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トランプ政権が教育省を解体との一部報道

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トランプ政権の組閣が進んでいる。日本では主に「安全保障と経済政策が強硬派で占められることになるだろう」と言われているが、報道を詳しく読むと「教育省の解体」や「国立衛生研究所の人員入れ替え」などの気になるニュースもでてきた。

また議会の監視対象でない閣外アドバイザーが強い権限を持つのも特徴だ。仮にこれらの構想が実現すればアメリカ合衆国の国の形は大きく変わるだろう。

今回のエントリーは細かな記事の寄せ集めから心象を作っている。個人的には「民主主義のお手本であるアメリカがこんなことになるはずはない」と思いたい気持ちもあり「反論」を期待したいところだ。

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ABCニュースやCNNが盛んに気にしているのは強硬な移民対策である。国境皇帝(ロシア風にツァーリ(czar)と表現されている)のトム・ホーマン氏が担当大臣になり、大統領次席補佐官としてスティーブン・ミラー氏が任命された。ABCニュースであh過去の言動について盛んに取り上げられていたが途中で読むのをやめてしまった。気分が悪くなったからだ。

国務長官として名前が上がっているのがマーク・ルビオ氏だが最終決定はされていない。上院にも「トランプ派」を残す必要がある。また、一部メディアでは下院も共和党が支配することになりそうだと伝えられ始めたがこれはまだ確定情報ではないようだ。

トランプ政権は議会と行政府を掌握することになりそうだ。すでに司法は抑えているため、実質的に第二期トランプ政権(前期)はブレーキなき暴走機関車のような状態になる。

CNNはトランプ氏が主張していたようなマスデポーテーション(強制退去)が起こるとは思っていないようだ。移民を選別して手続きにかけて外国に送り出すためには多くのリソースが必要になる。アメリカの移民当局は長い間機能不全を起こしておりトランプ大統領と側近がその気になったとしてもオペレーションが間に合わないそうだ。この現象は第一期の壁の建設のときにも問題になった。このときは十分な予算が捻出できなかった。

しかし、これよりももっと気になることがある。それがresilience(抵抗力)問題である。アメリカ合衆国には長い民主主義の伝統があるため、大統領が暴走すると民主的な抵抗運動が起きることが期待される。

その担い手になるのが民主党が支配する地域の政治家、警察、そして憲法秩序に忠誠を誓う軍隊である。この内の軍隊はトランプ氏が高官と非軍人を入れ替えるのではないかと言われている。内部からresilienceを奪うことで軍全体を「(トランプ氏に対する)愛に満ちた軍隊」に改造しようとしている。しかしこうした軍隊が一夜にして作られることはありえないだろうから、仮にトランプ氏がこれを実行しようとすればアメリカの軍事力はかなり混乱することになるだろう。

教育もresilienceの源になっている。南部ではキリスト教に基づいた教育を通じて伝統に回帰すべきだという運動が起きているがこれに抵抗する州もある。Forbesによるとトランプ政権では連邦レベルの教育省が解体するかも知れないそうだ。

理屈は軍隊の入れ替えと似ている。自分に逆らう人たちは「意識高い系の左派」であるという認識がありそれを解体することで国家指導者の権力を強めようとしている。マスク氏はTwitterを「意識高い系」と攻撃していたが彼が買収したあとのXは何でもありの状態に陥っている。

ドナルド・トランプ米次期大統領は以前から、教育省の廃止を繰り返し誓い、あらゆる教育の責任を各州に委ねると述べている。この構想は、教育関連の予算に影響を与え、米国民の教育を受ける権利の妨げとなる可能性がある。

トランプが新政権で狙う、左派寄りの「教育省の廃止」にマスクも賛同(FORBES)

教育の迫害は極めて危険という気がするが、現在ではあまり共感が得られないかもしれない。

中華人民共和国の知識人下放やポル・ポト政権のインテリ迫害などでも見られた現象だったため一定の世代にはおなじみの現象なのだ。インテリの迫害は独裁者の統治には役に立つが後の経済成長には深刻なダメージを与える。かつては独裁後発国家におなじみの構図が民主主義国アメリカ合衆国で懸案事項として語られる日が来るとは思わなかった。

