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バルニエ・フランス首相は玉砕覚悟で予算を強行採決

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バルニエ・フランス首相は自身の持つ憲法上の権利を行使し社会保障予算案を強行採決する。その代償として不信任決議可決が予想されており文字通り玉砕覚悟で突っ込むことになりそうだ。この混乱を受けてフランスの金融市場が混乱しユーロが売られる事態となっている。

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フランスのバルニエ首相が社会保障予算案の強行採決を決めた。国民に負担を追わせる内容で右派と左派から反発されている。

フランスには独特の規定があり内閣は議会の反対を押し切って予算を通すことができる。今回採決されるのは全体予算ではなく「社会保障予算」だそうだ。なぜバルエ内閣が自分たちの政権を投げ出してまで社会保障予算案を通そうとしているのかは不明である。

これより先、バルニエ首相は、憲法上の特別権限を行使し、2025年社会保障予算案を強行採択すると発表した。議会の採決なしに法案を成立させる憲法49条3項を発動する。バルニエ氏はぎりぎりまで譲歩の可能性を探ったが、野党の支持を得られなかった。

仏内閣不信任案、4日にも可決へ 予算案の強行採択受け(REUTERS)

ただし予算の強行採決には内閣不信任という対価が必要だ。今回は右派も左派も内閣不信任決議に賛成するものと見られている。両者は協力関係にないため左派が提出した不信任案に右派が便乗する形になる。なお、REUTERSは国民戦線(RN)を引き続き「極右」と表現している。

来年度予算案を巡りバルニエ仏政権と対立する極右政党、国民連合(RN)のバルデラ党首は2日、「土壇場で奇跡」が起きない限り、RNが数日中に内閣不信任案を支持する可能性が高いとRTLラジオに述べた。

仏極右、内閣不信任案支持の公算大 党首が表明(REUTERS)

「極右」のRNは社会保障削減ではなく「インフレを反映して年金を引き上げる」ことなどを求めており代わりにEU関連予算を削減すればいいではないかと主張しているそうだ。

バルニエ氏は先週、電力税増税を撤回したが、RNはインフレを反映した年金増額、薬剤費払い戻しの減額中止、欧州連合(EU)予算への拠出削減なども求めている。

仏極右、内閣不信任案支持の公算大 党首が表明(REUTERS)

フランスは独自通貨を持たないためユーロがドルに対して下落した。またフランス国債の金利はドイツ国債との差によって表現されており「上乗せ金利=フランスのリスクに対するプレミアム」が上昇したとBloombergは伝えている。

日本の総理大臣の恣意的な議会解散権は憲法を拡大解釈されたものと考えられている。最初の恣意的解散は議会との馴れ合いによって行われており「馴れ合い解散」という歴史的な表現が定着している。このため不信任決議案も馴れ合い化しており議会ごとの風物詩のような扱いだ。

フランスにはこのような馴れ合いはない。その都度民意を反映するために選挙を行うことになる。いっけん「なれ合いよりもガチの真剣勝負のほうが良いのではないか」と思えるが、当然選挙が行われたとしても現在の膠着状況が修正される保障はない。結果的に金融市場が動揺しフランス経済のみならずヨーロッパの経済全体に悪い影響を与えることとなりそうだ。

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