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イギリス保守党が「右傾化」と日本のメディアが分析

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イギリスの保守党が代表選挙を行い黒人女性のベーデノック氏が新しい代表についた。日曜日のためにBBCやCNNなどの和訳報道がないが時事通信と共同通信は「保守党は右傾化した」と書いている。

BBCは労働党が左派色の強い予算案を出し保守党は右傾化したので「左右対決が先鋭化した」と見ているようだ。つまり日本の分析からは「イギリスはいったん左傾化=社会主義化している」という前提が抜けている。

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外国通信社の記事がないためかなりざっくりとした印象にしかならないが時事通信と共同通信は揃って「右傾化」を指摘している。「移民を受け入れない傾向=右傾化」と単純化する傾向もある。

アメリカのカマラ・ハリス副大統領もインド・カリブ系の黒人だが「多様性推進」の候補として知られる。ベーデノック氏はナイジェリア系の移民の子孫だそうだが「移民反対・イギリスの伝統的な価値観を重んじる」政治家とみなされているようだ。旧移民の子孫が新移民を排除する傾向があるのはアメリカ合衆国でも見られる傾向だが、イギリスの場合は更に顕著なようである。

あくまでもざっくりした印象論ではあるが、日本の高市早苗氏は「夫婦別氏」に反対するなど伝統社会に溶け込むために自分の属性とは反対の方向の主張を強めている。イギリスでも同じようなことがあるのかもしれないと感じた。日英にはそもそも保守傾向が強いという共通点がある。

イギリスは極端なポピュリストのトラス氏がエスタブリッシュメントのスナク氏に勝利した。スナク氏は「プラダの靴」などが批判対象になっていた。自身も多額の金融資産を持ち妻もインドの富豪の娘である。だがトラス氏の政策は金融市場では嘲笑され「トラスショック」と呼ばれる株価、債権、通貨の暴落をもたらした。これを抑えるためにスナク氏が党首・首相に選ばれたが結果的に労働党に惨敗した。

現実と向き合う必要がなくなった保守党の党首対決は元移民担当大臣のジェンリック氏(こちらも右派とみなされているそうだ)とベーデノック氏の対決となった。

BBCは「Badenoch’s win and Labour’s big Budget mean we now have sharper left-right divide」という記事を出している。詳細は和訳が出たら読んでみようと思っているが「詳細はわかっていないがおそらく左派的傾向を強めるであろう労働党の予算案」と「右傾化傾向を強める保守党」を対比させようとしている。つまり共同・時事が「単に保守党が右傾化した」と考えるよりは複雑な事態が進行している。

労働党の予算案は詳細はわかっていない。だが、レイチェル・リーブス財務大臣の予算案は国民健康保険制度に多額の国費を投入しようとしており財源に対する懸念が出ているそうだ。労働党が「赤色=左派色」を強めれば強めるほどバーデノック氏は青色=右派色を強く打ち出すことできる。イギリスでは都市の労働者と農村は対立する存在だと考えられているようで「労働党が都市住民優先の政策を打ち出せば、それに反発する農村は保守党を支持するだろう」という見立てのようだ。

日本と同じような国民皆保険制度を持っているイギリスでも制度劣化が起きていて「このままでは制度が維持できない」という状態になっている。このためすべての人達を満足させたまま制度を維持することができない。この点も日本の現状に非常によく似ている。

日本ではこのあたりを曖昧にしたままで水面下で政党どうしが交渉するというやり方を好むが、イギリスの場合はまずテーブルに乗せてみて「どっちがいいか選んでもらいましょう」というやり方を好むようである。

つまり日本とイギリスには共通点も多いが「こと議論の進め方」については全く異なるアプローチが取られているということになる。

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