イスラエルで情報漏洩事件が起きたと各紙が伝えている。アメリカから漏れた事件の続報だろうと思って読んだのだが全く別件だった。
戦争の継続を望むネタニヤフ首相サイドが世論を操作するためにヨーロッパの新聞にリークを出した。ところが後に不正に持ち出されたものと分かりネタニヤフ首相は「この人物は自分のために働いているのではない(無関係)」と切り捨てた。同時に箝口令が敷かれ人物の名前が報道できなくなったが裁判所が箝口令の解除を求めたというのが話の流れである。
そもそも「当然首相は軍から報告を受ける」ものと思っていたので「何度読んでも意味がわからない」と言う気がするが、イスラエルは軍・首相府・裁判所が一体になって動いていないということはわかる。首相府の中もバラバラで時々大臣が単独でアメリカに出かけて首相と違うことを主張したりもしている。
人質家族は今回の件を怒っているそうだが、そもそもネタニヤフ首相にはこの手の話も多く「政権転覆にまではつながらないだろう」と見られているという。
すべてが明るみに出たあとにAFPが記事を書いている。政権延命のために戦争継続を望むネタニヤフ首相が側近を使ってヨーロッパの新聞に都合の良い情報をリークしたという話だ。エジプトが協力して人質をガザから逃がそうとしているというのがリークの内容で「こんな卑怯なことをするハマスとは停戦合意は結べない」というネタニヤフ首相の主張を正当化する根拠になっている。
ところがその前にイスラエルの裁判所が箝口令の一部を解除したとしてニュースになっていた。英語では「Gag(さるぐつわ) Order」という。
まだ箝口令が敷かれていたときに書かれたと見られる報道では「その人物は怒っている」と報道されていた。The Time of Israelの報道によると、自分は首相のために一生懸命に働いていたのに「スキャンダルがでた瞬間に」「この人物は自分のために働いているわけではない」と切り捨てられたようだ。ロイターの記事などを合わせると正式雇用された人物ではないという。
イスラエルの国民はハマスの撲滅よりも人質解放を急ぐべきだと考えている。国際世論もハマスと和平合意を結ぶべきだとネタニヤフ首相に圧力をかけていた。このためネタニヤフ首相は「戦争を継続する理由」が必要な状況だった。
そこで「ネタニヤフ首相のためにはリスクも厭わない」という側近が軍から情報を盗み出し、ジューイッシュ・クロニクルとドイツのビルドに情報を流した。ネタニヤフ首相の主張にも理があるということになり世論は誘導された。
後にジューイッシュ・クロニクルはフリーランスの記者を解雇し記事を取り下げたそうだが信用は失墜した。一方のビルドは「結果的に軍が情報を認めた」と主張している。
BBCによると人質家族は今回のスキャンダルに憤っており、政敵のラピド氏も首相批判を強めている。しかしネタニヤフ首相はこれまでもこの手のスキャンダルにまみれているためおそらくは政権の維持にはさほど大きな影響は出ないだろうと見られているそうだ。
結果的にネタニヤフ首相はレバノンやイランの挑発に成功しており、イランのほうが「抵抗を継続し国力を減毛させる」か「地域の影響力の低下を招くか」から「よりマシな方」を選ばなければならない状態に追い込まれている。
アメリカでは大統領選挙が行われその結果が出るまでは「待ち」という状態だ。仮にネタニヤフ氏が賭けに成功すれば「嘘をついて逃げたほうがトクだった」ということになる。
それにしてもと思うのだが「軍が持っている情報」を首相サイドが盗み出す必要があったのがなぜなのかがよくわからない。日本とは感覚が違うのだろうということまではわかるが「指示・命令する方とされる方」という関係にはなっていないということだ。
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