岩屋毅外務大臣がトランプ大統領の就任式に出席する。これまで「500ドットコム問題で捜査対象になっているからアメリカに入国できない」などと言われてきたが「ネットの噂も当てにならないなあ」と感じた。
しかしながら日本側の記事を読むとわざわざ「先方から招待があった」などと強調しているものもあり不自然さを感じる。
岩屋毅外務大臣には日本に進出を目論んでいた500ドットコム(当時)から「賄賂をもらったのではないか」という疑惑がある。現在アメリカ司法省で調査が進んでいるとされ岩屋氏も調査対象になっているという噂がある。このため「岩屋氏はアメリカ合衆国に入国できない外務大臣なのではないか」という話があった。
ところが今回「わざわざトランプ次期政権が外務大臣を招待した」としてニュースになっている。一体あの噂はなんだったのだろう?と感じた。ただ読売新聞のタイトルには不自然なものも感じる。なぜわざわざ招待状の件をタイトルに持ってきたのだろうか。
いつも大本営の匂いのする読売新聞とNHKを読むと日本側に焦りがあることがわかる。どうしても安倍政権当時と比べてしまうのだろう。安倍氏はいち早くトランプ氏の就任祝いに駆けつけたが石破氏は日米首脳会談のセッティングさえできていない。これが日米同盟推進・現状維持の人たちには不安なのではないか。
このところトランプ次期大統領の「領土的野心」について様々な論評が行われている。中国やロシアの「領土的野心」には検証なしに飛びつく人たちがトランプ次期大統領に同じような指摘をすることはない。これは日本のアメリカに対する依存心の裏返しだろう。認知的な不協和にともなう不安がありそれを解消したい。
日米同盟推進・現状維持の人たちは石破政権の動向にも焦りを見せているかもしれない。石破総理が東南アジア歴訪から戻ってくると今度は森山・西田両幹事長が中国共産党との対話に出かけてしまう。これはあからさまな中国シフトに見える。
「このままでは日本が中国寄りになってしまう」と警戒する識者は多くないかもしれないが「それがアメリカにどう見られるか」は気にするかもしれない。
日本ではバイデン大統領のUSスチール買収阻止で「日本も所詮は準同盟国だった」と言う評価が広がる。トランプ次期大統領の領土的野心の話も「日本にも高関税と軍事費拡大の要求が来るのではないか」という恐れとともに語られている。
中林美恵子氏と海野素央氏の漫才のようなアメリカ政治トークが興味深いTBSの「ひるおび」でも宣伝戦が繰り広げられている。どちらかというと民主党よりの海野氏が盛んに「トランプ大統領は自身のヘリテージ創出のために本気の領土的野心を持っていますよね」とキラキラした目で恵俊彰氏を煽り立てる。すると上院予算委員会の共和党サイドでスタッフとして関わってきた経歴を持つ中林氏が「そんなことは本当に起こるはずはないし、トランプ氏もそれはわかっているだろう」と火消しをしていた。あくまでも海野氏のキャラで「コメディータッチ」にみえるのだが実際には丁々発止のやり取りが行われている。
実は中林氏は「日本もファイブアイへの参加を打診すべきだ」などと「ポロッと」本音を覗かせることがある。彼女の発言で注目すべきなのは文脈外の発言だ。聞かれてもいないことを話すことがあり、旧来の共和党側の焦りのようなものが透けて見える。日本が高い熱意を持って日米同盟維持に傾いてくれなければトランプ氏の気持ちが日本から離れてしまうという気持ちがあるのではないか。
中林氏の解説によると「領土的野心」はアメリカの高官のブリーフィングによるものということになっている。高官たちはプログラムの継続を願い「中国の脅威が増している」とトランプ氏を説得する。おそらく彼らは予算の継続を願っていて中国の野心を利用している。ところがトランプ氏のビジネス思考は「だったら脅威のある北極圏とパナマをアメリカが直接抑えればいいじゃないか」と考えてしまう。
予算獲得を狙い「狡猾な根回し」に終止する高官たちの計算を越えた大統領によって予算の適正化が図られるかもしれない。トランプ次期大統領をこのように肯定的に評価することはできる。
しかしながら「高官が最後に何を言ったか」「どんな印象を残したか」によってトランプ氏が予想外の行動を起こすということを意味している。トランプ氏はメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きい危険物のような大統領だ。
例えばこんなシナリオ考えられる。
トランプ次期大統領の同盟を軽視する姿勢に対して「トランプ氏のせいで日本が中国になびいている」という評価が出る。普通の大統領であれば「だったらアメリカは日本を大切にすべきだ」と意見を修正するだろうが、トランプ氏は逆に「だったら日本を脅かしてやれ」と考えてしまうかもしれない。彼がどう考えるかは「その日のお天気」に左右されて二転三転する。
石破政権が日米同盟にどの程度のまとまった考えを持っているかはわからない。旧来の共和党と人脈を持っていると見られる長島昭久氏は「いやそんなことはない(NO WAY!)」と強く否定しているが、彼の心配を石破政権がどの程度理解してくれているのかはよくわからない。おそらく内向きな内閣では「アメリカ専門家」は周囲から理解されないだろう。日本の伝統的な企業で「英語屋」が置かれている孤立そのものだ。
日米同盟に対する依存心と「その時の空気に流されやすい」国民性を持つ日本人に対して日米同盟維持派の人たちの心は穏やかではないのだろうと感じる。
実際にはこれに加えて「トランプ次期大統領が力による現状変更にどんな対応をするのか」に注目が集まる。おそらく中国は南シナ海で挑発的な動きを継続するだろうがアメリカが反応しないことに一種の意味を見出すかもしれない。中国もロシアもチェスや将棋のように慎重にコマを動かしているが「勝てる」と考えたときの動きは早いのではないか。ロシアのウクライナ侵攻などを見るとどうもそんな気がしてならない。