時事通信が「総理大臣は傍観者になっている」と指摘している。自公国の枠組みで総合経済対策が決まったが石破総理は傍観者になっていて指導力を発揮できなかったそうだ。
103万円の壁に関しては読みを誤ったと思っている。国民民主党の支持者たちは「約束していたことと違う」と怒りを向けるのではないかと思っていた。しかしYahooニュースを読む限り、ネット世論は103万円の壁問題に興味を失っているようだ。つまり最初から問題解決には期待を向けていなかったということになる。
代わりにアクセスランキングの3位には「財務省叩き」が入っていた。つまり誰かを叩ければそれで良かったのだ。今後国民民主党が支持を維持するためには「何かを叩き続けなければならない」しそれができなくなれば単に飽きられてオワコン化するということになる。
政治に問題解決は期待されておらずテレビの安価なバラエティ番組のような状態になっている。もともと安倍官邸の私憤ともいえるサンデーモーニング叩きから始まったテレビ局の萎縮が生み出した結果とは言え「もう少しなんとかならないのか」と言う気もする。
時事通信は今回の政策取りまとめでは石破総理は単なる傍観者だったと伝えている。
ただ、取りまとめの過程で官邸側が積極的に動いた形跡はない。衆院選敗北で首相の求心力は低下しており、自民関係者は「誰も首相の指示では動かない」と指摘。官邸幹部も「自民の小野寺五典政調会長に一任し、官邸は見守る姿勢だった」と認める。
石破官邸、指導力発揮できず 自公国主導で経済対策(時事通信)
今後、国会審議が予定されているがおそらく内容はチグハグなものになるだろう。立憲民主党などの野党は石破総理を責め立てるだろうが石破総理は意思決定には関わっていない。では小野寺「首相」が答弁で責任を持つのかということになるが一部に関しては「いやそれは国民民主党に聞いて下さい」ということになる。だが国民民主党は「部分連合」という見方に反発していて「最終責任は負いません」という立場だ。
総理大臣を含めて誰も責任を取らない。
本来ならば、国(それが具体的に誰であってもよいのだが普通は総理大臣だ)がグランドデザインを示しそれに合わせて制度改革を行うべきだろう。しかし、このグランドデザインが全く示されていない。やろうとしてできなかったわけではない。そもそも意欲がないのだ。
すでに103万円の壁問題については迷走が始まっている。まず住民税と所得税を分離する案がでている。制度が複雑化する上にターゲットにしていた主婦のパートの手取り改善は難しくなるだろうとされている。また高所得者については減免しないという案も出ているという。グランドデザインなく場当たり的な「繕い仕事」という印象。ただしこれはどちらもサウンディング(日本語ではアドバルーン:観測気球と呼ばれることが多い)である。つまり世間と国民民主党の反応を見ている。政治は「見た目」を気にしていて責任を持った意思決定ができなくなっている。
国民民主党が求める「年収103万円の壁」見直しを巡り、所得税の基礎控除(48万円)を引き上げる一方、住民税の基礎控除(43万円)を引き上げ対象から除外する「分離案」が与党内で浮上していることが判明した。地方自治体からは「壁」引き上げによる住民税の税収減を懸念する声が上がっており、「分離案」によって地方への配慮を示す狙いがあるとみられる。
与党が年収の壁「分離案」検討 住民税の控除を除外か 地方に配慮(毎日新聞)
年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」引き上げに関し、一定所得以上の富裕層への適用を制限する案が政府、与党内に浮上していることが23日分かった。減税の恩恵を受ける対象を絞ることで税収の減少幅を圧縮する。適用を制限する所得水準などの詳細を今後詰める。
【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで(共同通信)
さらに財務省と厚生労働省が別々にアイディアを出している。今回の103万円の壁問題は税に関わるため財務省管轄だが社会保障に関しては全く別の議論が進行しており総合的に手取りアップは難しいのではないかと見られている。
TBSの報道特集が103万円の壁問題について取り扱っていた。要するに「税金も社会保障費も支払いたくない」ために働く時間を抑制しているという人が多いようだ。取材対象の中には補助労働であり税金と社会保障費を負担できるほど稼げる見込みがない人と、スキルアップをすれば稼げるようになるかも知れないが確証が持てないという人が混じっている。さらに補助労働の人と正規社員が同じ仕事をしているという職場もあるようだ。
報道特集は「専業主婦家庭と共働き家庭の数が逆転している」と言っている。つまり今の制度は時代に即していない。そこで主婦が厚生年金にタダノリする制度を廃止すべきだとする小宮山元厚生労働大臣(民主党)に言わせていた。
このように問題を解決しようとすると税制・社会保障・労働のあり方(労使とも)の問題を一括して解決しなければならない。だが、そもそも総理大臣が傍観者になってしまっている現状ではグランドデザインを提示する人はおらずしたがって問題が解決するとは思えない。
しかしながらネット世論を見る限り、そもそも「政治が問題解決をしてくれる」とは思われてはいないようだ。国内アクセスランキングを見ると1位から5位までを斎藤問題が占めており、4位に産経新聞の「財務省叩き」が入っていた。
当初、有権者は問題解決を期待して国民民主党に投票したのだと思っていた。このため国民民主党の「プロレス」に失望した有権者は国民民主党に怒りをぶつけるのではないかと考えた。この見方は「有権者が問題解決を願って投票している」という合理的有権者論に根ざしている。
ところが実際の有権者の反応を見ていると「選挙とはしょせん祭り」でありそれをきっかけに誰かを叩くことができればそれでいいということになりつつあるようだ。