8,600人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

中居正広氏がテレビから消える ワイドショーとニュースの不適切な関係

Xで投稿をシェア

2024年はテレビの政治報道について考えさせられることが多かった。テレビは明らかに政治報道を商品を売るための道具として利用している。これが政治報道に曖昧さをもたらし「SNSのほうが信頼できる」と考える人を増やしている。しかしSNSの情報も曖昧なものであり結果的に国民に知る権利が阻害される。

このテレビとワイドショーの不適切な関係がよく分かる事件が現在進行中だ。中居正広氏がテレビから消えかけている。

一見すると単なる芸能ニュースに思えるかもしれないが、中居正広氏は時事報道にも進出していたため、テレビ局やテレビ業界全体の信頼性が破壊される事態になりかねない。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






日本テレビの「仰天ニュース」から中居正広氏が消えたそうだ。しかしワイドショーは一貫してこの問題を扱っておらず、番組中にも説明はなかったという。いなったことになってしまった。そもそもこの仰天ニュースは時事報道を扱っており「報道的な」側面がある。

これを見て「なぜワイドショーはこれを扱わないのだ!」と感じた。ではそもそもなぜそう感じてしまうのか。そしてそれは正当な主張なのか。

テレビは「ワイドショー」とか「報道情報番組」という体裁で政治・芸能ニュースを扱ってきた。テレビが商品を売るためには視聴者を気持ちよくさせなければならない。そのためには「正道から逸脱した何か」を敵と設定して、それを大多数の立場から叩くのが手っ取り早い。TBSが日曜日にやっている「アッコにおまかせ!」などを代表例として挙げることができる。

そのため「テレビは正しい道を外れた中居正広氏も叩くべきではないか!」「叩かないとすれば裏になにかあるのではないか!」という感情が生まれるのだ。

ただ冷静に考えてみると中居正広氏が何らかの事件によって商品価値を失いつつあるだけの事件ともいえる。あくまでも楽屋裏の話なのだから、勝手に楽屋裏で解決するのが適切な扱いなのかもしれない。

仰天ニュースは4時間の長時間特番で「尺を埋める関係から過去のニュースが蒸し返された」という指摘もあったそうだ。情報バラエティとして「誰かを叩いて気持ちよくなる」番組の司会者が「叩かれる側に回った」という居心地の悪い構造もあったことになる。

国民は主権者意識を持たず下を見て生活していればいいのだという「長年のしつけ」は正しく視聴者に理解されている。今回の中居正広氏の件ではフジテレビの加害性が指摘されている。これまで「下を見て叩いていればいいのだ」と考える人達はフジテレビを攻撃することになるだろう。

今回、週刊誌はこぞってフジテレビは有力タレントと深いつながりを持っていた人が出世できる体制になっていたと主張している。文春オンラインは被害女性とされるX子さんに取材をしているそうだ。文春はこの事件をX子さんと中居正広さんの個人的なケースとは見ていない。FRIDAYもフジテレビに上納体質があったのではないかという組み立てにしている。

その後、X子と中居の間で今回のトラブルが発生。あまりにも“デキすぎた”ストーリーに、ネット上ではフジ内部の“上納システム”の存在を指摘する声が飛んでいる。

顧問弁護士が同席も…中居正広「9000万円トラブル」で2月フジテレビ「社長定例会見」は大荒れ必至(FRIDAY)

これまでテレビは大衆の立場から「間違ったものを叩く」側のメディアと認知されていた。SNSのような双方向性のメディアがなかった時代には週刊誌の報道がテレビと同じような重みで語られることはなかったためだ。しかしながら、ワイドショーの視聴者に対する「しつけ」はゆきわたり、今度はテレビの側が「監視され叩かれる対象」になっている。

中居正広氏がテレビ番組から説明なしに消えても多くの視聴者はそれを察している。このことからもテレビを巡る環境の変化が伺える。

実は「報道倫理」は報道主体をも守るということがよく分かる。

彼らが各番組に責任編集性を敷きそれなりのコードを守っていればこんなことにはならなかっただろう。しかしながら現実には報道・芸能・CMの間には仕切りがない。このために管理を間違えるとすぐにテレビ局全体の問題に発展してしまうのだ。

この問題を「報道的に」扱うならば、日本のテレビが持つ構造的な曖昧さを分析したうえで、何らかのガイドラインを作る必要があると言えるだろう。だがこうした分析と総括は日本人が最も苦手とする分野である。ジャニーズ問題のようにBBCが介入すれば別だが、おそらく日本のテレビはこの問題を総括できないだろう。

結果的に報道機関としてのテレビの信頼と広告媒体としての価値は不可逆的に失われ、無責任なSNSの報道が跋扈することになる。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで