Quoraでは丹念にコメントを聴取しながら情報発信をしようと思っている。そんな中で面白いコメントを貰った。178万円問題は学生問題であるから自分には関係がないというのだ。なるほどここからフォローしなければならないのだと感じた。
日本の有権者は自分から意思表明をすることがないため勘違いが起きてもそれに対する補足も加えられない。結果的に社会制度が変わらず成長できなくなり国民は漠然とした将来不安を募らせることになる。
コメントは「178万円自体はそんなに注目していない(そもそも私就職してますし…)」と言っている。おそらく学生と主婦の問題だと思っているのだろう。
確かに議論がわかりにくい。Yahooニュースでは「103万円の壁、178万円に引き上げ 恩恵を受けるのは誰? #専門家のまとめ」という記事を出している。所得税・住民税の問題なので「就職している人」に大いに関係がある話になるはずだった。
しかしながら議論が複雑な上に遅々として進まないという事情がある。毎日忙しくしているのに結局何も変わらないかもしれない政治ニュースを読み込んでなどいられないだろう。「決まってから教えて欲しい」と思うはずだ。
実際に与党税制大綱は勤労者にはあまり関係がない「しょぼい」内容になりそうだ。玉木雄一郎氏は190万円以上の給与所得者には関係がない話としており、結果だけを見ると「自分たち(すでに就職している「私」)には関係のない話」になってしまった。そもそも玉木氏が書いていることを理解するためには税金の仕組みを理解したうえで情報を整理する必要がある。なんかしょぼい話で終わるのだなと言うことはわかるが内容まで読み込もうという気にまではならない。結果的に「なんだもういいや」と感じてしまう。
有権者に「アクター」としての自覚がないためにそもそも政党に働きかけをしようという気持ちにならない。このため政党の主張を読み込もうという動機も乏しのだろう。一部熱心に政党の主張を読み込んでいる人もいるが、大抵の人たちは「よく知りませんけど」「私の印象では」という漠然とした感想しか持たないようだ。
能動的な動機を持たない有権者が要望を伝えないこともあり政党は国民の期待に応えることができなくなっている。
内閣府が国民生活に関する世論調査を発表した。時事通信が「不安感じる」過去最多の78% 生活程度「中の下」高水準―内閣府調査としてまとめている。
具体的に要望があるわけではないが今の社会が続くと「なんとなく不安だ」という人が増えている。自分は最下層だと考えているわけではないが「中流の中でも下の方」と考える人達も増えているそうだ。全体の分布は下記の通りで最も多いのは「中の中」になる。
- 「上」1.7%
- 「中の上」14.2%
- 「中の中」46.7%
- 「中の下」28.1%
- 「下」8.7%
2人に1名は「自分はちょうど真ん中らへん」と考えているが8割近くはなんとなく不安と考えている。とは言え政治に対して積極的に発言するわけではなくいつまでも「自分たちにふさわしい政党が降ってこない」と待っているという状態といえるだろう。政治ニュースもなんだかややこしい話が多いため「よくわからないけど見出しだけでも拾っておこう」と考えている。
積極的に社会に関与して社会制度を自分たちにふさわしいように変えてゆこうという考え方がないため結果的に漸次的(その都度その都度)な改革が進まない。
日銀によると「成長の芽」になるようなものは出ているそうだが、全体の社会制度と意識が変わらないために中立金利(成長)が1%に届くことは難しいのではないかという観測になっている。つまり自分たちに合わなくなった社会制度に無理やり体を合わせようとして徒労しているというのが今の日本人ということになるだろう。
結果的に日銀はいつまでも低金利政策をやめられなくなり円安が進んでいる。石破政権は地方の賃金が上がらないために地方から東京に労働者が流出すると考えているようだ。特に赤沢亮正経済再生相(鳥取県選出)が最低賃金に対する思い入れが強いという。しかし国民の意識が変わらず産業構造も変わらない中賃金だけをあげてしまうとコストプッシュ型の悪性インフレが地方に大きな被害をもたらす可能性が高い。
更に与党の税制大綱は2026年4月からの増税を決めた。所得税の課税強化も放棄しておらずその他の財源も積極的に探すとしている。つまり「しょぼい」減税のあとに本格的な増税が行われることになる。国民は不安をつのらせたままになるが、自民党を積極的に勝たせずに「伯仲状態」を作ることが合理的な選択肢となるため思い切った産業振興策も出しにくくなるだろう。
そもそも政治議論にあまり関心が持たれないために増税や地方の最低賃金の問題にまで関心を持つ人は少ないと思うのだが実は石破政権は都市に対する被害者意識が強い政権だ。格差を縮小するためには都市から税金を取って地方に分配すべきだと考えている。これが国民不安につながり思い切った政策決定の阻害要因になっている。
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