8,600人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

イギリス政界の「サンドウィッチ」論争

Xで投稿をシェア

連日「選挙が盗まれた」とかいや絶対に認めないぞというニュースばかりを扱っている。さすがに殺伐としすぎていて息が詰まる。そんななか時事通信で実にくだらないニュースを見つけた。「サンドウィッチを巡りイギリスの首相と野党党首が論争を繰り広げている」というのだ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






BBCに詳しい記事があったが特に新しい情報があるわけではない。ベーデノック保守党代表が「ランチでサンドウィッチを食べない」と発言し与党からからからかわれたというだけの話である。

ベーデノック氏は保守党内右派。ナイジェリア系の移民の娘であり「伝統的なイギリス人らしくない」という不思議な保守党党首である。ランチにサンドウィッチを食べないとインタビューで主張して「問題発言だ」と揶揄された。サンドウィッチはイギリスの伝統的な昼食だが、彼女に言わせれば湿ったパンでありあまり美味しくないそうだ。

ベーデノック氏は「サンドウィッチ以外にも話し合わなければならない大切なことはいくらでもある」と反発し付け加えて「そもそもランチを外に食べに行く時間もなく働いている」そうで執務中に食事を運ばせることもあるという。そのときにステーキを食べることもあるそうだ。

このベーデノック氏の発言を聞いていると「パワーランチ」と呼ばれるアメリカ風の考え方に影響を受けているのだろうという気がする。日本では料亭政治を「飲み食い政治」といて否定的に扱うことがあるがアメリカではビジネス会合をランチ時間に行うことがある。夜は社交と家族のための時間とみなされるためランチ会合が重要視される。こうしたパワーランチではビールが出ることもあるが、ガッツリとした肉を食べるというのもいかにもアメリカ風である。

一方のイギリスではサンドウィッチのような質素さとガツガツしない余裕が重んじられてきたのだろう。余裕なく働くのは格好が良くない。

ただしこの一連のやり取りにはどこか余裕も感じられる。

例えば日本では橋下徹氏が馬場前代表を攻撃するときに「自民党の飲み食い政治に飲み込まれた」などと言っていた。無理矢理に争点を作ろうとしているうえにどことなく余裕の無さを感じさせる。

またアメリカ合衆国では「何がアメリカらしいのか」は文化戦争とも言われておりもはや洒落では済まされないレベルになっている。おそらくアメリカ合衆国で「何がアメリカらしいか」の議論が始まってしまうとこの程度では済まされないだろう。

イギリスも政治的には苦しい状況が続く。移民が流入し「何がイギリスらしいのか」という価値が揺れている上に、EU離脱を通じて「自分たちはヨーロッパの一部である」というアイデンティティにもゆらぎが見える。

しかし、まだまだサンドウィッチ論争のように余裕のある「政治論争」もあるということだ。世界で最も古い議会制民主主義国でありかつては革命を通じて殺す・殺されるといった議論もあった国だが、さすがにそんなことを繰り返していても疲れてしまうだけだ。

ルーマニアでは「ロシアの影響があった」として大統領選挙がやり直しになる。ジョージアでは新しい大統領が選出されたが「そもそも総選挙がロシアに盗まれた」と主張する現大統領が居座りを宣言している。フランスでは改革政党・右派・極右・左派がまとまらず首相が4回も変わった。韓国の大統領は陰謀論を信じ込み国民に銃口を向けた。アメリカ合衆国では陰謀論を背景にした大統領が誕生している。

こうした殺伐とした状況を背景にするとサンドウィッチ論争もどこか微笑ましく感じられてしまう。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です