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安倍外交の崩壊の足音

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安倍外交はかなりやばい状態にあるのではないかと思う。ロシアとの外交を見ていてそう思った。安倍首相はプーチン大統領と直接会談したあと険しい表情で「平和条約は難しい」と会見した。この表情をみて「それ見たことか」などと言い立てるつもりはないし、記者たちも「やっぱそうだよね」くらいの感想を持ったのではないかと思う。
問題なのは、安倍首相を含む官邸側がなぜ「ロシアは平和条約を結ぶ用意がある」などと思い込んだかということだ。安倍首相が岸首相の足跡をトレースし「なんとしてでもやり遂げなければ」と思った可能性もあるのだが、周りにいる人が希望的観測を吹き込んだ可能性がある。
外務省はすでに「クリントンでいける」と吹き込んで官邸を混乱された前科がある。さらにロシアでの失点ということになれば、官邸は外務省を信頼しなくなるだろう。そこで党による独自外交という線が出てくるわけだが、独自外交とは結局利権に預かりたい人たちが安倍首相にすり寄ってくるということだ。
対ロシアでの利権を狙う鈴木宗男氏が「二島ならいける」と繰り返せば、プーチン大統領にその気がなくても「ひょっとしたらいけるのではないか」という希望的観測が生まれる。実際には経済制裁覚悟でクリミアを獲得するほど領土への執着心が強い大統領が、自国の領土を手放すはずなどないのではないかなどとは思わなくなるのだろう。
もちろん背景には安倍政権の弛緩があるのだろう。強い敵もおらず、長期政権という目的を達成してしまったので、あとはレガシー作りにしか興味がない。また、安倍政権は政権マネジメントには興味がなさそうなので成果を出した人を褒賞するという仕組みがないのだろう。そもそも目的がないので、成果の測りようがないということがあるかもしれない。真面目なことを言っている人がやる気をなくし、山っ気を持った人たちばかりが寄ってくるという図式ができていることになる。
外務省はまともな提案をしないで、官邸に耳障りのいいことをだけをインプットしつづけた可能性がある。あるいは官邸側が話を聞かないで希望的観測だけをインプットしてしまった可能性もあるだろう。いわゆる集団思考だがこれに輪をかけているのが昨今の秘密主義だ。南スーダンの報告書は黒塗りされた状態で公開された。すでに「嫌な情報はなかったことにする」というマインドセットが出来上がっているようだ。実は情報公開とはリスクヘッジなのだが、それがわからないのが今の政権なのだ。
日頃から「好調の中にある崩壊の足音」というものに興味がある。陽が満ちるとそこに陰が差し込むからだ。ただ、残念なことにこれでもっとも被害を受けるのは有権者を含む国民だ。
すでに新興国からの資金の引き上げが始まっている。ドルの独歩高になり、新興国通貨が下落しているのだ。輸入食料品の価格などが上がり、開発資金が滞ることになる。いわゆる「トランプショック」である。ここで起こるのは世界的な経済の混乱で、日本は大きな影響を受けることになるだろう。これを官僚たちは「想定外だった」と伝えることになるのではないかと思われる。