ドイツで総選挙が前倒しになった。12月に信任投票を行い2月に総選挙になる。もともと財政規律が厳しいことで知られるが、野党はこれまでの方針を転換し財政規律の緩和を争点にするものと見られる。「あのドイツでも」財政緩和を議論せざるを得ないという難しい状況になっている。
これまで安いエネルギー・EUからの豊富な労働力・比較的安い通貨という好条件で輸入製造業大国だったドイツ。この前提が徐々に崩れ始めており近年では低成長にあえいでいた。
1月から12月までが会計年度のドイツでは連立政権が夏までに予算をまとめる必要があった。だが締め切り前になっても連立協議がまとまらない。特に新自由主義政党の自由民主党が左派批判の政策集を打ち出し連立内離婚状態になっていた。
ショルツ首相が自由民主党党首の財務大臣を切り名実ともに連立政権が崩壊した。ドイツでは連邦首相は議会解散権を持たないため一度信認案を審議してもらい「不信任決議」を得る必要がある。
2月に選挙になるため連邦予算が成立しないことは確実になった。基本法により前年の予算が適用され最低限の支出は保証される。当面ウクライナへの支援は問題がないものとされている。
そんな中、野党党首のメルツ氏はこれまでの厳しい党の財政規律方針の修正を検討している。現在の与党である社会民主党と緑の党との連立を組みやくするためと言われているそうだ。
「債務を増やして消費や社会政策への支出を増やすというのなら、答えは『ノー』だ」とメルツ氏はくぎを刺しつつ、「投資や成長、子供たちの生活に重要だというなら、答えは違うかもしれない」と語った。
ドイツ次期首相有力候補のメルツ氏、債務ブレーキの改革に前向き(Bloomberg)
アベノミクス時代には「ドイツを見習って厳しい財政規律を導入すべき」と引き合いに出されることがあった。ところが今回のメルツ氏の方針は「教育・防衛・インフラ整備などの投資は例外にすべき」というものでどこか日本の「建設国債だけは将来投資なので別枠だ」という議論に似ている。
現在の先進国を巡る経済状況は極めて厳しいものになっており、日本でも今の時期に財政規律を強めてしまってもいいものか?ということになる。中長期的な財政規律の強化は極めて重要だが日本では比較的経済が順調だったアベノミクス導入後に実施すべきだったということになる。すでにタイミングは失われてしまい新たなフェイズに入りつつある。
なおドイツ経済は低成長が予想されていて経済諮問委員会も「インフラ投資などを促進すべきかも知れない」としている。ただしトランプ氏が関税政策を導入するとドイツのGDPは1%減少する可能性がある。またトランプ氏がウクライナ支援から撤退してしまうと更にドイツ国民は支出を迫られることになるだろう。
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