自民党・公明党と国民民主党が「部分連合を組む」という話が出ている。こうなると「絶対多数の過半数が取れない」状態で意見が異なる政党が連立を組むってどんな状態なのだろうと考える人もでてくるのではないか。実はドイツの左派政権が崩壊しかかっていると時事通信が書いている。「クリスマス前に政権が崩壊」し総選挙が前倒しされる可能性があるそうだ。
ドイツは輸出製造業に依存する産業構造を持っている。安い通貨、周辺地域からの豊富な労働力、好調な外国市場、安いエネルギー調達に支えられて経済は順調だった。
ところが新型コロナ禍と中国市場の原則によりこの条件が崩れると保守系与党に対する風当たりが強まった。総選挙が行われたが決定的な与党は生まれなかった。結果的に政権を取ったのが穏健左派(社会民主党)、急進左派(緑の党)、新自由主義政党(自由民主党)だった。社民党だけでは絶対過半数が取れなかったのである。これが2021年9月だった。
ところがその後でウクライナの戦争が起こりエネルギー価格が高騰し高いインフレに見舞われた。秋に旧東ドイツ地域で選挙が行われ移民排斥の急進右派政党が躍進している。
国民は緑の党も自由民主党にも落胆している。支持率を回復しようと自由民主党の党首が新しい政策を発表した。ところがこれは緑の党と社会民主党の政策を否定するものだったためにリントナー党首は批判されたそうだ。自由民主党としては「左派にお付き合いして自分たちも巻き添えになるのは困る」ということだったのだろう。
各政党とも
- 党勢が傾く緑の党のハーベック副首相兼経済・気候保護相は、10月下旬、FDPの緊縮路線に反する大がかりな経済対策を根回しせずに提案。
- 調整役だったSPD出身のショルツ首相も同29日、財務・経済両相抜きで、自動車大手や労組トップらと経済対策を協議した。
- それでもリントナー氏はハーベック氏の提案に真っ向から反対する政策文書を提示する
と独自の動きを始めてしまい「政権内別居状態」になっている。
時事通信は「リントナー氏に反省の色なし」としているがドイチェベレは「Lindner speaks of an indiscretion, claiming the paper was not intended for publication.(リントナー氏は政策集は出版されるはずのものではなかったと主張している)」と書いている。内容について謝罪はしていないが政権を攻撃するつもりはないと主張しているようだ。
日本でも自民党の不人気ぶりに引っ張られる形で公明党が支持を落としており党首が落選する騒ぎとなっていた。公明党の場合には創価学会の高齢化という構造問題も抱えており党勢を盛り返す見通しが立てられていない。また自民党が総選挙を急いだのも「どっちみち議員の任期が切れるから」だった。だったら少しでも有利な方を選ぼうということになり前倒し解散が選択されている。
ドイチェベレによるとドイツの規定は日本より厳しい。首相が好きなときに選挙ができる仕組みにはなっていないそうだ。
「過半数に達する政党(連合)がない場合には議会選挙のやり直しを大統領が命じる」ことになっているそうだが、こうした事例は起きていない。一方で首相が議会に対して「信認を求める」事ができるという。仮に信認が得られなかった場合には議会が解散され総選挙が行われる。連立政権が不合意に達した場合には「連立解消のための選挙」が行えるということになる。ただこの場合には連立相手が「解消」を望んでいる必要があるということだ。こちらは3例の事例があるそうだ。
結局のところ「経済不調を背景とした敵失」により政権を取っても経済成長の糸口が見つけられなければ支持率が低迷し総選挙に追い込まれるということになる。
おそらく同じことは日本にも当てはまるだろう。結局のところ(あたり前のことだが)「経済を成長させない限り安定した政権は作れない」ことになる。
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