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ついに解体論まで FBIとトランプ次期大統領との間に高まる緊張

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トランプ次期政権がどのようなものになるかがわかる事例があった。ヘグセス国防長官候補に性的暴行疑惑が出ている。これまでの大統領は身元調査のためにFBIを利用する慣例だそうだがトランプ政権はFBIの身辺調査を回避して閣僚を任命している。そればかりかFBI解体をほのめかす人が次期FBI長官になるのではないかと囁かれている。

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スキャンダルに見舞われたヘグセス氏はFOXニュースの司会者で軍歴こそあるものの国防総省などでの経験はなく行政経験もない。このため上院の一部からは任命を疑問視する声が出ていた。

小選挙区制の下院と違い州の代表である上院議員は党派性を越えてアメリカ合衆国のためにベストを尽くさなければならないという強い自負心がある。このため「今わかっている情報はすべて伝えてほしい」と考える議員が多い。例えば、ゲーツ司法長官候補の下院での調査記録の開示を要求している。閣僚指名は大統領権限だが助言と承認は憲法によって与えられた上院の崇高な責務なのである。

ゲーツ氏は過去に性的人身売買(セックス・トラフィッキング)などで司法省の捜査対象になった経歴があり司法省を敵視しているとされる。自身もセックス・スキャンダルを抱えているトランプ次期大統領にとっては「共通の利益を持つ」「適材適所の」人事となる。共同通信は「FBI長官に解体論者検討 元国防幹部パテル氏、報道」と書いている。FBIに頼らないどころか「ばらばらにしかねない」状況になっている。

この敵意はどこから生じたのか。

Newsweekのある記事には次のように書かれている。

  • レイFBI司法長官は2017年にトランプ氏に任命された。
  • しかしトランプ氏に解雇される屈辱を味わうくらいなら辞めるのではないかと言われている。
  • 政権交代後のFBIの機能維持が目下の課題だ。

背景にある事情は複雑だ。

もともとFBIは政治的に中立であることが求められた。だが、この記事の識者の見解によると「バイデン大統領に近づきすぎた」ようだ。その理由は明らかになっていないが、議会襲撃事件を通じて「トランプ氏が再び大統領になれば憲法秩序が破壊される」と危機感を持ったのかも知れない。

だが、これがトランプ氏と支持者たちに強い被害感情を与えた。FBIの信頼度は低下傾向にあり共和党支持者のほうがその傾向が強いのだそうだ。だからヘグセス氏にセックス絡みのスキャンダルが出たとしても「意識高い系の妨害工作だ」とみなされる可能性がある。

しかし実際には、次期政権が直面する最も緊急の政策課題への一体的アプローチというよりも忠誠心、「反ウォーク(社会的問題意識)」の感性、テレビで役割を演じる能力をトランプ氏が重視している様子がうかがえる。

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「自分自身もやりたいようにやってきた」ために「司法に目をつけられる可能性が高くなっており」「トランプ氏に近づくことで自分たちの立場を保護しようとしている」ということだ。また「反知性・反ウォーク」がもはやイデオロギー的な域に達していることがわかる。

ただ、トランプ氏は一定程度は「共和党支持者からどう見られているか」を気にしている。そのために重要なのがスーザン・ワイルズ首席補佐官だ。古い共和党員であって伝統的な支持者たちが何を気にしているのかを知ってる。アメリカの古い共和党員は家族を大事にすることを知っているためトランプ氏の重要な集会では「ファミリー」が揃い踏みすることが多い。そしてそれは白人でなければならない。だから今回の重要閣僚には白人が多い。

つまりワイルズ氏が「ヘグセス氏はふさわしくない」と考えれば人事は覆る可能性があると言うことになるだろう。

トランプ氏の乱暴な閣僚人事の狙いについては異なる意見が出ている。

第一の意見は「憲法の特例を使って自分たちの「アジェンダ」を優先するのではないか」というものだ。この特例については過去の記事で解説したとおりだ。最長で2年間は議会の承認なしの人事を行うことができる。ただし上院が10日以上開かれないことが条件になっている。

もう一つの意見は「踏み絵」説である。BBCはこの可能性をほのめかしている。つまりまずは好き勝手な人事を提案し「誰がそれに反対するのか」を見極めようとしているのである。

上院議員は「トランプ氏が十分な身辺調査なしに閣僚を指名するのはトランプ氏のためにならない」と言っている。ところが「私はあなたのためを思って言っているのですよ」という発言そのものをトランプ氏は嫌うだろう。

つまり次期アメリカ政権を理解するうえで「反知性・反ウォーク」の正しい理解は極めて重要だ。

BBCは経済系の閣僚が全く手つかずになっていると指摘している。つまりトランプ氏は経済政策にはあまり興味がないということになる。おそらく財界との結びつきもかなり限られているようでお目当ての候補者の中には辞退者も出ているようだ。議会からあれこれと過去を審査されることになる上に本業にも影響が出ることは間違いがない。ビジネスでそこそこ上手く行っているのにわざわざ渦中の栗を拾う人はいないだろう。

ここから、結果的に「訳あり」で「見た目ばかり」の人材がトランプ氏のもとに集まってくる可能性が高いことがわかる。

今回書いたことは英語のメディアでは盛んに語られており一部は日本語訳もされている。しかし日本人の常識の範囲を越えているのも確かだ。脳内でフィルターが掛かってしまい「いくらなんでもこんな無茶苦茶なことが起きるはずはない」と考える人達のほうが多いのではないか。不安耐性が低い日本人は「常識の壁」を巡らすことで不安を回避してきた。

このため常識的な日本人は「日米関係はトランプ氏のためになる」と説明すればなんとかなるのではないかと(少なくとも暫くの間は)考え続けることになるだろう。

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