ちょっと不安に思っていることがある。
TPPと関連法案が可決された。アメリカでは批准されないことが確実なので、今後4年はTPPが実現することはないだろう。だが、TPP関連の予算は執行され続けるという。2年間で1兆1900億円に上るのだそうだ。ところが大手新聞各社はこのことを全く伝えず「TPPと関連法案が成立した」ということだけを淡々と伝えた。予算の執行継続について伝えているのはネットニュースとスポーツ新聞だけである。
予算が執行され続ける背景には政治に群がる人たちの堕落がある。オリンピックの時に嫌という程味わった(今も味わっている)のだが、彼らはお金が使える言い訳を探している。そして言い訳が見つかると後先考えずそこに群がるのだ。背景には「この機会をなくすると後がないのではないか」という不安と「今までいろいろやってみたが、もうダメだった」という絶望感があるのではないだろうか。
確かに、日本の消費者はかなり防衛的になっているばかりではなく「ゲーム化」が進行しているようだ。売り手が困っているということがわかっており、品物が無くならないということも知られている。だから捨値になるまで待っている。品物も情報も豊富にあるからこそ起こる現象である。そのために、雰囲気に飲み込むか、騙すかしないと儲けられないという構造になってしまったのだ。まともに商売しても無駄なのである。
TPPで関連予算がつくことはわかる。一応、成長戦略の一部だから、誰かは儲けるだろう。その儲けたお金を使って切り捨てられる人たちを救おうというのは決して悪いことではない。しかし、TPPで儲けるだろう人たちがきっちりと納税してくれるのか(儲けを海外に移して節税をすることが多い)という疑念がある上に、そもそもTPPが発行しなければ別のところから費用を調達してこなければならない。しかし、それをどうするのかという議論や調査はないし、それをやろうという気持ちすらない様だ。
ジャーナリズムは単なる政府の広報機関になっている。これは産経と読売だけではなく、朝日や毎日も含まれる。つまり、政府が言っていることが正しいのか間違っているかということを独自に検証ができない。そのために政府から出てきている情報を鵜呑みにしたり、識者という人たちを連れてきて何か意味のありそうなことを語らせるということしかできない。
最近では安倍首相と蓮舫代表の討論が問題になった。安倍首相は政府の統計のいいところをつまみ食いして「経済状況は改善している」と言い張っている。これを検証した記事が出たのはハフィントンポストだけだった。
背景には新聞社のブラック企業化がある。新聞記者は24時間働いて記事を集めることしかできない。そして、識者と呼ばれる人たちに調査費を出すこともできるない。識者たちは別のスポンサーを見つけざるをえないので、政府や企業といった人たちの宣伝になる様なことしか言えない。
ブラック企業化の背景にあるのはやはり経済的困窮だ。新聞は独占的なメディアだ。全国的な販売網を構築して維持する必要があるからである。しかし、その構造上、購読者数がある線を下回れば、その構造を維持することができなくなる。すると、権力にすがりついて広報機関となるか、逆に政府が言ったことを攻撃することの2つに1つしかできなくなってしまうのである。これがさらに新聞離れを引き起こしてしまう。
これがネットニュースに代替されるならよいのだが、それも難しそうだ。ネットメディアは剽窃がはびこっており、アメリカではフェイクニュースも話題になっている。つまり、もう真実ではなく信じたいことを信じようというわけだ。もちろんソーシャルで得られた知見を分析して新聞で報道するということもできなくはないが、お互いに罵り合うばかりで融合は進まない。
ジャーナリズムは民主主義の基盤の一つなのだが、これが崩れつつある。背景には経済的事情がありそうだ。