国民民主党と自民党のプロレス試合が不成立に終わりそうである。国民民主党は一方的に試合を打ち切り本予算に賛成できないかもしれないと仄めかしている。その背景いるのが宮澤洋一税調会長だ。プロレスが理解できていない。
この議論は国民民主党がやっていることはしょせんプロレスであるという前提に立っているため一部のプロレスファンと国民民主党のファンを怒らせる可能性がある。だがそういう人はもはやこのブログなど読んでいないのではないかという前提で話を進める。Quoraでは連日この筋で記事を書いているが、議論に残れる程度のリテラシーを持った人たちには概ね理解してもらえているようだ。一言コメントしか残せない人たちは複雑さについて行けず脱落しつつある。
国民民主党はたまたま訴えた手取りアップ提案がYouTubeでバズったことでここから抜けられなくなった。103万円の壁問題ではマスコミの注目を集め今や政党支持率は立憲民主党を上回っているという。国民の間に強い負担軽減の期待がある事がわかる。
しかし所詮プロレスはプロレスだ。プロレスは悪役の存在と綿密な阿吽の呼吸によって成り立つ芸術性の高い格闘興行である。時代劇で目立つのは主役だが実際の技量は斬られ役がになっている。同じようにプロレスでも悪役の鍛錬が重要だろう。つまり悪役である自民党が落とし所を提供したうえで国民民主党にご活躍のチャンスを与えてやらなければならないということになる。
なんでそこまでしてへつらう必要があるのかと考える人もいるだろう。理由は簡単だ。彼らは選挙で負けて少数与党状態にある。
しかし宮澤洋一税制調査会会長は状況が理解できていない。そもそもへつらいとは無縁の人生だった。
宮澤洋一税制会長の父親は宮澤弘氏という。自治官僚、参議院議員、法務大臣、広島県知事などを歴任しているそうだ。母親は旧姓岸田玲子さん。岸田文雄前総理の叔母にあたる。おじさんは宮澤喜一元総理大臣。宮澤喜一元総理が参議院に転出しその選挙区を引き継いだ。2009年に民主党政権ができるまでは選挙区を維持しその後参議院議員に転出している。名門の出身であり選挙にさほど苦労していないのではないか。
また自身も大蔵官僚出身で制調査会の会長に就任している。専門知識もあるために「売名」には無縁だったと言えるだろう。衆議院は少数与党状態だが参議院はそのような状態にない。2022年の選挙で6年の任期を得ているので次の選挙とも無縁だ。
つまり、プロレスに依存する必要はなく、今も必要性は感じていない。おそらクプロレス技量も磨いてこなかった。
一方の国民民主党は党勢拡大に苦労している政党だ。常に立憲民主党に飲み込まれる危険がある。また前原誠司氏が出ていったこともあり玉木雄一郎個人商店としてまとまらざるを得なかった。つまりこちらはプロレスに依存して生き残るしかない。
田崎史郎さんが説明する経緯は次のとおりだ。
本来なら国民民主党に「ご活躍」の場所を与えるためにまずは低めの数字を出して123万円を勝ち取っていただく必要があった。だが正直な宮澤さんは最初から123万円を出してしまった。田崎史郎氏が指摘するように周囲にいる人達も「これはプロレスなのだ」とわかっていたのだろう。
田崎氏は、与党として123万円を提案した宮沢氏の反応について「よくよく考えても、この人は本当に政治オンチと思った」と指摘。「123万というのはもともと財務省が考えていた数字。財務省と打ち合わせの上で言った」と独自情報を明かし「それ(123万円)で決着するならいいが、国民から一蹴され、それ以上を出さないといけなくなった。もし『110万円くらい』と言って、それから123万円にしたら落ち着いたかもしれない。(早々に)本音の部分を出してしまったので、それ以上出さないといけなくなった。本当にヘタだ」と述べた。
田崎史郎氏が「誠意」発言で炎上の宮沢洋一税調会長を酷評「本当に政治オンチ」「もともとは…」(日刊スポーツ)
これがプロレスだと理解できない宮澤さんは「本当にあんたたちが欲しいのはどのあたりなのか教えてくれないか?」と聞いてしまった。国民民主党は戦いを見せたいだけで「本当にほしいレンジ」などあろうはずもない。
結果的に振り上げたこぶしを下ろせなくなり「本予算には協力できないかもしれない」と言っている。だが実際には国民民主党は協議から降りられない。自民・公明・維新の間で教育無償化の枠組みができている。予算から降りてしまうと今度は国民民主党が蚊帳の外に置かれてしまう可能性がある。
なおグリーンとはゴルフ用語で「大体ゴールがある辺り」を意味するそうだ。
ではなぜ国民民主党は降りられない試合で「プロレス不成立」という困った状況に置かれたのか。
彼らは実は財源が示せないという根本的な問題を抱えている。もう少しその不都合な事実を隠すのだろうか?と思ったのだが玉木氏は意外と正直にそれを告白してしまっている。玉木雄一郎氏の憎めない人柄が滲む。
前段で「財源の問題ではなく生存権の問題だ」と言っているのだが、おそらくそれでは本意が伝わらないだろうと考えたのだろう。財源を自民党で整理したうえで俺達がかっこよく活躍できる舞台を作るべきだとあけすけにねだっている。ただ来年から実施せよとも言っている。つまりこの数日で予算を全部組み直して自分たちをもっと活躍させろと要求しているのである。
いわゆる財源論の問題にあえて触れるとすれば、国の歳出・歳入をもう一度徹底的に見直すことを政府・与党には求めたいと思います。一昨年度、昨年度の2年の平均値で言うと、予算には計上したものの結局は使わずに残した予算が2年間の平均で年9.1兆円あります。逆に、税収は平均で年4.2兆円上振れして(想定より多く入ってきて)います。
現役世代が選挙に参入したことで「熟議国会」が作られたと言われる。しかし全体のパイが広がらないのだから「どこかに分配するためには誰か別の人を怒らせなければならない」に過ぎない。だからこそみんなが満足するような「プロレス技量」を磨く必要があるということになる。自民党の人たちはそもそも国会がプロレス化したことに気がついていないが、プロレスを望む人たちもまだまだ力不足ということになる。
ただ「今後双方ともにプロレス技を研鑽すべきだ」という結論にはしたくない。結局、それは形を変えた大政翼賛状態に過ぎないからだ。また、政治家がプロレスに徹すると国会議員はすべて立花孝志さんのようになってしまうと予想できる。
ただ国会がプロレスから抜けるためには全体のパイを広げる方法をみんなで協力して考える必要がある。つまり日本人が苦手な協力が必要になる。
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