ざっくり解説 時々深掘り

自民党が考える「法的世界」という物語

現実と法律は別という佐藤議員の暴論

佐藤正久という人がとんでもない見解を示した。TPP審議の途中に、南スーダンの事情は逼迫しているが自衛隊を派遣するのは全く問題がないというのである。その理由付けが面白かった。
現在南スーダンは内戦状態にある。大統領派と副大統領派が分かれて戦っているからだ。政府派といっても片方の民族を代表しているだけで、敵対する人たちから略奪したりしているそうだ。また、国連軍と政府軍の間でも衝突があったようだ。そこで国連でも「これはやばいね」という報告書が出ているそうだ。
普通に考えるとこの状況下では自衛隊は派遣できない。外国の武力紛争に介入していることになってしまい、憲法9条に抵触するからだ。しかし安倍政権は「問題ない」と言っている。なぜか。
それは、現実に起きている事と法的判断は別だからなのだそうだ。法的判断を下すのは安倍政権なので安倍政権の解釈次第で法的判断はいくらでも変えられてしまうのである。これは恐ろしいことなのだが、なぜ恐ろしいかという実感は共感されにくいのだろうなあと思った。

法律が生まれる前提は、当然ながら想定外を生み出す

南スーダンの件は何か事件が起こらないと表面化しないだろうから「この議論の何がおかしいのか」を説明するのは結構厄介だなあと思った。そこで別の件を出して考えてみたい。
山本太郎議員が「日本は多国籍企業から訴えられるかもしれない」と主張した。それに答えた石原大臣は「絶対に訴えられない」と応えた。なぜなら企業から訴えられる事は何もしないからである。だが、この答弁に「呆れた」という声は聞かれなかった。
多国籍企業が日本人の健康を犠牲にして儲けたいと考えた場合でも日本政府は何も保護しないという制限になる。なぜならば保護すると訴えられてしまうからである。つまりこれは政府の役割放棄なのだ。それに加えて今ある保護機も訴えられる可能性がある。しかし、それは考えない。なぜならば「訴えられる可能性」がでてくるからだ。だから「企業が国民の利益と相反することをする」という可能性そのものを想定しないというのが石原答弁なのだ。
想定を作ると想定外が生まれる。だから想定外は考えないというのが日本政府の基本的なスタンスだ。

想定外のツケを支払うのは現場

南スーダンの想定外とは何だろうか。それは自衛隊が内戦に巻き込まれて死者がでるという結果だろう。だが、それは絶対に起こらないのだから、殺される備えはしないことにする。だから、自衛隊には「絶対に死ぬなよ」という命令が降ることになる。つまり、安倍政権は現場に矛盾を押し付けている。
このような「想定外」は様々なところで起きている。例えば原発は安いということになっていた。確かに原発の展開はアメリカの戦略なので日本には選択肢はなかった。そこで「原発は安い」という物語を作った。ただし「事故が起こらない限りにおいては」という限定がついていたので、事故については考えない事にした。
実際に事故が起きても、事業者は負担しきれそうにない。だがここで面倒をみないと事業者は潰れてしまうので、経産省は「事故の負担はみんなでしましょう」と言い出している。

想定外が生むモラルハザード

例えていうとこういくことになる。味の素が冷凍食品で食中毒事件を起こす。そこで賠償が必要だ。しかし賠償金を出すと味の素は潰れてしまうので、ニチレイや加ト吉のお客さんにも賠償金を払ってもらいましょうというようなことである。
法律論と現実を分けてしまう危険性は「想定外」を作ってしまうことだということになる。実はこの想定外は新たな危険を生み出しているようだ。松田公太前参議院議員が、自衛隊の派遣を要請した場合に歯止めがないことを心配している。国会で歯止めをかけることという決議をつけたのだが、それがまだ法制化されていないのだそうである。
想定外を作っても平気なのは、責任は取らないで済むとという確信があるからだろう。冷凍食品の例でいうと味の素は食中毒防止の措置を取らなくてもよいことになる。現実に冷凍食品や半加工品が安心して食べられるのは「一旦事件が起これば会社が潰れる」からなのだ。

パラダイムシフトに対応できなかった自民党と巻き添えを食らう国民

安倍首相が想定外を考えないのは、自民党の存続はアメリカの国益なので、利益相反するようなアクションは決して起こらないと考えているからだろう。
つまり、自民党にはアメリカという軸があり、それに沿っている限りにおいては別のシナリオを考える必要がなかった。そこでリスクを管理するという必要も生じなかった。だからこそ想定外といいうことが「ありえなかった」のだろう。
ところがアメリカの民主主義が機能不全に陥り、相対的な支配力も落ちている。いわゆるGゼロという状態にある。
多分、日本の有権者が安倍政権を支持し続けているのは、なくなってしまっている土台がまだあると考えているからなのではないだろうか。高齢であればあるほどその傾向は強いのではないかと考えられる。
前提条件がなくなったので自民党は潰れてしまうだろうというのが結論なのだが、その前に日本人は様々なツケを押し付けられることになるのだろうなあと思う。多分、ツケを払うのは高齢者ではなくもっと若い層なんだろうなあと思う。


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