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国民民主党が牽引する減税推進議論とその抵抗勢力の構図

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国民民主党の玉木雄一郎氏が立憲民主党の野田佳彦氏と党首会談を行った。マスメディアでは「いくつかの項目について合意があった」と伝わっているが、これは真実ではない。玉木氏としては「減税に対する抵抗勢力」と「自身」の戦いを演出することで参議院選挙への助走にしたい考えだ。フリーライダーは排除しておきたい。

減税議論の盛り上がりに焦りをつのらせた政府が盛んに火消しの情報発信をしている。「財源が足りなくなる」というのだ。玉木氏にとってはこれも追い風である。情報の取り扱いが増えれば増えるほど「マスコミと財務省が抵抗勢力だ」と言いやすくなる。政府は風向きを考えない情報発信をしており、おそらく山火事を更に広げることになるだろう。

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立憲民主党と国民民主党が会合を行いいくつかの項目で政策合意に達したと伝わっている。ところが実際の会談結果はそれほど単純なものではなかったようだ。

玉木雄一郎氏はXに次のような投稿を残している。立憲民主党おなじみの党内抵抗勢力を利用し「彼らが黙らない限り協力体制は作れない」と言っている。立憲民主党は党内右派と左派の間に奇妙な分裂状態があるとよくわかっているのだろう。マスメディアとSNSを「巧み」に使い分けるのが玉木流だ。党内左派をまとめきれていない野田佳彦氏は返す言葉を持たない。

フジテレビは「玉木・野田会談はかなり緊張に満ちたものだった」と報道している。会談の内容は公開されず「合意があった」点だけが発表された。のちに双方が記者の質問に応じたが内容には微妙に異なった点があったようだ。

もともと103万円の壁は「インフレ対応」だった。時事通信が次のように書いている。1995年以降改正されていないブラケットクリープ対応だったのである。

現在の103万円に引き上げられた1995年以降の約30年で、最低賃金が1.73倍に上昇したことからはじき出した。国民民主の試算では、控除額を一律に75万円引き上げれば、年収が500万円の世帯は約13万円減税され、物価高に苦しむ家計の助けになると訴えている。減税額は、所得税の適用税率が高い高所得者ほど大きくなる。

「手取りを増やす」政策とは? 所得・ガソリン減税が焦点―ニュースQ&A(時事通信)

財政議論がきちんとできるという点は評価されて良い。玉木氏はSNS対策をこなす中で「手取りアップ」という単純なメッセージングのほうが伝わりやすいと気がついてゆく。そして政策立案能力がない(つまり自力ではこの問題に気がつけなかった)立憲民主党もそれに気が付き「フリーライド」しようとしている。

記者たちの中には議論の展開の奇妙なねじれを言語化できないまでも気がつく人も出てきたようだ。フジテレビによると「記者からミスリーディングなのではないか?」という質問が飛んだそうだ。これに答えられない玉木氏は「逆質問」で対応した。質問に質問を返す「石丸伸二方式」である。

玉木氏の狙い通り、政府からは「税収が減る」という懸念が出ている。玉木氏は「財務省とマスコミがグルになっている」と主張し世論を味方につけることに成功した。政府は火消しをしようとして逆に燃え広がらせている。石破政権は風向きが読めない政権だ。

政府は国税で7.6兆円の減収となるとしていたが、新たに地方税でも4兆円減ると言っている。政府が情報発信しマスコミが「財源が」と報道すればするほど、玉木派は盛り上がる。マスコミは抵抗勢力であり玉木氏を守らなければならないと考えることになるだろう。Xのトレンドワードでも玉木擁護論が盛んに語られている。

ただマスコミは単に抵抗勢力というわけではない。識者を呼んで玉木氏の政策について研究した結果「社会保障改革こそが本丸である」と言い出した。これに乗った政治家もいる。これらの壁を「バカの壁」と命名し足枷(桎梏というそうだ)を外せと訴えている。

玉木雄一郎氏の発言の遍歴を見ていると、当初はX上で長い投稿を行い発言を浸透させるのに苦労してきたことがわかる。戦略を切り替えて「切り抜き」を採用したことで驚くほどの浸透力を見せた。

長年の自民党政治で現役世代には雨が降っていない。「トリクルダウン」どころか日照りでカラカラに乾燥していたと表現できる。玉木氏はそこに火をつけようと試みており今回はそれに成功した。火が付くとその火を求めて多くの政治家が集まってくる。今後、石破政権はこの山火事の扱いにかなり苦労するはずである。

仮にこの勢いを参議院選挙まで持たせることができれば更に投票に出かける人は増えるかも知れない。ただし「山火事」は「山火事」でありこれが大惨事にならない保障はない。現実的に財源の問題がなくなるわけではない。

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