ざっくり解説 時々深掘り

オタクこそファッションを研究すべきではないか

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現在のオタクたちは政治的圧力にさらされている。経済が行き詰まるにつれて日々のイライラをぶつけるスケープゴートが必要になる。そこで「オタク趣味は性犯罪の温床になる」というようないわれのない非難にさらされることになった。こうした危機感はかなり共有されており、山田太郎候補は落選こそしたものの「表現の自由」の保護を訴えて28万票を獲得した。
かつてのオタクたちは自分たちの世界に耽溺していればよかったのだが、現在では外見を整えて社会的な訴えかけをしなければならなくなった。面倒臭いことこの上ないが、現実は直視しなければならない。
需要は多いが、オタクが使えるファッション情報は少ない。皮肉なことにファッションは「ファッションオタク」たちに牛耳られていて、新規の顧客の参入を拒んでいるからである。ファッションオタクたちが服好きなのはわからなくもないし、否定されるべきでもない。なぜならば彼らは服が好きすぎて1日中洋服のことばかり考えているのである。だが、オタクにはそんな時間はない。なぜならば、そんな時間があったら好きなことに時間とお金を当てたいからである。
だが、実際のファッションは実のところ単なるパターン認識だ。もちろん、深みにハマればいくらでもハマる余地があるのだが、当初はパターンさえ覚えてしまえば、あとはそれを機械的に当てはめるだけなのである。
patterns最初のパターンは色だ。色の組み合わせはそう多くない。実際にはこれに灰色が入るのでちょっとだけ複雑になる。キーになる要素はバランスとラインだ。
まず、バランスを見ておきたい。暗い色ほど重くなるが、明るい色は広く見える。色が重要なのは体型が人によって異なるからである。例えば下半身が太っている人は上半身を引き締めてバランスを取ったりする。これは自分で確かめた方が早い。
もう一つはラインだ。一番下のコーディネートではジャケットがラインを作っている。黒のジャケットに明るい色のインナーとズボンを合わせると、縦長のラインが作られるのだ。
色を使わずに形で整えることもできる。例えば、緩めのズボンを選び、タイト目のジャケットを合わせることもできる。ファッション雑誌は手を替え品を替えこれをやっている。
お腹が出ている場合にはどうすれば良いのだろうか。「痩せろ」というのが最初の答えだ。痩せてユニクロ体型(ユニクロは顧客の体型を決め打ちしている)になれば、あまりこだわらなくてもよくなる。次の答えはバルーンのようなシェイプをつくることだ。白ジャケットの例でいうと、上のインナー(黒い部分)がバルーンの上半分で、下がズボンになる。つまり、上が太く下が細くなっているズボンを探せばいいということになる。こうしたズボンは「テーパード」というわかりにくい名前で売られている。「スタイルアップが図れますよ」などと宣伝されているのはこうしたシェイプが作りやすいからなのである。
服オタクが作るファッション雑誌のワードローブの作り方特集を読むと、キーになるアイテム(人によってジャケットとズボンの組み合わせだったり靴だったりする)を中核にして周辺アイテムを揃えて行くというようなことが書かれている。色の数は制限されており(黒、紺、カーキ色、白程度だ)アイテム数も10〜15といったところだ。ということで、似合うパターンを見つけたら好きなアイテムを探して、ワードローブを組み立てて行く。
一方、SAFARIにもワードローブの組み合わせを提案している特集があった。(Safari(サファリ) 2016年 09 月号)こちらは服ではなく、自分の趣味やキャラと洋服を合わせるべきという提案をしている。
SAFARがこうした提案ができるのは、SAFARIの読者層が自分たちの趣味やキャラが何かを知っているからだ。難点は彼らが考える趣味が車とかサーフィンだったりするところなのだが、コンセプトは応用できる。例えば撮り鉄ならば機能的で動きやすいジャケットスタイルが必然になる。靴は動きやすいスニーカーだろう。これは同年代には真似ができない。耽溺する趣味がないというのが普通だからである。つまり、オタクはファッションに親和性が高いのである。
一方で趣味に耽溺するために服自体はシンプルにするというファッションスタイルもある。最近ではノームコアという名前までついているが、ジョルジョ・アルマーニなども自分の服はシンプルだ。アニメファンは自分の好きな世界に耽溺したいと考えるかもしれない。趣味とファッションを合わせると自身のキャラと乖離してしまう。だから、ファッションはシンプルな方がよいかもしれない。
さて「お店でいろいろ試せない」とか「服に金をかけたくない」という人にも有利な環境が整っている。中古市場が充実してきているのだ。単に在庫を置いてあるだけという店もあるのだが、セレクトショップ並みに手が入っているところもあり、各種のブランドが比較でき、ズボンの価格も300円くらいからあり1万円もあれば失敗込みでシーズンの服が揃えられるだろう。できるだけ同じような色で太いズボンと細いズボン、大きめの上着と小さめの上着を試せば一通りバランスのチェックはできる。
このように見て行くとオタクは実はファッションが得意であるということがわかる。キャラやすきなことが明確にあり、分類やパターン認識が得意だからだ。