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玉木雄一郎氏の不倫で国民民主党が隠したかったこと

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玉木雄一郎氏の不倫が発覚した。政治家の不倫はそのまま議員辞職につながることも多いが、減税を通じて世論の支持を受けていることもあり「玉木を守れ」という声も少なくなかった。いささかご都合主義のような気もするがこれが正直な有権者の気持ちなのだろう。いずれにせよ国民民主党は早くも玉木雄一郎氏続投を決めた。国民民主党の苦しい事情が透けて見える。

ではそもそも国民民主党の何が苦しいのか。

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国民民主党の着眼点は「税制の中には見直しが進んでいないことで取りすぎになっているものがある」というものだった。複雑化するガソリン税の体系とインフレ調整だった。これを適切に改定すると財源を捻出しなくても減税となる。

ここで国民民主党は少しハードルを上げて103万円を178万円に後ろ倒しにすると宣言した。このあとの諸報道から見えてくるのは「最初に設定された高いハードルが修正されるであろう」ことを見越していたようだ。

 政府が14日の総合経済対策取りまとめを目指す中、国民民主も「満額回答」を期待しているわけではない。要望書の原案には「年末調整による補充を実施」などの「落としどころ」も書かれていた。しかし、弱気は見せられないとして、実際の要望書からそれらはすっぽりと抜け落ちた。

国民民主、強気の姿勢 政権維持へ協議「綱渡り」(時事通信)

所詮はプロレスなのだがプロレスにはパートナーが必要だ。相手も痛がって見せなければならない。しかし自民党税調の宮沢会長は「玉木さんは額にはこだわっていませんよ」と発言してしまう。このようなネタバレではプロレスは成り立たない。これはこれで問題なのだろうが、少なくとも自民党の税調には戦う気はまったくない。

国民民主党が求めている、超えると所得税が発生する103万円の「年収の壁」見直しについて、玉木雄一郎代表は178万円への引き上げ幅については「こだわってはいないと理解している」とし、「今後予断を持たずに交渉する」と述べた。

玉木氏、年収の壁の上げ幅こだわらずと理解=宮沢自民税調会長(REUTERS)

時事通信は「プロレス」ではなく「綱渡り」と書いている。つまり曲芸であるということになる。曲芸師はバランスを崩すと真っ逆さまに落ちてしまう。頭の打ち所が悪ければそのまま死んでしまうだろう。このため玉木氏の「落とし所」については識者の中でも意見が別れている。YouTubeの発言を見ても毎回言い方が微妙に変わっているのだそうだ。

この玉木氏の曲芸師ぶりがよく現れたやり取りがあった。記者が「そんなことで国政に責任を持てるのか」と聞いた。ここで玉木氏は当意即妙に「まさにその通り」と応えてしまう。仮にこれが「本当」であれば問題はない。だが事実でなかった場合にはあとで辻褄が合わなくなり追い込まれることになるだろう。この当意即妙さが玉木雄一郎氏の武器であると同時に最も懸念される弱点なのだ。

さらに、記者から「倫理を守れなかった人が国を引っ張っていけるのか」と指摘されると、次のように回答した。 「まさに妻から全く同じことを言われました。『いちばん近くにいる人を守れない人は国を守れない』」

「奥様の仰る通り」不倫謝罪の玉木雄一郎 糟糠妻が“ド正論叱責”!「カッコ良すぎて震える」(女性自身)

妻がいながら不倫ができたということは玉木氏はそれほど「倫理を大切にする人ではない」ということになる。真面目な人であれば「こんな事を言って後で辻褄が合わなかったらどうしよう」と考えるだろうが、不真面目な人は「やりたいことをやってしまえ、あとからなんとか言いくるめればいいさ」と考える。そもそも玉木氏がこのような曲芸を始めたのはおそらく彼の性格によるものなのだろうし、結果的に国民民主党の議席は4倍になった。

一方、大蔵・財務官僚出身の玉木雄一郎氏は自民党税調と財務省が「どの点まで譲れるか」は理解しておりおそらくその一線を越えてくることはないものとみられる。当然、倫理観のタガが外れておりなおかつ財務省のさじ加減がわかる議員は国民民主党にはいない。国民民主党は玉木雄一郎氏一人が属人的な才能(ときには嘘をつける才能も含めて)で牽引している政党であって組織的な分担ができない。

これが国民民主党がひた隠しにしている問題であり、なおかつ誰の目にも明らかな難点だ。

同党は玉木代表の発信力などに大きく依存しており、不祥事で「大黒柱」を失えば党の瓦解(がかい)に直結しかねない事情もあるとみられる。

国民・玉木氏、不倫認め謝罪 代表続投、党躍進に冷や水(時事通信)

さて、ここまでは単なる政党に対する悪口と言われても仕方がない内容である。ではその背景には何があるのか。これを考えるためにはそもそもなぜ曲芸が必要なのかというところまで立ち返る必要がある。

国民生活は圧迫されており現役世代を中心に不満が渦巻いている。不満を持つ20代・30代がすべて投票に行ったわけでもないのだろうが、それでもこれだけ大きな変化がおきた。

ところが現役世代の期待に「満額で」応えてしまうと現在の統治システムが破壊される危険がある。本来ならばそれに代わる何かが出てきてもよさそうだが日本には次世代の仕組みを考えるまとまった集団がない。かつての大蔵省のような経験によって培われる共通言語を持った人たちがいないのが原因だと考えられる。

このため選挙では不満を持った無党派層に対してアピールしつつ、実際に政権入りをしたあとはその期待を有耶無耶にして軟着陸させてゆく必要が生じているのだ。

玉木氏はおそらくこれを「口のうまさ」で乗り切ろうとしたのだろうが、不倫によって疑いの目が向けられることになった。おそらく今後暫くの間は国民の間に溜まった疑念を払拭するために「より高いところにロープを張って」「より遠くまで」綱渡りをすることが求められている。

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