総理大臣指名の特別国会開催を前に各政党が何を誤魔化そうとしているのかを考えるシリーズ。このエントリーでは自民党を扱う。自民党は表での議論を避け裏でなんとかしようとする傾向がある。
自民党のごまかしだけを扱わなかったのは、それぞれのごまかしを通して「もうこのままでは日本の諸問題が解決しない」ことを各政党が薄々気がついているということがわかるからだ。
今回のごまかしシリーズで最も簡単なのが自民党だ。正確に言うと誤魔化してさえいない。あからさまに「裏で交渉すればなんとかなる」と思っている。これはおそらく森山幹事長の個人的な見識なのではないかと思う。
森山幹事長は今回の選挙で自民党が退潮した戦犯とみなされている。表では「公認をしません」と言ったが、裏では2000万円を配っていた。しんぶん赤旗では「選挙に立候補しない支部には2000万円が渡っていなかった」と報道されており「それ見たことか」と思った人も多かったのではないか。
森山幹事長はおそらくSNSのない世界を生きている。このため自分が語ったことが大マスコミ(テレビと新聞)で紹介されそれが「真実になる」と漠然と信じているのだ。
このため国会では議員運営委員会を選択した。「予算委員会」は表の顔だが「議運」は裏の顔になる。石破・森山体制では「裏」のほうが重要なのだ。
このため維新には個別協議を呼びかけている。やはり水面下で取引してなんとかしようとしている。
石破茂首相(自民党総裁)は10日、日本維新の会の馬場伸幸代表と公邸で会談し、派閥裏金事件を踏まえ、政治改革に関する協議を呼びかけた。馬場氏は、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などの改革を早期に実現するよう要求。めどがつくまで予算案や法案の成立に協力しない考えを伝え、協議を拒否した。
政治改革協議の打診、維新が拒否 馬場代表はまず旧文通費公開要求
岸田総理は「個別協議」を国民民主党と維新に呼びかけていた。それぞれを分断したうえで個別協議を持ちかけることで両方の政党が「維新だけがいい目を見るのでは?」「国民民主党が抜け駆けするのでは?」と競わせる効果があった。実は第三政党候補が2つあることには重要な意味があったわけだ。
しかし維新も国民民主党もこれが「一種の詐欺」であることには気がついている。また自民党との協力姿勢を打ち出したことで「共犯関係にある」と見られた公明党がわかりやすく惨敗しているのだから公明党の二の舞いはゴメンだという気持ちもあるのだろう。このため維新の馬場代表は「協力はきっぱりお断りする」と宣言した。
石破茂首相(自民党総裁)は10日、日本維新の会の馬場伸幸代表と首相公邸で会談し、衆院選での与党過半数割れを踏まえ、今後の政権運営への協力を要請した。馬場氏は自民が調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などの合意をほごにしたと批判。「是々非々路線は一度横に置く」と述べ、合意を履行しない限り政権に協力する考えはないと伝えた。
維新代表、政権への協力拒否 「是々非々横に置く」―特別国会11日召集
森山裕幹事長の「わかりやすい隠蔽」があるために、そもそもどうしてこんな事になってしまったのかがわかりにくくなっている。
詳しくは立憲民主党の分析のところで書いた。おそらく背景にあるのは「国家経営戦略の不在」なのではないかとおもう。岸田総理が政調会長だった時代の政策取りまとめ議論を見ているとその混乱ぶりがよく分かる。誰かがアイディアを持っていたとしても大勢が議論に参入すると一体何をやっているのかがわからなくなってしまう。
そればかりか今回の自民党は「国民民主党に手柄を横取りされてはならない」と感じていて、玉木雄一郎のせいで地方税収が減るぞ!と訴えている。人手不足は困るが税収の現象はもっと困る地方が政府に対して「なんとかしてください」と訴えた。この受動攻撃はおそらく今後厚生労働省や財務省からも出てくるだろう。
国民民主党のセクションで分析したように「額面」と「実質」の話がごちゃごちゃになっていてかつての吉田学校のような議論の共通基盤が失われた影響は大きいのだなと感じる。
まとまって国家経営議論ができる文化的素地が失われていることが遠因なのではないかと思うが、政治とカネの問題も解決できない自民党が新しい文化的基盤を再構築できるとも思えない。ただ回り道のように思えてもこの問題を解決しない限り国会が問題解決の装置になることはないだろうと思う。
いずれにせよ自民党は政権政党なのだから「経済の立て直しや少子高齢化ができている」ならもうやっているはずだ。
ただし多くの日本人は依然「国家経営戦略が出せるのは=国家観がある」のは自民党だけと信じているだろう。これが単なる信仰であると国民が気づかないようにするのが石破総理の最大のミッションなのかもしれない。
その意味ではトランプ大統領との関係構築は極めて重要である。おそらくすでに日米同盟の基礎は破壊されているが、今の日本にはこれを再構築できる人たちはいない。
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