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過去最大額予算案閣議決定・石破総理は「解散もあり」と牽制

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石破政権が過去最大額の予算案を閣議決定した。これまでは閣議決定がそのまま予算として通っていたが今回は少数与党状態のために紆余曲折が予想される。石破総理は解散を仄めかし牽制したがこれは却って野党を刺激する可能性がある。

また票を買うために導入した子育て支援策は思わぬ形で医療行政にしわ寄せを与えつつある。

今回の学びは「色々問題はあるが政府の偉い人が最終的にはなんとかしてくれるだろう」という期待はしょせん幻想に過ぎなかったと言う点にある。やはりだめなものはだめなのだ。

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石破政権の予算案は過去最大規模となった。しかしながら国債などの依存は減っている。税収が過去最高だったのだ。最初の問題はこの部分にある。税収が過去最高ということは経済が順調だということになる。

足元では物価高が進んでおり金利も徐々に上昇しつつある。いわゆるコストプッシュ型のインフレが進んでいる状態にある。しかしながら「経済成長もない」ので「景気後退局面」もない。だからスタグフレーションとも言えない。

結果的に国民経済が順調だと喜んでいる人は多くない。だから自民党・公明党は少数与党に転落した。経済成長が国民に恩恵を与えない問題は国会で政治的アジェンダに乗っていない。

様々な問題があるがいちいち挙げていてはきりがないので「医療・介護」について触れたい。

岸田政権は子育て世代の歓心を買うために子育て支援の充実を決めた。ところがこれは現役世代の負担増につながることになる。国民から非難されることを恐れた石破政権は「薬価・医療・介護の歳出改革」で負担軽減を図ることにした。時事通信が「子育て支援拡充へ歳出改革 保険料軽減で負担「実質ゼロ」へ―予算」という記事を出している。

この記事だけを見ると良かったと思う人がいるかも知れない。しかしながら先日「お薬不足」について調べたときにジェネリック医薬品の利幅が低いために撤退する企業があるという記事を見つけた。

これとは別に地方の医師不足が深刻化している。地方の医師の勤務は過酷で報酬もあまりよくない。このためじわじわと美容医療に転向する人が増えている。

厚生労働省は地方が地盤の政治家から「なんとかしろ」と言われたのだろう。NHKが「「医師の偏在」対策で新パッケージを策定 厚労省」という記事を出している。地方選出の政治家が成果を強調できるようなパッケージを用意した。しかし朝日新聞は「決め手欠く医師偏在対策 規制は憲法の壁、厚労省「ギリギリの表現」」という記事を出している。要するに「市場主義の日本では職業選択の自由を奪えませんよね、あんたたち憲法は読みましたか?」と言っているわけだ。

要約すると次のとおりになる。

野党が「子育て世代への支援拡大」を謳っている。一方で岸田政権の最初の政策は防衛増税だった。対立構造ができることを恐れた岸田政権は場当たり的に子育て世代への支援拡大を提唱するが実際には健康保険料に新しい財源を埋め込むトラップが内蔵されていた。有権者にこれを見抜かれてしまい大騒ぎとなり岸田政権は支持を失う。結果的に石破総理になり選挙が行われたが少数与党状態に転落した。ますます負担拡大は言い出しにくくなったので「支出改革」を行うことにしたが、すでに医療行政(医療・介護・薬価)に歪みが出ており実際の弊害も出ている。

これまで政治について観察しながらも「とはいえ、頭のいい人たちなのだから最終的に何とかするだろう」と思っていたのだが、これまでの経緯を見る限り「なんともならないものはやはりなんともならないのだ」という当たり前の結論が得られる。だめなものはやっぱりだめなのだ。そしてそれはテトリスのように積み上がってゆき、最終的には「詰んだ」状態になる。

ただ混乱はそれだけに終わらないように思える。現在野党は2つに別れている。立憲民主党は「与党への反対姿勢を貫いている」がやはりプロレス的なところがある。彼らが大騒ぎできるのは「とはいえギリギリになれば維新と国民民主党が自民党・公明党に付くだろう」と侮っているからだ。

しかし維新と国民民主党は過去の党代表と同代表代行の確執から囚人のジレンマに陥っている。結果的に全部の野党が行き詰まり「降りて」しまうと内閣不信任案が成立することになる。このときに野党を調整する人はいない。野党は群衆化している。

ところが総理大臣になる心の準備が出来ないままに今の地位についた石破茂総理は「腹芸」が苦手だ。人脈も乏しいために野党と交渉してやろうという側近もいない。挙句の果てに予算案が成立しなければ議会を解散してやるぞ!と恫喝した。そもそもまだ協力関係が破綻していないうちから「なんでこんな事を言ってしまうのかなあ」という気はするがそれが石破さんの「持ち味」なのだろう。

現在の国会には与野党を超えて人脈を持つ人徳のある長老格がいないためチキンレースがそのまま議会解散につながりかねない。

当然3月末日で予算が成立しないままで議会が解散されれば「暫定予算も作られないままの政治空白」が生まれる可能性がある。予算が会期中に成立しないことはこれまでもあったが(一時期は常態化していた)暫定予算もなかった期間は極めて限られていた。対立があってもどこか「阿吽の呼吸」のようなものがあったからだ。

今までの常識では「まあそうは言っても最終的になんとかなるんだろう」と思えた。どうもその常識は通用しなくなっているように思える。

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