ざっくり解説 時々深掘り

洋服選びを自動化する

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日経ビジネスオンラインに「店員頼みのアパレル店は立ち行かなくなるのではないか」というような記事が載っている。代わりに提案されているのが、AIとスタイリストが提案する洋服を選ぶサービスで、アメリカでは一般化しつつあるとのことだ。とはいえ、このようなサービスを作るのはなかなか敷居が高そうである。実際に概念だけ設計してみた。
洋服選びにはいくつかのアプローチがある。第一のアプローチは「とにかく暖かければなんでもいい」という人たちである。郊外の住宅街の高齢者はやたらプラスティック製の服を着ているのだが、これは洋服屋を知らないというよりは、そういうものを好んできているということなのだろう。こうした人たちには「安くて暖かい」服を売っていればよい。ユニクロ派と名付けてみた。意外と多いはずである。
次のアプローチは素材にこだわる人たちだろう。バブル期を経験した人たちが多いのではないだろうか。まず質の良いジーンズ(例えば3D加工されたもの)にテクスチャーの入った素材のトップスなどを提案することになる。ベーシックな組み合わせに飽きてきたらトレンドものを提案してやればよい。Safariなどで使われている方法だ。これも比較的簡単かもしれないのだが、お金はかかりそうだ。バブル期にコーディネートに悩まなかったのは、みんなジャケットに高級な素材のインナーを着ていたからだろう。
styleselector001もっとも難しいのが三番目の人たちだろう。いわゆるコーディネートを必要とするのだが、そもそもコーディネートって何なのだろうか。コーディネートはスタイルと色彩の組み合わせである。
このうちスタイルはデザイナーが割り振ることができる。ファッション雑誌からランダムに拾ってみたらすぐにこのくらいは集まった。最近では古いスタイルがアーカイブされており、種類が飛躍的に広がった。
この中には太っている人が着ることができないもの(細めのパンツ)や痩せている人が着ると貧相に見えるものなどがある。これはユーザーの体型をインプットしてもらえれば自動的に結びつけができそうだ。多くの人は標準体型なので機械化が容易だし、例外的な人にはスタイリストが対応しても良い。
また、季節展開の重複が見られるので整理は必要だろう。
styleselector002次はカラースキームである。実際には白もしくは黒(黒の代わりに紺が入ったりする)となんらかの色の組み合わせか、同系色あるいは補色の関係で整理できる。補色の場合には白を間に挟む、純色と鈍色の組み合わせにする、明るい色と暗い色の組み合わせにするという組み合わせ方がある。
茶色と赤が同系色であるというように発見が難しいものもある。この場合、オレンジから薄い黄色くらいまでを含めることができる。
また赤にもいろいろな種類がある。例えば純色の赤はくすんだ補色(緑など)と組み合わせる。バーガンディは紺色と白というのが定番のようである。さらに小豆色はチノパンと組みわせるときに利用される。つまり、色を規定しただけではダメで配色の中に位置づけてやる必要がある。
これが終わったら実際の洋服に展開してゆく。すでにスタイルができているものとし、簡単なアメリカンカジュアルのスタイルを作ってゆく。
styleselector003まずキーになる色が決まる。今回はチノパンである。そこに合わせることができる同系色のものを集めた。まずTシャツが入り、シャツが加わり、シャツの柄を見せるためにカーディガンが2つ入った。1つは秋冬用のカーディガンだが、1つはTシャツと組み合わせるコットンのカーディガンだ。灰色などのモノトーンはコーディネートを整えたり調整する働きがある。それだけではつまらないので補色の入ったシャツを加えてみた。
これで季節がカバーされる。
ここまではスタイリストが提案できるのだが、スタイリストが提案できないものもある。コーディネート派の一番の問題はそれが「イケているか」という点である。イケているかという情報はどうやったら分かるのだろうか。一番目と二番目の人たちは自分で洋服を選んでいるが、三番目の人たちは他者志向が強いと言えるのだ。
第一に売れ筋の情報を見るとある程度の情報がわかる。次にコーディネートコンテストなどを開催するという方法がある。「ファボられた」数が多いコーディネートは多分高感度が高い組み合わせと言えるだろう。
現在のオンラインショップはアイテムごとの人気は計測できるが、クローゼット単位での計測は出来ない。つまり、アイテム単位の販売からどう脱却できるかということが重要なのだということがわかる。あとは、このような知識をデータベースに入れてゆくだけである。意外と簡単に実装できるのではないだろうか。
現在は各アパレルメーカーがとりあえず売れそうな「アイテム」を作っている。日経ビジネスオンラインの別の記事によれば、正規の価格で売られるのはごく少数なのだそうだ。これがメーカーがユーザーの動向を把握していないということから来る問題だ。しかし、洋服は単体で着るものではないので、そもそもアイテムだけを見ていても生産計画など建てられるはずはないのだ。つまり、コーディネートごとの把握ができれば、より効率的な生産計画が立てられるようになるだろう。一方ユーザーが定番しか着ないのは、どう着て良いかわからないからだろう。黒や紺のアウターはコーディネートを整える効果があるので、これはよく売れるということになる。
こうした発想をすると例えばジーンズを売るよりも黒のパンツを売ったほうが得策というようなこともわかる。ジーンズは紺色なので使える色は限られてくる。一方で黒はコーディネートを整えられるので、グラフィックTシャツなどを簡単に組み合わせることができるのだ。情報が氾濫するとユーザーの側で単純化が進むのだ。
一方で、ユーザーはさらに簡単な方法に走るかもしれない。これはクローゼットの中身を全て写真で撮影して並び替えたものである。もともと古着屋で安いものを購入していた。割と難しい色合いのものが売れ残る(従って安くなる)傾向にあるので、それに合うものを研究する癖がついてしまったのである。
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雑然としたものもある程度蓄積するとそれなりのスタイルができる。すると足りないものも見えてくるので、足りないものを安価で買い足すということができるようになる。手作業で面倒なのだがクローゼットを整理するシステムをアパレルメーカー以外の会社が作ってしまうと、今まで以上にアパレルメーカー離れが加速するということになる。