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アメリカ合衆国で進む「民主的な」政府打ちこわし運動

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いつもはお昼にアップされているABCニュースのアップ時間が遅れた。どんなニュースが流れているのかを見てみたのだがトランプ政権の次期閣僚名簿が次々と発表され波紋を呼んでいるというニュースがメインのようだ。特に司法長官と国防長官の人事が大きな注目を集めていた。

リベラル系のCNNは「右派ポピュリズム」と表現していたが、おそらくこれを見て溜飲を下げた人も多かったのではないかと思う。アメリカの崇高な民主主義の伝統を「偽善」と感じる人が増えているのだ。

アメリカの政治地図は一夜にして置き換わったのではない。民主党から僅かに人が離反しこれまで選挙に行かなかった人が僅かに共和党に加勢したことで、大胆な政府の打ちこわし運動が始まった。

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日本では対日・対中国の政権の姿勢が問題になることが多い。だが、もはやそんなことはどうでもいいと言うような感じになっている。

トランプ政権の閣僚名簿も物議を醸している。まず司法長官(Attorney General)にゲーツ氏が任命される見込みとなっている。「どこかで聞いたことがある名前だな」と思った。

アメリカ下院の議会選挙でなかなか議長が決まらないということがあった。このときにトランプ派の急先鋒として抵抗運動の先頭に立った人だった。

様々なスキャンダルを抱えていて「性的人身売買(セックストラフィッキング)」の容疑をかけられた過去もある。つまり捜査の対象だった人を責任者に据えるという人事になっている。司法省を抑え込むための人選だ。このためABCニュースは「司法省で離職者が増えるのではないか」と伝えている。最も司法長官にふさわしくない人物なのだ。

また国防総省の長官にはFOXの司会者(ピート・ヘグセス氏)が抜擢された。国防総省での経験はなく「素人が国防総省を率いる」事になりそうだ。REUTERSは欧州の同盟国で戸惑いの声が広がっているとしている。軍の「意識高い系」の政策に批判的ということはわかっているがそれ以外に実績がないため何を言い出すかわからない。さらに人員入れ替え計画も本格化しており米軍高官の入れ替えが進展している。

自民党が国民から信任されている背景には「強いアメリカ軍や安全保障関係者との親密な結びつき」があるが、これが根底から破壊されかねない事態になっている。アメリカの外交・安全保障に詳しいヨーロッパでは動揺が広がっているが、石破総理は「これから情報収集して建設的な提案をする」と言っている。

ではこれは「トランプ氏とトランプ支持者の暴挙」ということになるのだろうか?

民主党の姿勢は「人権」と「民主主義」を全面に出しつつもイスラエルの人権無視の軍事行動を容認してきた。つまりダブルスタンダードが目立ってきた。民主党支持者から見れば「必要な理論の使い分け」だったかもしれないが、これを「欺瞞・偽善だ」と考える人も増えている。

イーロン・マスク氏は「NATOの高官は1984年をマニュアルにしている」と言っている。東西冷戦が終わりNATO不要論が指摘されていたが、ロシアのウクライナ侵攻により再びNATOの存在意義が増している。「平和」を実現するはずの安全保障のスキームは常に戦争を必要としている。この皮肉は確かに1984年的である。

だがイーロン・マスク氏も嘘の飽和により何が真実なのかを見えなくするという「1984年的手法」を使っており両陣営で1984年化が進んでいるとも言えなくはない。

これまで「知的な人たち」に議論で対抗できなかった(ただしうすうすは何かがおかしいと感じていた)普通の知性を持っている人たちが民主的に選ばれた政府の代表者が政府そのものの破壊を支持している。数による暴力的解体こそが反知性的運動の正体といえるだろう。つまり、議論によっては遅々として解消されなかった問題が一種の暴力的手段によって解体されつつあるというようなことが起きている。

大統領選挙の投票率は65%だったと言われている。戦後2番目の高さだそうだが、それでも1/3のアメリカ有権者はこの政治運動に参加していない。僅かな民主党からの離反と僅かな新規参入者が加わっただけで政府の破壊が進行するという状態になっている。

この現象を正面じゃら捉えることで暴力を是認していると誤解されるのは本意ではないが、やはり民主・共和両党の候補者と選挙から距離をおいている「普通のアメリカ人」を見ていると「解消されるべきものはやがて解消される」という結論を出さざるを得ない。

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