日米関係の再構築を提案し共和党から警戒されているとされる石破総理はトランプ大統領に会えなかった。だがこのときに虚偽の説明をしている「トランプ氏は大統領に就任するまでは外国の首脳とは会わない方針」と言われたというのである。
しかし、トランプ次期大統領は、アルゼンチンのミレイ大統領と私的に会っている。また、今回トルドー・カナダ首相をマールアラーゴに招いて会食をしていることがニュースになった。
最近はNHKでも平気で嘘を書くようになった。
石破総理大臣は、今回の南米訪問のあとにアメリカのトランプ次期大統領との会談を調整してきましたが、トランプ氏側から就任前に各国首脳との正式な会談は行わない方針を伝えられたことなどから、見送られることになりました。
石破首相とトランプ次期大統領との会談は見送られることに(NHK)
トルドー首相がフロリダ州にあるマール・アラーゴでトルドー首相と会談した。公式の予定には含まれていなかったそうだ。カナダは立憲君主制の国なのでトルドー首相は元首ではないが実質的にはトップの政治指導者であり石破総理と同格。
- Trump praises “very productive” Mar-a-Lago meeting with Trudeau(BBC)
- Trudeau visits Florida to meet Trump amid tariff threat(REUTERS)
- Canada’s Trudeau returns home after Trump meeting without assurances that tariffs are off the table(AP)
トランプ次期大統領が最初に会った外国首脳はアルゼンチンのミレイ大統領だとされているがこれはシンクタンクの集いだった。たまたま居合わせたのだろうと解釈することも可能である。だがトルドー首相はわざわざ会食目的でマール・アラーゴを訪れている。
このニュースはトランプ氏の交渉方針について知ることができる重要なものだ。
第一にトランプ次期大統領は安全保障・外交と経済をごっちゃにする傾向がある。第二にトランプ次期大統領は交渉のためにわざと高いハードルを課して相手を驚かせる。第三にトランプ氏の主張を面と向かって否定するのは極めて危険だ。
トランプ次期大統領は選挙キャンペーン中から関税について盛んに喧伝してきたが本気で高い関税を課すことはないものと見られてきた。財務長官候補が穏健な人であり「トランプ氏は基本的には自由貿易主義者」と説明したこともあり市場は落ち着きを取り戻していた。
マスコミは「関税を負担するのは消費者である」と経済的に正しい説明をしておりトランプ次期大統領が関税をかけた結果インフレが進行するとトランプ氏の時事に悪影響が出かねないという事情もある。
トランプ次期大統領はまずメキシコのシェインバウム大統領と電話会談した。ここでトランプ氏はメキシコが「国境政策での協力を約束した」と一方的に宣言してしまう。シェインバウム大統領は「そもそもそんな問題はない」と反論している。
今回のトルドー首相とシェインバウム大統領の扱いの差は明白だ。前者は英語・フランス語圏の政治指導者で男性だが、シェインバウム大統領はスペイン語圏の女性指導者だ。アメリカ人が持っている独特の差別意識を感じる。シェインバウム大統領も「女性でありメキシコ人である」という理由で格下に見られてはいけないという気分があるのだろう。
おそらく、非英語圏の政治指導者は侮られており「多少の嘘をついてもいい」ということになっている。安倍総理の在任時代にも「アベがトウモロコシを全部買ってくれると言った」と主張したことがあった。
安倍総理はこれを否定しなかった。表立って否定してしまうとトランプ氏が逆ギレすると知っていたからだろう。シェインバウム氏はこの「タブー」を破ってしまい結果的に感情的なしこりが残った。関税を使った貿易戦争は誰のトクにもならないがアメリカとメキシコの間では意地の張り合いによる貿易戦争が起きるかも知れない。
インディペンデント紙は有罪判決を受けた人が入国できない国のリストを挙げており、イスラエル・カナダ・日本・イギリスが含まれる。トルドー首相がトランプ氏の入国を許可するかどうかは(不可能ではないものの)政治問題化する可能性があり「トルドー首相が訪問」する以外の選択肢はなかった。しかしながら各媒体とも「公式スケジュールには含まれていなかった」と書いている。つまり公式に発表できなかったかあるいは直前になるまで会えるかどうかがわからなかったということになる。
APによるとトルドー氏は2025年10月までに総選挙を行う必要がある。カナダに高い関税が課せられればカナダ経済は甚大な被害を被る可能性がありただでさえ支持率が低下しているトルドー首相の命取りになりかねない。おそらく双方の主張は食い違うだろうがトルドー首相は面と向かってトランプ氏を否定するようなことはしないのではないか。
いずれにせよトランプ氏は「乱暴な発言をすれば外国の首脳たちが慌てて自分に会いにに来てくれる」と学習したことになる。あるいは何らかのお土産持参で飛んできてくれるかもしれないと期待することになるだろう。
いずれにせよ「誰に会いたいかは自分だけが決められる」というのがトランプ大統領のルールということになる。石破政権はトランプ氏に会えなかったことが失点扱いされると困ると考えたのだろうし、マスコミもアメリカに対する見捨てられ不安を抱えているようだ。「ルールだから仕方がない」と思いたい気持ちはわかる。
しかし実際のトランプ次期大統領は極めてアメリカ流の「my way or the highway(俺に従えないならとっとと失せろ)」という交渉を国際協調の場に持ち込む大統領だ。日本のマスコミも徐々に視聴者にこれをわからせるべきではないかと感じる。