別の宿題も抱えているため事を荒立てたくないのだろうが「すでに手遅れなのでは」という気もする。

ウクライナのゼレンスキー大統領はレアアースと引き換えにしたアメリカのコミットメントを求めてゆく考えのようだ。つまりアメリカの安全保障に値札をつけようとしている。ロシア側は選挙を要求している。親ロシアの大統領を選出し「民主的に」ウクライナをロシアに併合するか勢力圏に起きたいのだろう。ゼレンスキー大統領がこの提案に乗るとは思いにくい。

FOXニュースの報道によると、米国とロシアの和平計画にはウクライナでの新たな選挙実施が盛り込まれている。計画は停戦、ウクライナでの選挙、最終合意への調印という3段階に分かれていると、FOXのジャクリーヌ・ハインリヒ記者がXに投稿した。

米ロ、ウクライナ停戦巡り制裁解除も議論へ-首脳会談の日程決まらず(Bloomberg)

結果的に「すべての人が満足する提案」などないのだろうということがわかる。

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