8,600人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

銀行に利子がつかない札束を隠す高齢者 三菱UFJの貸金庫問題

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

長い間「なぜ逮捕されないのだろう」「どうしてテレビに取り上げられないのだろう」とされてきた三菱UFJの貸金庫問題がようやくメディアに乗った。ただ「なぜテレビで取り上げられないのだろう」以外にもかなり謎の多い事件である。

今回、三菱UFJ銀行のニュースが話題になったのは金融庁が命令を出したからのようだ。それに合わせて会見がセッティングされたことから顧客対応ではなく金融庁に「ちゃんとやってますよ」と示す狙いがあったものと考えられる。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






テレビのワイドショーがこの問題を取り上げないのは三菱UFJ銀行が大口のCMスポンサーだからだろう。ビッグモーター事件のときにも見られたおなじみの構図だが、もはやこれはニュースにはならない。

今回の事件ではそもそも被害金額がよくわかっていない。1人あたりの被害額が大きいことも特徴。盗まれたのは主に現金だという。

銀行の発表では被害にあった人はおよそ60人、被害の額は時価にして10数億円にのぼるとしていて、銀行は11月14日に管理職の行員を懲戒解雇にしています。

三菱UFJ銀行 貸金庫の金品盗難 金融庁が報告徴求命令へ(NHK)

そもそも預金通帳に入れておけば記録がついたはずなので「いくら預けているか」は明確だったはず。さらに金庫の中に現金を預けても利子はつかない。

さすがに「これはなんだか怪しい」と指摘する記事は出ている。「記録がつかないのに」ではなく「記録がつかないから」貸金庫に預けていたと考えたほうが良さそうだ。

この到底合理的とは言えない行動から浮かび上がるのは、「表に出せない金」ではなかったのかという疑念だ。そのためか、多額の現金が窃取されたにもかかわらず、被害届があまり出ていないという。

三菱UFJ銀行「貸金庫事件」が開けたパンドラの箱(東洋経済)

「申告できないカネ」だからこそ盗まれてもわからなかった。このニュースがでたあとで「自分も被害を受けたかもしれない」という人たちが名乗り出ているようだがおそらく全体像はよくわからないままだろう。そもそもいくら入れていたか管理していない人もいそうだ。毎月預金残高を睨みつつ安いスーパーをハシゴして生活している人に想像がつかないお金持ちの世界がある。

新たに数十人の顧客から被害に遭った可能性があるとの申し出があり、同行は確認を進めている。

新たに数十人の顧客から被害に遭った可能性があるとの申し出があり、同行は確認を進めている。(読売新聞)

もう一つわかったことがある。銀行の雇用の歪さである。

銀行は出世競争が苛烈なことで知られるが、その参加者はほとんどが男性である。しかし実際の顧客接点は女性に大きく依存している。三菱UFJ銀行がそうであると断言するつもりはないが非正規雇用に依存している所も多いのではないか。

すると結果的に「出世は望めないが複雑な業務を担当する女性の取りまとめ役」が必要になる。三菱UFJでは不正チェックまで子会社化していたそうだ。子会社は賃金体系を個別で決められる。つまり本体より安い人を雇うことができる。

銀行収益が先細る中で幹部職員たちの高い給与水準を守るために子会社・非正規依存が進んでおり、その接点として女性行員がいるという構図になっている。幹部職員たちは「現場は回って当然だ」と考えていて現場にほとんど関心を寄せなかった。この退職した元行員は「支店長代理」も務めていた。

三菱UFJ銀行の元女性行員が支店の貸金庫から巨額の金品を盗んだことを受け、同行の半沢淳一頭取が16日開いた記者会見では、不正防止のためのチェックを子会社任せにするなど、顧客資産のずさんな管理体制が明らかになった。

新たに数十人の顧客から被害に遭った可能性があるとの申し出があり、同行は確認を進めている。(読売新聞)

こうした構造は社会に定着してしまっているため、特に違和感を持つ媒体はなかったようだ。文春は「女優で言えば誰それさんに似ている」とどうでもいい報道をしている。おそらくこちらのほうが文春の読者にはウケるということなのだろう。

「当該行員は、女性です。既婚者ですが、子供はいない。ショートカットで目が大きくて可愛らしい雰囲気。事案発覚時には玉川支店に勤務しており、窓口業務や貸金庫管理の責任者を務めていました。女優でいえば……」

「ショートでかわいらしい雰囲気の女性」“被害総額10数億”三菱UFJ貸金庫から客の資産を盗んだ元行員の“正体”「女優でいえば…」(文春オンライン)

リテール(一般客向け)業務が収益を挙げられなくなっているためにサービスの質を犠牲にして子会社化・非正規化を進めた結果(おそらく)申告できないお金をたくさん抱えた顧客は銀行を「警備費用が安い貸金庫」としかみなさなくなった。

それに目をつけた現場の取りまとめ担当の女性が金庫からお金を抜いてしまう。しかしながら、監視が手薄だったこともありその犯罪が露見することはなく行為がエスカレートしいくら盗まれたのかわからないというところまで話が大きくなってしまったということになる。

金利なきアベノミクスはここまで日本の金融機関をボロボロにしてしまったのかと思うといたたまれない気持ちになる。日本の高度経済成長は一般の人が集めたお金をコツコツとインフラ整備に回すことで実現している。政治の無策も加わり日本の銀行はその初心を忘れてしまったようである。

なおこの元銀行員は「貸金庫のカネ」を投資に回していたそうだ。貸金庫では利子がつかず、預金しても大した金利にはならない。だがこれを海外で投資すれば4%程度の金利(これは今のアメリカの国債金利だ)は余裕で付く。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です