自民党、公明党、国民民主党の間で減税についての駆け引きが続いている。これまで自民党は世間から1cm浮いたところで税制議論をしてきたがこれが成り立たなくなった。
一方で立憲民主党に埋没危機を持っている国民民主党は「今すぐ選挙に使える」実績がほしい。本来ならば減税を通して国民の成長意欲を喚起すべきタイミングだが結果的に重箱の隅をつつくような「丁寧な」議論が続いている。
有権者が丁寧な説明に意味を感じなくなり政治をネタとして消費するのも当然と言えるのかも知れない。両陣営ともに最後まで粘ってみせたいのだろうが、単なる時間の無駄なので落とし所があるならさっさと決着すべきである。
不倫問題で「3マスやすむ」状態の玉木雄一郎氏だがSNSなどでは盛んに情報発信を続けている。報道ベースで減税開始時期が後ろ倒しになると聞きつけて抵抗していた。
結果はやはり報道どおりだった。ガソリン減税に関しては「準備期間が必要」として時期の後ろ倒しを提案し国民民主党との協議は物別れに終わっている。背景にあるの事情は重層的だ。
- 税制と財源論が複雑化していて自民党の議員たちでは手がつけられなくなっている。結果的に財務省の職人技に頼るしかない。
- 自民党も国会も掌握できなかった石破総理が意欲を失っており「石橋湛山政権は短命だったが成果を残した」などと自虐に走っている。
- これまで自民党税調は「インナー」と呼ばれる身内の議論しかしてこなかったために有権者の意識の変化にまるで気がついていないようだ。宮沢税調会長が発言するたびにそれを痛感させられる。
特に最後の宮沢税調会長は「まるで状況がわかっていない」と感じる。もともとそういうお顔立ちなのかも知れないがこちらが苛ついているのがわかっていてわざと意地悪をしているのではないかという気持ちになる。
しかし国民民主党の側にも責任はある。もともと103万円の壁問題はブラケットクリープ対策として着想された可能性が高いのだが178万円という高い目標を掲げてしまったためにあとに引けなくなってしまっている。自民党側は本来のインフレ対策に話を戻したい。
玉木雄一郎氏はゴールポストを巧みにずらすことで話をなんとか誤魔化すという手法が多い印象だが、178万円という数字だけは一人歩きしてしまっている。明確な数字だけに人々の記憶に残りやすかったのだろう。
とはいえ国民民主党の武器は補正予算案への反対しかない。仮に補正予算が成立しなければ支援に期待する人たちから恨まれることになるため、おそらく最終的には賛成するしかないだろう。
もう一つの問題が「マスタープランの不在」だ。官僚システムがしっかりしていたこともあり日本の政党は経済のマスタープランを持ていない。官僚に丸投げすればなんとかなってしまうからである。マスタープランがないので結果的に財務省に全て依存するしかない状況だ。本来なら政党助成金を使いシンクタンクを作りマスタープラン作りを進めるべきだった。しかし政党助成金は相手陣営からの票の引き剥がしに使われ(これを党勢拡大と言って憚らない政党もある)明日の種籾を確保してこなかった。
試算を丸投げした国民民主党も嘆かわしいが政府からでてきた根拠は紙ペラ2枚だったそうだ。そもそも説明する気がなく根拠となる資料もなく「なんか適当に作っといて」とオーダーされただけだったのかも知れない。
自民党税調は「政府もお金がないのだから地方税収の穴埋めなどできない」と言っている。