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健康ゴールド免許制度について考える

健康ゴールド免許制度が批判を浴びている。このニュースが出始めたときそれがどのような制度なのかは分からなかった。名前がキャッチーなので名前が一人歩きししているようなところがあるのかもしれない。
批判する人は、頑張っている人を優遇することは不幸にも病気になってしまった人を排除することにつながるという前提を置いている。日本は過去20年以上椅子取りゲーム状態が続いている。負担を「自己責任」の名の下に排除する社会だ。
医療費の削減は避けられないので、政治が成人病にかかった人に「怠惰な生活をしていた」というレッテルを貼って排除するための制度なのではないかという懸念は十分に理解できる。
この問題を取り上げる気になったのは、やる気は見た目や健康に顕著に影響するということを実感したからだ。
病気のために気力がなくなり10Kgほど太ってしまった。かなり悲しい気分になり過去のパンツなどを捨てた。2サイズほど大きなものを買ったのだがこれが悲しくなるほど似合わない。そこで腹筋運動(といっても1日に45分程度)をやり、酢(最近はダイエット用に飲みやすいものが出ている)を飲み、1時間ほど姿勢を意識して歩くことにした。
それまでも歩いてはいたのだがまったく体重に影響はなかった。姿勢が悪いと歩いていてもたいした運動にならないようである。だが、一連の運動を始めてたった2週間で体重はまったく変わらないのに体型が変わり前のパンツがはけるようになった。過去の服を捨てなければよかったと後悔するとともに、たった2週間なんだと思った。
この個人的な体験から分かるのはモチベーションの大切さである。モチベーションがあればそれなりに組み立てて行動を起こすことができる。やる気になれば健康にも影響がある。だから国が制度を作ってモチベーションを上げられるような仕組みさえ作れれば、国民の健康によい影響があるだろうなとは思う。つまり、着想そのものは悪くないのではないかと考えたのだ。
しかしゴールド免許制度には大きな問題点がある。それは健康診断の受診率を指標にしているところだ。
第一に日本の健康診断は、本来の趣旨はともかく効率的に新しい患者を作り出すことに主な目的がある。これは実に日本的で指標を決めうちして、そこから外れた人に定期的に投薬する。そのために中高年は薬漬けになってしまう。つまりマーケティング活動の一環なので、健康診断の受診率が上がると医療費が上がるという関係にある。そればかりではなく、病院も込み合うようになるだろう。現在でも病院は大変な混雑なのだが、受診時間は本当に短い。
第二にそもそも健康に興味のない人は健康診断を受けない。学歴が低く、年収も低いという関係があるとのことである。つまり、補助が必要な人ほど補助が得られないという仕組みになりそうだ。もともと健康診断はマーケティングなので「病気が発見されたら金がかかる」と考える人は医者に行けない。重篤化しそうなのはこういう人たちだろう。結局この人たちを「自己責任」の名の下に切り捨てますかという話になってしまう。それは無理だろうから医療費の抑制にはつながらない。
モチベーションを与えるのは確かに効果がある。しかし、そのためには人間の内面に働きかける必要がある。外からインセンティブを与えてしまうと内在的な動機を損なうことがある。画一的な健康診断で投薬を開始され「薬さえ飲んでいれば安心なのだ」と考えれば、個人の健康維持の努力を毀損してしまう可能性すらある。
日本人は一人ひとりがもっている動機をうまく引き出すというのが苦手で、画一的な指標を作って効率を上げようという方向に走りがちだ。
内面的な動機に働きかけるためにはカスタム化された医療コンサルティング制度を作って一人ひとりに合ったプログラムを作るというような制度が必要だが、現在の医療制度は画一的に報酬を支払っているので、コンサルティングは「やるだけ無駄」な作業になってしまっている。
結局は画一化された医療制度が問題を引き起こしている。それを患者の自助努力によって解決しようというのはそもそものアプローチが間違っているといえそうだ。


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