異例の決選投票でかろうじて石破総理の二期目がスタートした。石破内閣では引き続き政治とカネの問題がメインテーマの一つになるものと見られている。防衛増税議論が進行しているため国民は対抗策として「政治とカネ」の問題で政権に厳しい目を向け続けるだろう。
石破・森山体制は対応策として「不記載金」の寄付を求めるものとされている。ここから自民党がひた隠しにしたい問題が見えてくる。それが「裏金の使い道」である。
石破総理は第二期目のスタートに合わせて記者会見を行った。時事通信の記事は2つに分かれている。1つは経済政策だが特に見るべきものはない。このため結果的に政治改革問題がクローズアップされている。
自民は政治資金収支報告書に記載されなかった「裏金」を国庫などに寄付する方向で検討している。裏金は、2月の党調査で不記載などが判明した85人の計約5億8000万円に、既に立件されていた元議員ら3人分を合わせると約7億円に上る。
石破首相、政治改革「年内に決着」 裏金議員に弁明促す(時事通信)
裏金については「脱税なのではないか」という疑念がある。この疑念を払拭するためには「そもそもその収入がなかったこと」にすれば良い。そこで議員たちからカネを召し上げて国庫返納するか寄付をしようということになっている。
ただここから「自民党はどうしてもお金の行先を調べたくないのだな」ということがわかってくる。これまで野党は必死になって「お金の行先」の違法性を追求しようとしてきた。ところがすでにこのフェイズは終わりを迎えつつある。
衆議院議員の河村たかし氏がネットの政治番組ReHacQsに出演した。
河村氏は戦前の経緯を紹介し地方政治家はボランティアであるべきだと訴えている。GHQが「議員に満足がゆく報酬を与えれば国や地域のことを考えるだろう」として議員に報酬を保証したが却って政治屋が増えたという主張だ。この主張には様々な考えを持つ人がいるだろう。
中で西村ひろゆき氏が「有権者が政治家を応援してもお金なんかもらえないですよね」と指摘する部分がある。河村氏は「報酬なしに政治家を応援する地方議員などいない」と断言している。選挙応援が収入源になってしまっているのである。
もちろん裏金のすべてが地方議員の買収に使われているなどと主張するつもりはない。だが本格的に支出先を調べ始めると必ず地方議員の名前がでてくることになるだろう。河井克行氏の事件は広島県の政治に大きな打撃を与えた。同じようなことが全国で頻発すれば自民党の統治は崩壊する。
これまでの議論から「無党派層対XX」という図式を破るためには、そもそも日本が再び稼げる国にならなければならないということが見えてきた。そのために必要なものが2つある。1つが余剰蓄積を持っている企業の協力である。
もう1つが地方の協力だ。日本の地方政治を「筋肉質」なものに変えることで地方からの活性化が必要である。
国民民主党についての分析では「躍進するためには高負担に苦しむ無党派層を引き付け」つつ「躍進したら既得権を守るためにシフトチェンジしなければならない」と書いた。このため国民民主党の玉木雄一郎氏は華麗な曲芸師ぶりを見せている。維新のようにこれに失敗しつつある政党もある。当初は改革派という触れ込みだったが世帯が大きくなると政治家を食べさせるための利権が必要になる。これが万博であり維新が支持率を落とす原因になっている。
自民党は無党派層から離反され公明党(創価学会)や統一教会などの宗教団体に集票を期待するようになった。本来地方経済活性化の原動力だった地方組織はおそらく「国政にタカるお荷物」になりつつある。人体に例えるならば元気の源だった筋肉が脂肪に変わりつつあるということだ。
極めて皮肉なことだが、自民党が再び有権者の支持を得るためには無党派層をどうにかして取り込む必要がありそのためには「無党派層対地方議員」という図式を断ち切る必要がある。これができない限り石破政権は贅肉(たかり続ける地方組織)を維持しつつ野党から無制限に叩かれ続けることになる。
だが、石破総理はどんなに叩かれても自民党の統治に関わる問題には手を付けることができない。
石破総理は今回の対応について「道義的責任を果たす」と説明したそうだ。永田町用語では「法律的な責任は決して認めません」という意味合いになるが、この「後出しの姿勢」がさらに有権者の怒りを買っている。
岸田政権でも被災地への寄付などを検討したが、党内に異論が出て、具体化が進まなかった。衆院選結果を踏まえ、党としての道義的責任を明確にするべきだとの意見が強まった。
自民、裏金相当額の寄付調整 衆院選大敗でけじめ、7億円程度(共同通信)
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