ポル・ポト率いるクメール・ルージュはカンボジアは(自分たちが理解しやすい)農業国家になるべきだと主張し大勢の教育者を拷問・虐殺している。自分たちが理解できない存在を敵視していたのである。

同じようなことが公衆衛生の現場でも起きるかも知れない。「陰謀論」と揶揄されてきたロバート・ケネディ・ジュニア氏の逆襲も始まっている。今回の組閣について扱ったニュースの中にひっそりと「国立衛生研究所の600人を全部解雇する」という彼の主張が出てくる。民意を得て権力を握ったほうが「真実を扱っている」というわけである。

今回の大統領選挙は「男性対女性」という対立も生み出した。アメリカの女性たちの間に「4B運動」を通じたセックス・ストライキが広がっている。儒教の影響が強い韓国では嫁は「氏が違う存在」とみなされるため正月や秋夕の祭礼には参加できない。単なる労働力としてみなされ人間扱いされずに「子どもを産む機械」とみなされることもあるという。その韓国の4B運動がなぜかアメリカ合衆国に上陸した。

4Bとは韓国語の頭文字を取ったもので、男性と「結婚しない(bihon)」「出産しない(bichulsan)」「恋愛しない(biyeonae )」「セックスしない(bisekseu)」ことを掲げる韓国のフェミニスト運動を指す。若いリベラルな米国女性たちはTikTok(ティックトック)やインスタグラムでこの運動について議論し、情報を共有している。

トランプ氏再選で米女性の間で広まる「4B」運動 男性との結婚や出産を拒否(CNN)

すでに人種差別的なSNS投稿が飛び交っているが、今度は女性をターゲットにしたメッセージが目立つようになってきたという。

ニューヨーク(CNN) 米大統領選でのトランプ前大統領の再選を受け、SNS上で「お前の体、俺の選択」「台所に戻れ」といった性差別的な誹謗(ひぼう)中傷が急増していることが、英戦略対話研究所(ISD)の分析で明らかになった。

「お前の体、俺の選択」 米大統領選後のSNSで女性攻撃あふれる(CNN)

反知性的という言葉がある。IQ差別として批判されることがあるが、おそらく現在のアメリカ合衆国で起きているのはこの反知性運動だ。経済的に成功した人たちがなんの気なしに発した言葉が知的劣等感を持つ人達を刺激してきたのだろう。意識の高い人達は受け手がどのように傷ついているかには関心を寄せない・

トランプ氏に刺激されてパンドラの箱が開いてしまったことになるが、長年降り積もった怨念は相当のものだったようだ。

ところが皮肉なことにこのパンドラの箱は国家を私物化したい人たちにとっては極めて都合がいい。反知性主義を利用して独裁化に抵抗する人たちのresilience(抵抗力)を骨抜きにすることができる。

黒人にせよ女性にせよまとまった政治的勢力というわけではない。小さなコミュニティに分断されておりそれぞれがそれぞれの戦いを繰り広げることになる。これはまとまった構造を持つ内戦と言うよりは組織化されない万人闘争といった趣である。それぞれがそれぞれの闘争に明け暮れている間、彼らは何を失ったのかに気がつくことはできない。

アメリカ合衆国では政府要職は企業経営から離れることを求められる。利益相反の恐れがあるからだ。このためイーロン・マスク氏などは政府要職につかないのではないかと言われているそうだ。民主主義に監視されずにトランプ氏と個人的なつながりを維持したほうが「自由に利益を追求できる」というメリットがある。

上院はすでに共和党が支配する構成になっていて次のテーマはトランプ派がどれくらい強い影響力を持てるかだ。下院でも共和党が支配的になったとする情勢調査もあるそうだがまだ下院の情勢は確定していない。

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