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トランプ氏がマクドナルドで「バイト」

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日本の各TV局がトランプ氏がマクドナルドでバイトしたと伝えている。庶民派をアピールする狙いがあると終わっており「せっかくの素材が活かしきれていないな」と感じた。アメリカの大統領選挙は接戦になっておりトランプ氏は政治に興味がない人に働きかけたい。そのために生活に身近なマクドナルドに降臨してみせたのだ。

トランプ氏はカメラの前で庶民派をアピールしたものの滞在時間は15分であった。とても職業体験とは言えないが写真を撮影させるには十分な時間だっただろう。ただし周囲はセキュリティに囲まれていた。トランプ氏がバイト代を受け取ったかは不明だが、仮にもらったとしてもセキュリティ費用は賄えなかったはずである。

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トランプ氏はペンシルベニアのフランチャイズに連絡を入れて「ちょっとマクドナルドで労働体験がしたい」と申し出た。マクドナルドは誰でも気軽に働けることをウリにしておりこれを受け入れることにしたそうだ。マクドナルドはこのオープンドアポリシーを「中核的価値観」とやや大げさに表現している。民主党側が同じ申し出をしていればそちらも受け入れていたはずでだから不買運動などは起こさないでくださいということになる。

マクドナルドによると、トランプ氏が「ペンシルベニア州の店舗を訪問したい意向だ」と地元のフランチャイズ加盟者デレク・ジャコマントニオ氏に警察当局から問い合わせがあった。

米マクドナルド、政治には関与しないと表明-トランプ氏がバイト体験

「トランプ氏の要請を知らされた当社は、『全ての人に門戸を開く』というわれわれの中核的価値観に照らしてこの問題に臨んだ」とマクドナルドは指摘。

米マクドナルド、政治には関与しないと表明-トランプ氏がバイト体験

ただ、フランチャイズ側は警察に「どうしましょうか?」と相談している。その結果、マクドナルドは大勢のセキュリティに取り囲まれた。このセキュリテイ代を稼ぐには一体マクドナルドで何年働く必要があるのか……という気がする。日本のテレビ局はマクドナルド店内の様子は伝えているが日本テレビだけが周辺映像を流していた。現場取材は重要だ。

背景にあるのはまだ選挙に行くことを決めていないような人たちの取り込みである。

アメリカの大統領選挙はご存知のように事前登録制になっている。有力支持者のイーロン・マスク氏は「トランプ氏の政策に賛同してくれる登録有権者にお金を配る」と発言しているが、この宝くじに参加するにはそもそも登録者になっていなければならない。ちなみに100万ドルは期間合計ではなく「毎日」支払われるという。

もう申込みは締め切られているのではと思ったのだが、意外と「当日でも対面登録ができる」という州があるようだ。だがそもそも関心がある人はすでに登録をしているはずだ。またオンライン登録が締め切られているため事務所まで出かけて登録するのは面倒だと感じる人は多いのではないかと思う。

米実業家のイーロン・マスク氏は19日、激戦州の登録有権者に毎日100万ドル(約1億5000万円)を配ると発表した。この発言は有権者登録や投票に対価を支払うことを禁じる法律に違反する可能性があるとして、選挙法の専門家からすぐに批判の声が上がった。

マスク氏、激戦州の登録有権者に「毎日1億5千万円」配る 違法性の指摘も(CNN)

日本のメディアはトランプ氏は「ハリス氏がマクドナルドのアルバイトについて嘘をついていると主張している」と伝えている。

根拠になっているのはある保守系メディアの主張だそうだが、履歴書にアルバイト経験を事細かに書くことはない。当の保守メディアもその点は認めており「疑問視される材料となっている」との表現にとどまっているという。

いずれにせよトランプ氏によればハリス氏の労働時間は0分間と言うことになる。だから15分余計に働いたというのは「15分間だけ」バイトを経験したということになる。莫大なセキュリティ代を稼ぐには不十分な時間だろう。

ハリスがマクドナルドで働いていたというのは嘘だという主張は、8月に保守系ニュースサイトの「ワシントン・フリー・ビーコン」が掲載した記事から広まった。この記事は、ハリスが大学卒業後に提出した就職の申込書や履歴書にマクドナルドでの勤務経験が記載されていなかったことを指摘していた。

ハリス副大統領の「マックでバイト経験」は本当に嘘なのか?

トランプ氏は熱心なキリスト教徒を自認することがあるが実際には在任中に14回しか教会に行っていないことが知られている。回数で言えば熱心なゴルフ教の信者ということになる。またそのうちの1回は人種差別に反対するデモを貶めるために用いられた。このときに軍隊の投入をほのめかし教会に軍人を引き連れて出かけている。聖書を高々と掲げて写真を撮影させた。軍隊は後にこの行動を反省している。

このように目の前にいる気に入らない人たちを「敵」にしたうえで実際に行動してみせるのがトランプ流だ。だが支持者が大勢集まっているところから「自分たちが気に入らないことがあれば力を使って排除しても良いのだ」という「トランプ師」の教えが全米で広く浸透していることがわかる。実際にトランプ氏は接戦州のいくつかでハリス氏をリードしているとBBCが伝えている。

経済と安全保障に関連する共和党関係者や支持メディアはトランプ氏の大衆扇動に危機感を感じているようだ。Bloombergはむしろ保守的な立ち位置で知られると思うのだが「トランプ関税は人々の暮らしを貧しくする」と警鐘を鳴らしている。しかし、こうした主張がトランプ氏の支持者に伝わることはないのかもしれない。

むしろマクドナルドで「アルバイト」体験をして見せるようなわかりやすいパフォーマンスのほうが普通のアメリカの有権者には響くのだろう。Bloombergは選挙に行かない人たちの最終取り込みが両陣営の目標と分析している。両者の戦略はやや異なっており、トランプ氏のマクドナルド訪問は「いつもは関心がない人たち」へのアプローチだ。

  • 米大統領選投開票日まであと15日となり、共和党候補のトランプ前大統領は派手なイベントや異例のメディア出演といった集中的なキャンペーンを通じ、いつもは政治に関心がないような有権者に支持を働き掛ける。
  • 一方、民主党候補のハリス副大統領は同党が優勢な「ブルーウォール」と呼ばれるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の死守に焦点を絞り、選挙結果を左右する可能性のある残り少ない浮動票の獲得を目指した新たなメッセージを発信する。

Bloombergによれば焦点となっているのはトランプ氏は絶対に嫌だがハリス氏に投票していいか迷っている人たちだそうだ。高齢のバイデン氏は論外だが、ハリス氏も決め手に欠ける弱い大統領候補ということになる。

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