トランプ氏が新しい「部局」構想を発表した。日本では「政府効率化省」と訳されるようだ。英語ではDepartment of Government Efficiencyとなりイーロン・マスク氏が所有する暗号資産と同じ名前になるという。政府効率化省はおそらく人によって大きく印象が異なる部局となるだろう。反知性的な人ほどこの構想に賛同するだろうし、政治に参加しない有権者ほど反知性的な傾向が強い。
新しい「部局」で「省」というご紹介をしたのだが、この紹介の仕方は厳密には正しくないようだ。
新組織「Department of Government Efficiency」の短縮形は「DOGE」で、マスク氏が推進する暗号資産(仮想通貨)「ドージコイン」と同じ表記。
マスク氏、次期米政権で「政府効率化」主導へ ラマスワミ氏も
日本の「省=ministry」はイギリス風の言い方でアメリカではDepartment(部)と言われる。このため韓国は日本の省に当たるものを「部」と表現している。日本では「アメリカ国防総省(Department of Defense)」も「アメリカ司法省(Department of Justice)」も「部」を「省」と表現している。
ところがイーロン・マスク氏もラマスワミ氏も議会承認が必要とされない「部局」責任者と言うことになっている。つまり米国民にとっては政府の名にある省も政府の外にある諮問機関もすべて同じに見えてしまうということである。また2026年7月4日までの時限的な機関で恒久的な機関ではない。
このため企業経営をしている民間人が自分たちに都合が悪い部局やプログラムを廃止する権限が与えられるということになり「究極の企業腐敗」ということになるだろう。特にマスク氏は多額の献金でこのポジションを買っているのだから企業献金腐敗である。またマスク氏はプーチン大統領とも連絡を取っているのではないかと噂されている。
ところが現在のアメリカ合衆国ではこれらが大した問題とはみなされない。そもそもトランプ氏はすでに有罪評決を受けているが支持者たちはさほど重要視しなかった。
トランプ陣営側は盛んに「意識高い系の政府組織をぶっ潰す」としている。トランプ氏の言い方ではこれは「マンハッタン計画」なのだそうだ。マンハッタン計画は第二次世界大戦に勝利するための究極兵器(核兵器)開発のための計画だ。日本では非人道的な兵器とみなされるが、アメリカではアメリカ勝利のための切り札と理解されることが多い。
つまりドージは国民の政府に対する感情的な反発を利用している。普段政治に関心を持たない人たちはエスタブリッシュメントに反感を持っているものと見られる。このため反知性的な人たちによる政府の打ちこわし運動という側面を持っている。
つまり、
- 第二次世界大戦の敵は日本やドイツ
- 現在の敵は自国政府
なのだ。
つまり「政府の外に政府に抵抗する勢力を作る」ことが「民意によって承認された」ことになる。政府は自分たちの味方になっておらずそれを打開するためにはより力がある人たちが必要なのだということになる。
果たしてこんな事が可能なのかという気がする。
新しい部局が作られたとしても議会が予算を承認しなければ事実上実施できないというのがこれまでの常識だった。しかしイーロン・マスク氏は多額の資金を持っており「政府の外に非営利組織を作る」ことはそれほど難しくないだろう。「政府外政府」が豊富な資金力によって実現するということだ。賭けに勝ったマスク氏は個人資産を増やすことに成功している。
すでに教育省を解体するのではないかという話が出ている。CNNは「これまでも議会が教育省解体をブロックしてきたのだから今回も阻止されるだろう」と希望的観測を書いている。時事通信によるとマスク氏はFRBの解体にも賛意を示したそうだ。
なおアメリカ下院はまだ支配政党が決まっていない。また共和党でもトランプ派が議会を支配することにはならずトランプ氏から一定の距離を置くスーン氏が院内総務に決まった。
日本ではオバマ大統領が誕生したときに「Yes, We Can」ムーブメントに押されて改革意欲が高まった。これが2009年の民主党への政権交代の原動力の一つになったのではないかと思う。つまりアメリカの「反知性体な」運動ーすなわち「自分たちの理解できない者はすべてぶち壊してしまえ」というムーブメントも日本の政治に影響を与える可能性があるのではないかと思う。日本人は意外と外からの雰囲気に流されやすい傾向がある。
日本でも税や社会保障に対する重圧が高まっている。こうした感覚は「背中に徐々に石を積まれるように」積み上がっているのではないか。
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