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安倍外交はどうして破綻したのか

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今日は安倍外交がどうして破綻したのかについて考えてみたい。まず、安倍外交とは何だったのだろうか。
背景にあるのは中国の台頭だ。安倍首相の周辺は中国が経済的に台頭してきたという事実を受け入れられなかった。そこで中国に対抗する方向に傾いてゆく。しかし、日本の経済成長は止まっており資力がない。そこで考えたのがアメリカへのフリーライドだ。アメリカの威光にすがり懐にもぐりこむことで影響力を行使しようとしたのだ。
戦略の軸は3つあった。日米中心の経済圏を作るTPP、日米豪印で形成する安保ダイヤモンド構想、そして中国の周辺諸国への援助だ。どれも中国包囲網である。
フリーライドという言葉に違和感を持つ人たちがいるかもしれないが、日本の防衛費はGDPの1%に過ぎない。これは先進諸国と比べると格安というべきだ。相場観で言うと「防衛費を安く上げている」ということになってしまう。
よく考えてみれば地域の大国同士のコンフリクトというのはありふれた話であって是々非々で対応するのが普通だ。さらに中国市場は10億人の発展市場で、日本は1億人ちょっとの衰退市場である。どちらの優先順位が高いかは目に見えている。
安倍首相がなぜ仮想万能感を持ったのかは分からない。要素はいくつかあるように思える。
第一の要素は国内の政治状況だ。対抗勢力(社民、民進)にはやる気がなく、共産党には国民の支持がないので、自民党は国内で「勝った」状況にある。これが偽りの成功体験になっているのだろう。
次の要素は国内で失敗しつつある人たちだ。彼らは情報分析能力もなければ、情報発信力もない。彼らにできることは誰かを馬鹿にすることだけだ。社民・共産党はほとんど影響力がないので、最近ではとりあえず民進党を叩いていれば大丈夫という空気になっている。
なぜこのように感じるのかといえば、最近では政治的な炎上が自動化しているからである。多分「民進党的なことを言えばそれを叩く」ということになっているのだろう。最近ではユーキャンのWikipediaのタイトルが書き換えられて「炎上」だということになったが、これも山尾しおりを表彰したからだろう。単に民進党をいじめているだけなのである。評価されるのはタイトルやヘッダーであって議論の中身ではなさそうだ。炎上を避けたければ、どちらにもつかずにして、長い文章を書けばいい。
支持者たちは議論の中身には関心がない。例えば、自衛隊の南スーダン行きには賛成なのだろうが、南スーダンの状況にはたいした関心はないのではないだろうか。アメリカはPKOにはあまり熱心ではないが「アメリカ軍についてゆけば安心」と考えている人も多いはずだ。つまり、安倍政権を支えている第二の要件は馬鹿な支持者たちなのである。
最後の要素はお金である。安倍政権は諸国に配るお金を持っている。日本は衰退してゆく国なのだが、外国からの借金がなく援助資金を自国調達できる。そこでたいした戦略もないのに(中国への対抗をたいした戦略だと考えているはずだ)ばら撒いている。ついでに利権も得られればよいと考えているのかもしれないが、中央アジアの国はもっと強かだろう。
国民のチェックが甘く多くの金を持っているので、多くの国が日本の資力に期待することになる。ロシアが日本からの経済協力を求めるために領土問題をちらつかせたのはよい例だろう。交渉にコミットしだしたら、最初の動機を引っ込めればよい。これは「フットインザドア」という初歩的なマーケティングのテクニックである。ロシアが細かな交渉テクニックをこれ見よがしに見せてくる国のようだ。岸田外務大臣は交渉のスケジュールを知らされず、プーチン大統領は遅刻してきたそうである。「交渉のペースは自分が握る」ということを誇示したいのである。日本がこれに乗らざるを得ないのは北方領土問題の糸口を見つけたいからだ。
冷静に考えてみると、中国が相対的に国力を伸ばしているのは、日本の国力が停滞しているからだ。なぜ停滞するかといえば人口が減っているからである。これを改善するためには、次世代に向けた投資をしなければならない。しかし、日本は非正規雇用政策を促進し、大学への投資も減らしている。こうした投資に理解が得られないのは安倍政権や支持者たちが戦略的視野を持たないからだろう。平たい言葉で言うと「馬鹿だから」である。
当初はトランプ大統領が誕生して安倍外交が破綻したというような図式でこの文章を構成しようと思っていた。しかしそれは必ずしも正しい見方ではなかったかもしれない。アメリカと日本の国益は必ずしも合致しない。最初から安倍政権は利用されているだけで、オバマ大統領はこれを控えめに語り、トランプ氏はそれをあけすけに語っているだけなのかもしれない。
ここで分かったのは安部政権は政権発足以来かなりの政治リソースを対米追従に浪費したということだ。成長戦略はアメリカ頼みだったので、政権が変わってすべてが無駄になってしまった。最後に残ったのは都民の税金を浪費するだけのオリンピックとカジノだけだったのである。


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