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かみ合わない議論が経営コンサルを殺す

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今朝労働規制について書いたので行きがかり上仕方がなく国会中継を見ていた。現在、田村智子さんという共産党の議員さんが塩崎厚生労働大臣とかみ合わない議論を繰り広げている最中だ。これを聞いていて「ああ、これは経営コンサルが死ぬなあ」と思った。
田村さんは裁量労働制が適応される人の例としてIBMの企業常駐SEや電通の高橋まつりさんを挙げている。一方、塩崎さんが例に挙げているのが「外のお客さんに経営指南をする」人だ。どちらも「コンサル」には違いがないわけだが、塩崎さんが念頭においているのはコンサルティングファームで高給を取っている経営コンサルなのだということがわかる。
田村さんを説得するのは無理そうだ。多分、自分たちに近い労働組合の事例を念頭において(IBMの労組が共産党系なのかもしれないなあと思った)しまっている。強い信念と思い込みがある上に「自分の方が現場を知っている」と考えているのだろう。こういう人は覆せない。
確かに塩崎さんは裁量労働制の導入意図について理解しているのだろう。外資系コンサルファームはたぶん高収益産業なのだが、日本の硬直的な給与制度のもとに優秀な人材を雇うことはできない。労働法制を変えればこうした産業が日本に入りやすくなるのかもしれない。
だが、実際にドメスティック系の経営コンサルと働いたことがある人なら、実際に彼らが何をしているか知っているだろう。彼らは経営者が納得するような絵を描くのが主なお仕事である。金曜日に出た経営者の気まぐれに基づいて月曜日の早朝までに資料を作るのである。こうした資料のことを「ポンチ絵」といっている。つまりマンガである。
外資系の企業は、経営コンサルが持っている「成功事例」に基づいて経営を変える。経営者の権限がしっかりしており改革が断行できるからだ。だから外資系の経営コンサルは「自分の時間割」で裁量的な労働ができる。しかし、日本人経営者は会議に会議を重ねる。あまり責任を取りたくないし、自分たちが今やっていることを変えたくないからである。それにあった資料を作るのが日本の経営コンサルだ。つまりベクトルが異なっている。
このベクトルの違いはIT産業で働いている人ならよく知っているだろう。外資の会社はシステムに合わせて業務を変えるのでシステム改変が簡単に済むが、日本は業務にあわせてシステム開発をしている。だからSEが過労死するまで働き、客先も成功事例も導入できない。みずほ銀行のようにいつまでたってもシステムが完成しない企業すらある。同じようなことが経営コンサル業界でも起きている。まじめな彼らは徹夜してでも資料を作るのだが、経営者が理解できるかどうかわからない。
つまり、労働法制の問題は実は法整備の問題なのではなく、日本の労働慣行の問題だということになる。つまり、外資系コンサルやITベンダーがこのようにリスクの高い国にエース級の人材を投入するとは思えない。にもかかわらずアメリカ型の労働法制を適応してしまうと、死者が増える可能性すらある。
結局誰も優秀で根性のある労働者を助けてくれないのだ。この文章は30分ほどで書いたのだが、田村さんは「労働者のために」熱弁を振るい続けていいる。とても熱心で情熱的なのだが、この情熱は空回りしているようだ。とはいえ政府側が正しいということを意味しない。結局、犠牲になるのはまじめで優秀な人たちなのである。


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