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日本人は潜在的にリーダーになることを拒否している

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民進党って面白い政党だなと思った。チャンスをみすみす逃しているからだ。だが、民進党は実は「逃している」のではなく、政権奪取の機会をあえて避けているのかもしれないと思った。
南スーダンでは政権が崩壊して自衛隊を派遣できる前提がなくなった。国連は政権が失敗したことをあらかた認めているので、もし本当に民進党が去年の夏の目的を実現したいなら今は絶好の機会のはずである。あの法律は違憲状態を放置しかねない欠陥があることは今や明らかだ。
ところが蓮舫代表の記者会見の要約を読むと「政府の説明には納得行かない」というばかりである。国会で縷々追及するのだそうだ。これは戦略としては問題がある。民進党の姿勢では政府が作ったアジェンダを崩せない。「俺の説明は正しい」「いや正しくない」という議論が永遠に続くだけだろう。国会で問題になっているのは事実ではなく解釈なのでこれを崩すのは簡単で、世論にアクセスして、そもそもその認識はおかしいですよねといえばよいのだ。
日本政府は首都付近がどういう状態にあるかということだけを問題にしているわけだが「そもそも助ける政権そのものが崩壊しているわけだから、今その枠組みで議論しても意味ないですよね」と言えばよい。国際社会は失敗した政府をどう立て直すかということを議論しているのだから、南スーダン政府を助ける議論ではなく、国際的な話し合いの枠組みを作ることもできる。
なぜそうしないのだろうか、と思ったのだが、直接の答えは簡単で、国民の関心がそこにないからなのだろう。つまり票にならないと考えていることになる。だが、そもそもポリティカルリーダーの役割は世論の誘導にある。リードする人だからリーダーなのだ。
ちょっと変な例えなのだが、ファストファッションとデザイナーの違いのようなものである。ファストファッションは今ある流行をいち早く取り入れるところに価値があるのだが、デザイナーはある程度時代を牽引する。政治やファッションを議論という系に見立てると、外から新しい動きを加えないと、その系が止まってしまう。リーダーの役割は系を動かし続けることだ。経営学的に言えば「時計を動かす(ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則)」ということになる。
なぜ民進党がそれをしないのかを考えてみた。新しい価値観や世論にアクセスできないという可能性もあるのだが、Twitterでやり取りをしている議員も多く、これは考えにくい。
やや考えられるのは民進党が何かを言っても仲間内でいろいろな意見がでてまとめ切れないというものだ。民進党が何かでまとまったのは見たことがない。日本人は足を引っ張り合い強いリーダーが出るのを仲間内で防ぐ傾向がある。リーダーは空白でなければならないと考えるからだ。
さらに、蓮舫代表のもとにいろいろな意図のある情報が集まってきている可能性もあるだろう。リーダーになる準備がないとさまざまな情報が集まってもそれを自分の方針で処理できない。結局、これまでどおりの「他者を非難する」と言う路線をとらざるを得なくなってしまうのだ。
しかし、それだけではないかもしれない。実は民進党は「アジェンダを設定して世論を動かす」ことが怖くなっているのではないだろうか。言うまでもなく「埋蔵金があるから消費税を上げなくてもなんとかなる」と世論を騙した過去があり、それを本気で信じ込んでいた議員さんたちも多いのかもしれない。
となると、民進党はもうポリティカルリーダーとして復活することはないだろうなと思うのだが、案外フォロワーとしてふるまうことに居心地のよさを感じているのかもしれない。最近「消費税を増税しろ」と言っているが、よく聞くと「自分たちが上げるから政権を明け渡せ」といっているわけではなく、自民党が上げてくれれば有権者が怒って自民党にノーを言うだろうという見込みの元にそう主張しているようだ。
しかし、これは自民党にも言えることだ。今回安倍首相はトランプ大統領のご機嫌を伺いに言ったのだが、これも「世界のリーダーになんかなりたくない」という気持ちの表れだろう。その力強いメッセージとは裏腹に安倍首相はリーダーになりたくない(つまり責任を取りたくない)のだ。
誰もアジェンダを設定しないで、世界のリーダーたちが何かを決めてくれるのを待っている。だが、アメリカも成長に失敗し、ヨーロッパの多様化政策も行き詰まっている。すると新しい価値観を提示してくれる人は誰もいないということになる。そこに「もう緩やかに衰退してゆけばいいよ」などと言い出す人が現れ「時代は閉塞している」と嘆き始めるのだろう。
だが閉塞感を打ち破るのは簡単だ。目の前にある事実を見つめて何をすべきなのかを考えれてそこに行き着くために歩き出せばよいのである。


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