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【2024年総選挙特集】高齢者と現役世代で異なる投票行動

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2024年の総選挙が終わった。立憲民主党の躍進の原動力になったのはやはり政治とカネの問題だった。だが統一教会問題のときに「なぜ統一教会問題に過剰に反応するのか?」という声があったことも確かだ。このように今回の総選挙の結果を現役世代が見ても「なぜこうなったのか」がよくわからないのではないかと思う。

日テレ・読売新聞が出口調査を行っているが、内容を見るとその理由がよく分かる。実は世代ごとに比例の投票行動が違っていたそうだ。

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国民民主党の玉木雄一郎代表が「尊厳死と医療費削減」を絡めた発言をして問題になったことがあった。

表面上は不適切発言として処理されたのだが、若い有権者はこの発言を不適切と考えていなかった可能性がある。表立っては言えない本音が投票行動に現れる「サイレントマジョリティ」という状態だ。アメリカではサイレントマジョリティの願望がトランプ氏に刺激され政治言論が過激化している。ただし玉木雄一郎氏は高齢者を「内なる敵」とみなしているのだから高齢世代には浸透せずこのあたりが人気のピークということになる。実績を積むためには自民党と協力して政権に参加することになるがこのときの妥協はサイレントマジョリティからは「裏切り」とみなされるだろう。

一方で高齢者世代では自民党支持と立憲民主党支持が拮抗している。この世代はワイドショーで統一教会問題やリクルート事件などを見ていた世代だ。政治とカネや統一教会に対して強い拒絶反応がある。だが、ワイドショーで得られた感覚は現役世代と共有されていない。だから現役世代は「なぜ統一教会がそんなに問題になるか?」という疑問を抱くのだ。

もう一つ注目すべきなのが比例で9議席獲得したれいわ新選組だ。実は国民民主党が強い年齢層ではれいわ新選組も強い傾向がある。高齢者の負担を押し付けられていると感じる人達の受け皿という意味ではれいわ新選組と国民民主党はライバル関係にあるといえる。「選挙に行っても何も変わらない」と言われていたが投票率が高ければもう少し大きなインパクトを与えていたはずだ。

もう一つの特徴がメディア型政党の台頭と既存左派政党の凋落だ。メディア型政党とはネットと既存メディアを組み合わせて有権者に浸透する政党である。今回は国民民主党、維新(ネットと関西圏のテレビ)れいわ新選組(ネット)参政党(ネットとイベント)日本保守党(雑誌とネット)が挙げられる。

参政党は3議席獲得し、日本保守党も3議席を獲得した。

既存メディアとネットの組み合わせと書いたのには理由がある。日テレ・読売新聞の比例投票先を見る限り年代ごとの偏りはさほど多くない。高齢者にインターネットが浸透しているか別のルートでメッセージを届けているかのどちらかなのだろうがこの調査からは見えてこない。

一方、既存組織に依存する社会党と共産党は高齢化のために現役世代に浸透してない。ここに公明党(かつては憲法9条の護憲政党だった)を加えても良いかも知れない。公明党は今回の選挙で比例重複しなかった石井代表が落選している。11選挙区で4勝7敗だったそうだ。

共産党の田村代表は「自民党の政治とカネの問題を暴いたのはしんぶん赤旗である」として成果をアピールしたそうだが空回り気味だったという。

前回の獲得議席を維持できるか微妙な情勢の共産党。東京都渋谷区の党本部内の開票センターでは、田村智子委員長が当選確実になった自身を含む名前が書かれた紙に笑顔でバラを付けたが、他の党幹部らの表情は硬かった。

幹部らの表情硬く 田村委員長は成果強調―共産【24衆院選】(時事通信)

大手新聞が部数を落とし(一部は全国紙というステータスを維持できない状態にまで落ち込んでいる)経営が圧迫されているために調査報道が行えるのは高齢化した共産党員が支えるしんぶん赤旗だけという状態になっている。だが既存組織依存でネットが得意でないという事情もあり無党派層が獲得できていない。

つまり今後はますますネット型の政党が優位になり「政治とカネの問題の正常化」や地道な調査報道よりも「高齢者がこの国の負担になっている」というような極端な主張のほうが優位になる可能性が高いということになる。実は日本もアメリカ型の極端な政治言論に着実に向かいつつあるということだ。

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